迫り来る中国EC新興勢力 アリババと京東の変革待ったなし

「海外進出の成功者が未来の最大のECプラットフォームとなるだろう」

11月10日、湖北省武漢市の京東MALLオープンイベントが大勢の消費者を呼び込んだ。写真/視覚中国

イントラネットに同時期に書き込まれたある2件の文章は期せずして大手EC2社の焦燥感を浮き彫りにした。京東の一社員は自社のイントラに長文を掲載し、現在の販促システムはあまりに複雑なほか販促イベントにおける能動性が低く低価格戦略が徹底されていないと述べた。これは京東の苦境を十二分に物語るものだった。

「これほど問題が多い原因は当然ながら私の管理の不適切にあり大きな責任感を感じる。だが私がそれに甘んじることはないし、従業員の皆さんもそうであってほしい」。京東の創業者で董事局主席の劉強東氏は上記のコメントに返信する際に心境を吐露したうえで「変わらなければ未来はない」と意思を表明した。

この少し前にECサイト「拼多多(Pinduoduo)」の時価総額がアリババに接近したが、同社社員もイントラ内で自身の思いを語った。「眠れないし考えたくもないが、拼多多の時価総額が一気に1855億ドルと我々の1943億ドルとわずか80億差のところまで来た。全くもって驚きだ。取るに足りなかったあの安売り戦法の使い手がいまでは大物になりかけている」。社員の焦りを目にした馬雲氏(ジャック・マー)は自らの決意とともに次のようなコメントを寄せた。「あらゆる偉大な企業は冬に誕生しているものだ…拼多多の近年の意思決定力、事業推進力そして努力をたたえるべきだろう。一方で私はアリババが変わっていけると堅く信じている」。

拼多多の昨年の第3四半期売上高は前年同期比93・9%増の688億4000万元に達し、市場予測の548億元を大幅に上回った。

京東の時価総額をとうの昔に超えていた拼多多は決算発表間もなくアリババの時価総額をも抜き、一躍「中国概念株〔中国外で上場している中国企業の株〕」の頂点に踊り出た。同社は10年足らずで京東とアリババの時価総額を超え、ショート動画やライブからEC業界に参入したバイトダンスにも激しく迫る勢いだ。老舗EC代表格のアリババや京東のプレッシャーは大きい。

「何が契機となり会社勤めのホワイトカラーは拼多多への態度を一転させたのだろうか」。長江商学院経済学教授の李偉氏は同社の時価総額がアリババを超えたことが一つの分水嶺だったと考える。今回の転換は市場競争、サイトのビジネスモデルの戦略革新の結果だろう。「もし老舗EC企業がこれを見て見ぬふりをし、これまでのビジョンや戦略を継続し実務者層だけが努力する状況が続けば、未来の市場は真の意味で消費者側にサービスを提供できている新たなプレーヤーの手に渡るだろう」

蘇寧の二の轍を踏みたくない京東

このほどネット上に流れたある情報によれば劉氏の人事副総裁が劉氏の直筆サインを持って著名ライバー董宇輝氏を陕西省でハンティングしたという。交渉は順調に進み、董氏が京東に加わる可能性はかなり大きいとの噂だ。さらには劉氏が自ら董宇輝氏と密会したとの話もある。京東は回答を控えているものの董氏はこの情報を否定している。

だが、「京東には董氏のような大物IPがいない」というのは、ライブショッピングで結果を出したい京東にとっては痛恨の極みであり、たから京東は、すぐにでも人材を獲得して新業務を全力で発展させる必要があるということでもある。

劉氏はこれ以前にも組織の問題に関するコメントを発していた。彼が特に強調したのが現在の組織規模が過大で効率が悪く、変革には確かに時間がかかるという点だった。

京東は物流、IT、リテール、製造などの業務ラインでリストラを実施中であり、経済補償金は給与プラス1カ月分で、年末賞与はゼロとのスクープも報じられた。また部門ごとにその比率は異なっており、所属部門の比率が大きければ2024年もリストラが続くという。

とはいえ京東はこれを否定している。同社はいまも従業員の募集を続けており社員総数は59万人に達しているとのことだ。

実のところ劉氏が組織効率の悪さを意識したのはこれが初めてではない。昨年の11月、香港にいた彼は京東の経営管理研修会にウェブで参加し、3時間にわたって厳粛な発言を続け、リテール業務幹部の「コスト、效率、体験」偏向型の経営戦略を名指しで批判し、パフォーマンスの悪い副総裁クラス以上の幹部の1割をリストラすると述べた。

