2022年の中国自動車販売、NEVが急伸~23年は伸び鈍化予想もNEV事業拡大に取り組む企業も
中国汽車工業協会がこのほど発表した2022年の自動車の生産、販売統計によると、生産台数、販売台数ともにプラス成長を確保した。特に、伸びが顕著だったのは新エネルギー(NEV)。補助金政策が追い風となった。その補助金政策は22年末で終了。加えて22年の急伸の反動で、23年は伸び鈍化が予想されている。とはいえ、自動車の電動化・スマート化の流れは必至。NEV事業拡大に向け新たな技術開発や戦略調整を積極的に進める企業は少なくない。
■22年全体の生産、販売は小幅な伸びもNEVは2倍近く
22年の中国の自動車生産台数は前年比3.4%増の2,702万1,000台、販売台数は同2.1%増の2,686万4,000台だった。全体の伸び率は小幅だったが、NEVに限っては大幅な伸びを記録。NEVは生産台数が前年比96.9%増の705万8,000台、販売台数は同93.4%増の688万7,000台に拡大し、全体に占める割合は25.6%に達した。
■大手に集約、販売最大の伸びはBYD
22年は大手メーカーへの集約度が高まったのも特徴だ。22年の自動車販売台数は、上位10社(グループ)が2,314万8,000台を販売し、全体の86.2%を占めた。
上位10社のうち、販売台数の伸びが最も顕著だったのは比亜迪(BYD)。22年4月にガソリン車の生産停止を発表したBYDは、ハイブリッド車(PHV)と電気自動車(EV)にリソースを集約し、NEV販売が急増した。同社の22年の乗用車販売台数は前年比155.1%増の186万2,400台に拡大し、NEV販売台数で世界トップとなった。このうちDMモデル(プラグインハイブリッドモデル)の販売台数は94万6,200台で、EVモデルの91万1,000台を上回った。
■NEV事業拡大に向けた企業の取り組み
22年は補助金政策を追い風に大幅な伸びを記録した中国のNEV市場。補助金政策が廃止となる23年のNEVの販売動向については、比較対象となる22年の急伸からの反動もあり、伸び鈍化が予想されている。とはいえ、自動車の電動化・スマート化が必至の状況下、NEV事業拡大に向け、自動車メーカーは戦略調整や新たな製品開発を進めている。
長城汽車は、傘下の最大の完成車部門である哈弗(ハーバル)ブランドが、従来の「SUV分野のリーダー」から「新エネルギー車のSUV専門」メーカーへの転換を表明。新たなNEVの発展戦略やブランドロゴ、ブランドポジショニングなどを明らかにした。
長城汽車がNEV事業で力を入れているのがプラグインハイブリッド車。プラグインハイブリッド車の投入をテコにNEV事業のモデルチェンジを図っている。長城汽車のプラグインハイブリッドモデルは10車種で、販売価格は10万元から25万元に集中しているが、「摩卡DHT-PHEV」については30万元前後のハイエンド車種に位置づけている。
長城汽車は燃料電池の開発も積極的に進めている。傘下の水素燃料電池の開発を手掛ける未勢能源はこのほど、シリーズBラウンドで5億5,500万元の資金を調達した。水素エネルギー及び燃料電池の重要技術、コア製品・部品の研究開発を進め、ハイパワー燃料電池システム、スタック、水素貯蔵タンク、ボトルバルブ、減圧バルブなど、多くの製品開発で難関技術のブレイクスルーを実現している。
燃料電池分野では、吉利控股集団もメタノールを燃料とする自動車の研究開発を国内で最も早く着手。商用化を実現し、メタノール燃料の車種20余りを開発し、累計走行距離は100億キロ近く。世界で初めてメタノール自動車の量産を実現している。
各社NEV事業拡大に向けて新たな取り組みを模索する一方、新興自動車メーカーは依然として赤字が続いているという収益性の課題がある。また、補助金政策に依存してきた側面も少なくなく、別の政策支援が必要とみる向きもある。23年の中国のNEV市場では、各社の収益性向上に向けた取り組み、そして政策の動向が注視されよう。