ファーウェイ、自動車事業で新会社設立~業務提携から資本提携へ

ファーウェイの自動車事業の動きに注目が集まっている。ファーウェイはもともと他の自動車メーカーと協力する形で、自動車事業を推進してきたが、11月25日、長安汽車と「投資協力に関する覚書」を締結し、自動車事業の新会社を設立すると発表。ファーウェイは自動車事業を新会社に移管する。同時に新会社は出資者について他の企業へ門戸を開く形で、資本提携を通じて関係を強化。自動車事業の発展に弾みを付けたい考えだ。

■ファーウェイの自動車事業
ファーウェイが自動車事業に参入したのは2019年。自らは「車はつくらない」との方針の下、自動車メーカーに部品やソフトを提供する「他社との協力」の下で自動車事業を推進している。

他社との協力方式は大きく(1)部品サプライヤー、(2)HI(Huawei Inside)モデル、(3)スマートセレクトーーの3つに分けられる。(1)はエンジンやARヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)などの部品を提供するもの。(2)は自動車メーカーにスマートコックピットなどを含むスマートカー向けソリューションを提供するもの。自動車メーカーごとにカスタマイズした商品を提供しており、提携先は長安汽車。(3)はHIモデルの基礎のうえに、中核のスマート化技術のほか、ユーザー体験の設計、販売方法、品質管理などを含めた管理全般をファーウェイが行い、提携先の自動車メーカーは自動車をつくるだけ。つまり、スマートセレクトのほうがHIモデルに比べてファーウェイの関与が大きくなる。スマートセレクトの提携先は賽力斯(セレス)や奇瑞汽車。セレスはファーウェイとともに電気自動車(EV)「問界(AITO)」、奇瑞汽車は「智界(LUXEED)」を投入している。

ファーウェイ、「車はつくらない」方針を改めて表明

一方、ファーウェイと投資協力に関する覚書を締結した長安汽車はHIモデルを通じてファーウェイと協力関係にあり、「阿維塔(AVATR、アバター)」を投入。ただ、アバターの今年5~10月の販売台数は1万5,000台に満たず、販売は低調だ。また、HIモデルを採用している北京汽車傘下の北汽極狐も昨年の販売台数が1万2,000台程度にとどまっている。

ファーウェイの自動車事業の業績もさえず、依然として不採算。インテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)向けスマートソリューション事業の研究開発に約30億米ドル(約206億元)を投入した一方、昨年のICV向けスマートソリューション事業の売上高は20億7,700万元にとどまった。

■新会社設立で他社の資本参加呼び掛け
こうした中、ファーウェイの自動車事業に関しては売却観測もあったが、長安汽車と新会社を設立し、新会社に自動車事業のリソースを移管する選択となった。新会社はICV向けシステムや部品の研究開発、生産、販売、サービスなどを手掛ける予定。新会社の出資者については、長安汽車が最大で40%出資する。このほかファーウェイは、業務提携しているセレス、奇瑞汽車、江淮汽車、北京汽車にも資本参加を呼び掛けている。

うち江准汽車は12月1日、ファーウェイと「投資協力に関する覚書」を締結。ファーウェイのICVソリューションの技術を活用し、ともに製品の開発、製造、販売、サービスといった分野で全面的に協力すると発表している。

スマート化、自動化が進む中国の自動車業界。ファーウェイの新会社設立にあたっての他社との資本提携は、自社の革新的な技術だけでは自動車業界での生き残りは難しいとのファーウェイの判断が垣間見られる。

折しも、このところ中国の自動車業界では合従連衡が相次いでいる。ファーウェイと新会社設立を発表した長安汽車は新興電気自動車(EV)メーカーの蔚来汽車(NIO)と電池交換業務での提携を発表。NIOは吉利汽車とも電池交換業務に関する提携を発表するなど、各社がそれぞれ提携先を模索しながら主導権を握ろうとしている。

新興企業から従来型企業まで数々の企業が入り乱れる中国の自動車業界。その中でのファーウェイが今後どのような役割を担うのか注目される。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.