また一昨年末のリテール内部大会の場では「低価格」を繰り返し強調するとそのままマネジメントの第一線に復帰し、昨年12月で丸1年が経過している。

劉氏はそれ以降、上層部に対する大規模な改革や事業グループの階層廃止、複数のグループ会社のCEO交代などに取り組んでいる。かつて最も信頼していた徐雷氏、10年来の戦友の辛利軍氏も例外ではなく、CFO出身の許冉氏が京東集団の CEO兼JDリテール〔京東零售〕の CEOとなった。

メディアの報道によれば、京東が昨年内部で特に強調したのが「戦闘チーム」のリーダーとグループ会社CEOとの間が二階層しかない理想的な状態の実現だった。これは京東が組織効率と最適化の相乗効果を高めるべく階層削減と組織構造のスリム化を図っていることを意味する。

同社は劉氏の復帰から1年でどのようにパフォーマンスを上げたかみてみよう。昨年第3四半期の売上高は2477億元と前年同期比でプラス成長を遂げた。サービス収入は524億元で総売上高の21・2%に達して過去最高、また純利益は前年同期比33・09% 増の79億3600万元に達し、複数の重要指標が市場予測を上回った。だが、劉氏がそれでも焦りを覚えたのはなぜだろうか。

細かい比較でみえてくるのが、京東の第3四半期の売上高は1・7%増で、前年同期の11・35%増を大きく下回るだけでなく第2四半期の7・6%増にも満たない点だ。純利益は33%増だったものの前年同期の312%増からみればはるかに見劣りするもので、第2四半期の50・3%増にも達しなかった。

基幹業務である小売業務の成長はほぼ停滞状態にある。昨年第3四半期の小売売上高は前年同期比わずか0・1%増の2120億6000万元、経常利益も前年同期比0・68%増の110億元だった。

より長い時間軸でみると、京東の2020年から2022年の売上高の伸びはそれぞれ29・28%、27・59%、9・95%となっている。劉氏は2022年10月に社内に向けたメールで「我々の3C家電業務の成功に伴い、分をわきまえない傲慢な社員が増えている。価格設定権を握っていると考え、低価格という我々の優位性を気にも止めなくなった。これが続けば近いうちに我々が第二の蘇寧(Suning)になるのは確実だろう」

アリババも直近1年間は組織改革の変動期にあったが昨年3月末にその情報が広まった。張勇氏は社員全員に宛てたメールでグループの「1+6+N」組織改革を実施していくとした。その後間もなくアリババ傘下でECを手掛ける淘天集団は「中小企業」「ブランド業務」「スーパー業務」からなる三大業界発展部を設置し生産関係と管理体系の調整を率先していくとした。これに続きアリババの前トップ張勇氏が正式にCEOを退任し、巨大な船の舵取りを蔡崇信氏と呉泳銘氏に譲った。

昨年11月下旬、米国株式市場での取引開始後に拼多多の株価が一時4%高となり、時価総額が1920億米ドルとアリババの1916億ドルを超え、米株式市場で時価総額が最も高い中国概念株となった。アリババの終値は同日中に拼多多を超えたとはいえ、拼多多は12月1日の終値で時価総額のトップの座を再び奪還した。

これ以降半月余りの間に両社の時価総額は接戦を繰り返したが、拼多多がしぶとさをみせ、12月15日の終値で時価総額がアリババの1897億6100万ドルを100億ドル近く上回り1970億ドルとなった。

拼多多の時価総額がアリババを超えたのはきわめて歴史的意義の大きい出来事であり、中国EC業界の構図の変化のみならず2大ECプラットフォームに対する資本市場の好感度の変化を反映していると、多くの業界関係者がみている。

次世代EC業者がゲームチェンジャーに

 一見単純にみえる株価の変化だが、見逃せないのがその根底にある事業方針の変化だ。

長江商学院経済学教授の李偉氏は昨年11月11日独身の日の各ECサイトの戦績を分析し、足元においては消費者が低単価商品を購入する傾向がより強くなっていると指摘する。アリババと拼多多の時価総額の分かれ目となった要因として、アリババを含む既存ECサイトの経営戦略は出店者にサービスし依存するもので、出店者寄りの向きがある。一方で拼多多が選んだのは幅広い基層の購入者に寄り添った経営戦略だという。

拼多多の初期の値引き戦略は基層の消費者に小さな恩恵をもたらし、その後「100億元ばら撒きキャンペーン」により中所得者に実益を与え、現在ではサイト全体での「返品時も返金不用」の大々的な実施に至っている。成立から8年、拼多多の事業の戦略、推進そして努力はほぼ消費者側に寄り添ったものだ。

