安心してかかれる精神医療の実現をめざして活動をおこなっている大阪精神医療人権センター(所在地:大阪市、代表:位田浩・大槻和夫)は、精神科医で劇作家のくるみざわしん脚本「精神病院つばき荘」を大阪で上演。開催に向けたクラウドファンディングhttps://readyfor.jp/projects/open-doors2022では、新型感染症により継続の危機となった演劇業界への支援も含まれている。申し込みは10月5日まで。ゲストに入院経験者、現役病院勤務者が登壇し、精神科病院を取り巻く問題について考える。 日本への勧告は2014年の条約締結後初 障害者権利条約を巡り日本政府に9日、精神科への強制入院廃止を含む政策改善への国連勧告がありました。 当NPO常務理事も日本弁護士会連合会のメンバーとしてスイス・ジュネーブの国連欧州本部へ渡り、委員に対するブリーフィングや政府報告を傍聴してきました。 2021年の630調査によると、日本には精神科病床が30万床あり、263,007名が入院中でそのうち132,481名が強制入院、つまり自分の意思によらない非自発的入院です。さらに1年以上の長期入院者は164,196名。10年、20年に渡り入院しておられる方も珍しくありません。 病院の外とのつながりがいったん切れてしまうと、退院後に住む家や暮らしを支える人との関係もなくなり、さらに退院が難しくなります。このため、長期入院が続くと、死亡することにより退院となるケースが後をたちません 24時間管理のもとにある集団での入院生活は、外出、持ち物、一日のスケジュールなどが決められており、やがて「退院したい」「外出したい」「好きなものを食べたい」などの人間としてあたりまえの欲求をあきらめることで、病棟での不自由さ受け入れます。 自分で決める権利を失い、「私のオモイ」を心の奥底に閉じ込めて、快適ではない療養環境での暮らしが続きます。 大阪精神医療人権センターでは「退院する権利」「私らしく自由に生きる権利」「幸せになること」はどんな人でも保障されている「基本的人権」であることを、病棟の中まで届ける活動を行います。 精神科病院を訪問し、あるいは電話や手紙による相談を通じて入院中の方の「オモイ」を叶える具体的な方法をお伝えしています。 そのためには、自分の思いを「表現」することで扉がひらき始める「空気」を社会に満たしていかなければいけません。 「退院したいなんて、病気が悪化していますね。」「お薬の時間です。ナースステーションに並んでください。」「どこに電話したか教えてもらえるかな?」これらはある精神科であたりまえとされてきた慣習です。 働いている職員も長く入院している人も、これは普通のことだと感じています。 読みたい雑誌を自分で決めることも、手元のお金を管理することも、おやつの時間やお風呂の回数も、「私」が決めることはできません。伝統的にそうなっています。誰が決めたかはわかりません。それが病院の文化として定着してきたのです。 一つの病棟が、1つの病院が、日本中の精神科が全体として共有している文化によって、入院中の方の権利が侵害されていることがあります。 国連が勧告する強制入院を可能にしている法律の廃止を 精神科の治療文化は、社会制度や法制度をはじめとした構造的問題を背景にしています。 この、「おおきなもの」を前にして、大声で存在をアピールしてもかき消されてしまいます。ひとりでは無力感しかありません。ましてや入院中の方や、職員として勤務していると、「声」をあげられない苦しさに押しつぶされてしまいそうだという声も届きます。 私たちの電話相談では、小さな声のひとつひとつに耳を傾け、拾い上げ、社会に発信してきました。入院中の方の家族や精神科で働く職員さんの声も電話相談に届いています。どなたも苦悩の表現を抑えつけられているようでした。 「おおきなもの」に「私」が飲み込まれないように「ここにいること」を主張していく。それに共感する人や参加、応援する人が集合すれば、「カウンターカルチャー」として認識され、渦となっていく。表現活動は「おおきなもの」と戦う時、強力なパワーになるのです。 行動制限により縮小を余儀なくされた「表現活動」もクラウドファンディングで応援してください 表現を原動力に「声」をとりもどす!演劇で精神医療を変えたい―クラウドファンディングプロジェクトhttps://readyfor.jp/projects/open-doors2022 「精神病院つばき荘」は、精神科医くるみざわしん脚本による演劇です。2019年に公演に向けて準備していましたが、新型感染症の流行によって、延期になっています。長期化するコロナ禍によって、演劇や音楽などのエンターテイメントは公演中止や制限ありの稽古といった大きなダメージを受け、精神科病院もまたクラスター発生や面会制限など混乱のさなかにあります。私たちは大阪で精神科病院に入院中の方が権利をつかうことをサポートするNPO法人です。好きな場所で自分らしく生きることは、全ての人に保障されている権利です。思っていること、思想、意見、主張、感情を誰かに伝えることも「表現の自由」として保障されています。歴史的にも「表現活動」は、大きな権力や抑えつけに対抗する強力な手段でした。 私たちは、表現活動を盛り上げることで、精神科病院をとりまく文化や構造的問題に「声」をあげる流れを作りたい。 その第一声として、延期になっている「精神病院つばき荘」を開催し、「声」を大きく集め、カウンターカルチャーとしての表現活動で治療文化を変えていきたいと思います。そのために役者さんの稽古にかかる費用や照明・音響などの舞台裏にかかる費用、作者や演者の声をみなさまに届けるための発信、パンフレットや解説ブックの作成など、開催にかかる費用の一部として120万円をご協力いただけないでしょうか。 ご支援もまた「声」として精神医療を変えていきます。 演劇「精神病院つばき荘」―あらすじ―「注射の上手な看護師から辞めていきますね」診察で医師の問いに患者はそう答えた。ここは精神病院つばき荘。40年の長期入院中の高木は、他の誰よりもこの病院の事情を感じていた。パターナリズム、通信制限、危機管理。山上院長は高木を利用して、院内政治を有利にしようと強引に保護室に隔離する。共感し寄り添うのは、注射が下手な看護師浅田であった。ある日つばき荘を大災害が襲う…。 Tremble = 震える/ Theater = 劇場2018年12月、新宿ゴールデン街劇場にて、くるみざわしん作の「精神病院つばき荘」にて旗揚げ。中心メンバーは元オフィス3◯◯の土屋良太と川口龍。作家を持たない役者集団ですが、表現する価値のあるものを常に生み出していきたいと考えています 北区つかこうへい劇団戯曲作法塾、伊丹想流私塾で劇作を学び、『うどん屋』で2007年テアトロ新人戯曲賞佳作。以後、関西を中心に活動し、『同郷同年』が「日本の劇」戯曲賞2016と第25回OMS戯曲賞大賞、『忠臣蔵・破 エートス/死』が2019年文化庁芸術祭新人賞。近著に『くるみざわしん...