ファーウェイ、「車はつくらない」方針を改めて表明

華為(ファーウェイ)創業者の任正非・董事長はこのほど、社内文書で「ファーウェイは車をつくらない」との方針を改めて表明した。同時に、自動車のデザインなどでのファーウェイのロゴの使用に対して、条件を厳格にし、自動車のプロモーションや外観にファーウェイのロゴは使うことはできないと強調した。

■自動車事業参入モデル
ファーウェイは2019年にスマート自動車ソリューション事業を立ち上げ、自動車事業に参入している。
自動車事業への参入方式は、部品サプライヤー、HIモデル、スマートセレクトの大きく3つに分けられる。うち、中心となっているのはHIモデルと、スマートセレクト。
HIモデルは「Huawei Inside」の略で、スマートコックピットなどを含むスマートカー向けソリューションを提供するもの。自動車メーカーごとにカスタマイズした商品を提供しており、提携先は北京汽車傘下の北汽極狐、阿維塔(AVATR、アバター)など。
もう一つのスマートセレクトは、HIモデルの基礎のうえに、中核のスマート化技術のほか、ユーザー体験の設計、販売方法、品質管理などを含めた管理全般をファーウェイが行い、提携先の自動車メーカーは自動車をつくるだけ。つまり、スマートセレクトのほうがHIモデルに比べてファーウェイの関与が大きいのである。
スマートセレクトの提携先は賽力斯(セレス)で、セレスはファーウェイとともに電気自動車(EV)「問界(AITO)」シリーズを投入。問界には、セレスがつくった自動車にファーウェイのスマートソリューションを搭載。また販売はファーウェイの店舗で行われている。
3月中旬、この問界シリーズのプロモーションの文言が「AITO問界」から「HUAWEI問界」に変わったとの情報がSNS上で拡散した。これにより市場では、「ファーウェイの問界への支配力が強化された」、「ファーウェイが車をつくらないとの方針の変更を示唆するもの」などとの観測が広がった。
そもそもファーウェイの自動車事業に対するスタンスは、あくまでも自動車メーカーにソフトの提供などを通じてサポートを行い、自らが自動車はつくらないというもの。2020年11月に発表した公式文書で「ファーウェイは車をつくらない」との方針を明確に示している。ただ、この文書の有効期間が3年で、今年10月末が期限。文書の有効期限に近いこともあり、「ファーウェイは車をつくらない」との方針が変更されるとの思惑が強まった。
こうした中、3月31日、社内文書の中で「ファーウェイは車をつくらない」との方針を改めて表明。この文書の有効期間は5年間で、車をつくらない方針は引き続き有効であることが示された。また同文書ではファーウェイのロゴの自動車デザイン上での使用についても言及。条件を厳格にし、ファーウェイの商標を完成車のプロモーションや外観に表示してはならないことを強調した。

■自動車事業、収益化には至らず
ファーウェイの自動車事業の実績に目を向けると、決して芳しくない状況。特に、HIモデルの収益効果はあまり出ていない。
北京汽車と共同で投入した新型モデル「極狐αS」は納車を昨年7月に開始したが、昨年の「極狐αS」の販売台数は累計で1万台。販売目標の4万台を大きく下回った。もう1つのモデルである「AVATR11」は昨年12月に納車を開始したばかりで、直近の月次販売台数は2,018台となっている。
HIモデルの重要なパートナーである広州汽車集団もこのほど、ファーウェイとの関係を変更。子会社の広汽埃安新能源汽車の「AH8」プロジェクトについて、ファーウェイとの共同開発から自主開発に変更し、ファーウェイはサプライヤーの身分に格下げしたと明らかにした。
こうした中、今年に入ってファーウェイの自動車事業部門では人事異動が発生した。HIモデルを主導してきた王軍氏が退任。これにより、端末事業部門と自動車事業部門を率いてきた余承東氏が自動車事業を全面的に把握した。
余氏はファーウェイの自動車部門の収益性の改善の必要性をしばしば訴えている。昨年、「ファーウェイの自動車事業はファーウェイにとって唯一の赤字事業であり、同年の研究開発への投資だけで15億ドルに達した」と述べていた。また、同年12月の内部計画策定で、自動車事業部門について2025年に黒字化することを提案している。
HIモデルを主導してきた王軍氏の退任や収益性を重視する余氏の発言などを踏まえ、ファーウェイの自動車事業は「HIモデルからスマートセレクトモデルに軸足がシフト」するとの観測が広がっている。
ただ、スマートセレクト事業の問界の販売台数は昨年は好調だったが、足元では減速。月次納車台数は、昨年3月以降は増加傾向にあり、8月~12月までは11月を除いて1万台を突破していた。しかし今年に入り、1月が4,475台、2月が3,505台と急速に減少している。また1月には問界シリーズの製品を値下げしている。
「車をつくらない」との方針の下自動車事業の収益改善にはパートナーと良い車を売ることが先決。ファーウェイが自動車メーカーとの提携の中で自動車事業にどの程度踏み込んでいくのか注目される。

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