取材した人々の多くは「低価格」が現在のECサイトの必勝の決め手だと語る。EC業務のベテラン担当者は本誌に対し、拼多多の最大の強みはその「ステレオタイプさ」であり、同社サイトの商品が最安値だと消費者が思い込んでいる点だという。

「京東はすでに一部消費者に値上げを続けているという印象を持たれているが、我々は多くの階層の消費者にサービスを提供すべきであり、富裕層とそうでない人々いずれのことも考える必要がある」。劉氏はこう述べたうえで、自身の現在の生活が良くなったからといって究極のコストパフォーマンス性という多くの基層消費者への訴求を無視してはいけないと指摘した。

アリババも同じく低価格に回帰しつつある。創業者ジャック・マー氏は昨年5月に、限られた管理職のみを集めた交流会の場で淘宝や天猫の未来の3つの大きな方向性について語った。それはタオバオ、ユーザーそしてインターネットへの回帰だが、そのうえで「アリババの過去の成功に頼った方法論はすべて通用しない、迅速に改めるべき」と指摘した。彼がタオバオへの回帰を強調する大きな背景はEC業界の低価格時代がすでに到来していることだ。

集客のため今年は各サイトが多種多様な販促キャンペーンを次々と打ち出しており、価格競争も激しくなるばかりだ。上海財経大学Eコマース研究所の崔麗麗執行所長によれば「創業者たちはもはや崖っぷちであることを悟っている」。次世代のEC事業者は業界をひっくり返し本格的に大手を追い抜きつつある。

ある小規模家電ブランドの責任者は近年のECサイト上での事業を通じて各大手ECサイトの変化を感じている。彼の認識では各ECサイトにはそれぞれの購買者像があるという。例えば京東の購買者は中年寄り、拼多多は18~20歳そして40歳以上という二極化構造、さらにアリババのタオバオ系の購買者は全年齢層にわたっている。彼のブランドは今年各ECサイト上での販売額がいずれも落ち込んでいるが、京東では半分以下になるなど顕著だという。

コンサルティング会社「百聯諮詢」の創業者の荘帥氏によれば、中国EC事業者の構図はこの3~4年ですでに大きく変化しており、「アリババVS京東」から「アリババVS京東VS拼多多」そして「アリババVS京東VS拼多多VS抖音VS快手」の様相を呈し、美団や視頻号がこれに続いている。今後はアリババの事業分割、拼多多の急成長、そして抖音の上場成功などに伴うさらなる変化が待ち受けているだろう。

しかし、掃除ロボットなどを手掛ける家電メーカー石頭科技〔Roborock〕の責任者は、なかでも京東や天猫は従来型のチャネルつまり「商品棚式」モデルに属するという。掃除ロボットといった単価の高いスマートハードウェアは天猫や京東が依然として主要な販売チャネルだ。こうしたプラットフォームの経営戦略はほぼ同一であり、出店店舗に対する持続的な投資と長期的な運営、そして質的な成長を求めており、短期的な大規模投資による飛躍的な売上増を目指していない。

彼はEC事業者の業界構図が数年で完全に逆転するとは考えていない。抖音と拼多多は、今後数年間は急成長を続けるだろうが、大手EC事業者は依然として主流であり続けるとみている。それは第1にひとたび消費者層の消費習慣が形成されればそれを変えるのは難しいためだ。第2に大手EC事業者のほうが基盤は厚い。商品も豊富で、商品調達ルートも幅広い。これは低価格競争においても優位性がある。第3にアフターサービスや物流を含む消費体験という意味でもアドバンテージがある。

低価格戦略は有効か

周知のとおり京東は国内ECの創成期において3C家電から商売を開始し、「価格合戦」を頼りに国美、蘇寧に包囲されるなかビジネスを開拓してきた。「大型家電は3年間利益ゼロ。量販店の国美、蘇寧より最低10%以上安い値段で販売する」との劉氏の戦略が消費者の購買意欲を引きつけ、京東の3C家電業界における優位性が徐々に確立された。

20年以上の成長期を経て国内EC業界は徐々に成熟し、各サイトの属性および市場でのポジションは比較的に明確となり、消費者心理を改めるのはそう容易ではなくなった。

昨年末、京東が内部で「低価格特別キャンペーン」を実施中であるとの情報がEC業界に出回った。京東の情報筋によれば、同社はコスト、效率、商品、価格、サービスの経営5要素のうち価格を第1に据えて、自社の価格面での競争力を向上させる必要があることをすでに自覚し始めている。「高級または高価格という京東に対する消費者の固定観念を変える必要がある」という。

商務部研究院EC研究所の洪勇副研究員が指摘するとおり、低価格競争はすでにネットショッピングをめぐる重要な現象であり、価格面での優位性維持のため、多くのEC企業がサプライチェーンの最適化によりコストを引き下げることで低価格を維持しようとしている。

京東は事業改革の面で待ったなしの状況にある。具体的な措置でいうと、同社が昨年の最重要改革と位置付けているのが自主運営〔出店者を介さず自社で商品調達から配送までを担う〕とPOP〔プラットフォームオープンプランの略称で、出店者自身で配送やアフターサービスなどを手掛け、京東は手数料を得る〕の2大業態を結びつけることだ。両方を同一のカテゴリー責任者が管理することで、アクセス数の偏りをさらに是正するというものである。

京東は過去に比較的バランスの取れた「自主運営+POP」混合モデルを構築していたが、自主運営の割合が大きく、そのGMV(流通取引総額)がサイトの過半数を占めていた。EC専門家の謝璞氏が指摘するに、自主運営の本質は小売業者であり、粗利は主として商品の仕入額と販売額の差にある。京東はいま小売業者というポジションから脱却しオープンプラットフォームへの転換を試みている。このほか昨年3月は100億元ばらまきキャンペーンも実施した。

京東は昨年11月11日の独身の日に「真便宜〔確実に安い〕」をキャンペーンの大きなテーマとした。この間、著名インフルエンサーの李佳琦および家電メーカーの海氏烘焙とのの「ネット最安値」をめぐる三つ巴の論争がネット中の注目を呼んだ。独身の日前にこうした商戦が繰り広げられたのは、ほかでもなく3者がアクセス数を奪い合っているからだ。一体どこが最安値なのかと。京東のライブルームでの初回配信のテーマは「李佳琦より低価格、現品すべて半額」で、わずか1度のライブでのべ数千万人が視聴した。これは京東の選択を別の面から示している。つまり、低価格に支えられたアクセス数アップを早急に必要としているということだ。

他方アリババは、昨年初めに価格競争力が5大戦略の一つになり、淘天集团内部では価格競争力が非常に重要視された。アリババの情報筋によれば、今年はタオバオ系列全体で価格比較をおこない、それをもとに「おすすめ商品」を決めるということだ。こうして出店者に価格競争を促し、そうすることで強みをもったサプライチェーン事業者を探し出す試みである。

しかし、低価格戦略から1年経過したいま、直近の決算データをみる限りアリババと京東の戦略効果はぱっとしない。

国家統計局のデータによれば昨年第3四半期、中国国内の実物商品EC小売総額は前年同期比6・9%増の2兆9812億元だった。同時に、3大モールはそろって業績を伸ばしているが、成長速度にバラツキがあるのもわかっている。第3四半期の成績をみると淘天集団の売上高は前年同期比4%増となった一方、京東零售は前年同期比でわずか0・06%、対して拼多多の売上高は前年同期比94%増だった。

現時点でみる限り、既存ECの低価格戦略の効果は決して思わしくないと崔氏は指摘する。拼多多が成果をあげているのはなにも低価格のせいだけではない。アクセス方法の簡素化、購入方法の工夫と宣伝を含めて、低価格への期待と「買いやすさ」がすでに人々に浸透しており、こうした人々は一般的に複数のサイトを利用しようとしない。さらに、100億元ばらまきキャンペーンで獲得した他サイトのユーザーも低価格に好感を覚えていることに加え、「返金の際に商品を返さなくていい」サービスもある意味、単純で乱暴ではあるが消費者を適切に保護するものとなっている。

上述のアリババに近い関係筋の話では、目下各ECサイトは消費者の立場にたってそのニーズを考え、一連のキー戦略を通じて自社サイトに固定したイメージをもってもらおうとしている。だが一方で、各サイトの価格競争力強化の施策は実施からまだ日が浅く、内部的にはまだ流動的で戦略として固まっていない。消費者からすれば、サイトの変化を実感できていないのだ。「1人の考えを変えただけでは変化とは呼べない。現在変えようとしているのは消費者、販売店そしてプラットフォームの3者間の関係だ」

洪勇氏が考えるに、アリババと京東は低価格戦略をめぐり調整と改革を実行し、運営コスト低減とサプライチェーン最適化、そしてよりコストパフォーマンスの優れた製品を販売するといった方法を通じて拼多多との競争に立ち向かっている。だが、いまのところ目立った成果は出ておらず、検証に時間がかかるのは明らかだ。

海外市場が第二の戦場に

 昨年は中国EC業者にとって2つの「元年」だったと業界関係者は述べる。つまり、モバイルデECプラットフォームが生きるか死ぬかという「プラットフォーム競争」元年であると同時に海外進出の元年でもあったということだ。

海外市場が国内ECサイトの第2の戦場になりつつある。税関総署のデータによれば、昨年第1四半期から第3四半期までの中国越境EC輸出入額は1兆7000億元と前年同期比 14・44%増だった。第3四半期は Temu、SHEIN、TikTok Shop、阿里速売通をはじめとする中国サイトのパフォーマンスが目を引いたが、これはつまり中国越境ECの競争がより激しい持久戦に突入したことをも意味する。

世界のEC市場規模は近年拡大を続けており、2014~2022年の間にほぼ3倍になった。米市場調査会社eMarketerは、今後数年でこの数字は56%増となり、2026年には約8兆1000億元に達すると予測する。著名な越境EC専門家の張周平氏はECの海外進出が目下急成長の段階にあり、市場ポテンシャルは巨大で市場ニーズもまだまだ満たされていないと述べる。

「メイドインチャイナ」が急ピッチで海外進出しているのは中国ECサイトのおかげ――これもすでに大方の趨勢になっており、各大手EC企業の決算からもこの傾向が読み取れる。

拼多多の、爆発的成長をとげた昨年第3四半期売上高をみると、中身はオンラインマーケティングと商品の売上で構成されている。なかでも商品売上高の増加が顕著で、前年同時期の70億元から315%増の291億元に達した。主な内訳は、100億元ばら撒きキャンペーンの波及、Temu〔拼多多の海外ECサイト〕の海外売上高、多多買菜〔共同購入サービス〕の手数料収入である。

拼多多の決算からTemu関連のデータは直接読み取れないが、中国国内の多くのアナリストは、同社が今期に大幅に売り上げを伸ばした主要因はTemuが新たな成長分野になったこと、その成長の勢いが予想を上回っていたことだとみている。関連研究データによれば、Temuの第3四半期の売上高はすでに50億ドルを突破しており、9月のある1日のGMVは8000万ドルに達した。

Temuは国内サプライチェーンの低コスト・高効率という強みを土台に、拼多多が国内で展開している均衡破壊的な顧客獲得戦と超低価格戦略、そして洗脳的広告といったものを海外ビジネスにも適用し、海外市場での急拡大を実現してきた。報道によると、Temuは直近1年間で世界47カ国でのサービスを開始した。スマホアプリのダウンロード数は延べ2億回、9月の利用者数は延べ1億2000万人、そのうち半数が米国以外のユーザーだった。

Temuは拼多多の中国国内での均衡破壊的な顧客獲得方法、超低価格戦略、洗脳的広告といった作法を海外ビジネスにも適用し、海外市場での急拡大を実現してきた。写真/視覚中国

アリババのグローバル事業も急成長中だ。第3四半期の決算ではグローバル小売事業の売上高は前年同期比73%増の189億7800万元だった。今期は速売通、Lazada、Trendyolなどの主要小売サイトが、アリババのグローバルデジタルビジネスグループの小売事業で、トータル注文件数を前年同期比28%増にまで引き上げた。

一方で京東はというと、今期の京喜などの海外EC新事業は38億2000万元の売上増にとどまっており試練となっている。ただでさえ競争の激しい国内EC市場でのシェアを死守しなければならないうえ、第2の成長曲線を早急に見いだす必要もある。京東の海外戦略での失敗は、ライバルにさらに水をあけられる事態につながりかねない。

上述の謝氏が分析するに、拼多多の海外事業の発展の背景には「中国でつくっていること」、すなわち強力なサプライチェーンに加え、全面委託管理モデルで商品の価格決定権をコントロールできていることがある。出品者はサプライヤーとして商品の提供のみをおこない、店舗運営、物流・出荷、アフターサービスなどのプロセスはすべてプラットフォーム側が担う。

このモデルは他の越境ECサイトでも徐々に広まり始めているが、「価格競争のための価格競争」を招き良品が駆逐されてしまう可能性がある。

崔氏も指摘するとおり、ビジネスのロジックからいうと、越境ECにおける同モデルは初期においては非常に早期の効果が見込めるが、将来的にサプライチェーン上でどう利益分配するか、川上のメーカーがそうしたスマイルカーブ〔商品の開発から販売までの各プロセスの収益を示す曲線〕の低価値段階に属することをどこまで望むのかといった検討すべき問題がある。これは同モデルの持続可能性に関わっており、拼多多は今後彼らをいかに活用し権限を付与していくかという問題を解決しなければならない。

 

「海外事業を成功させたプレーヤーが今後最大のECサイトになる」。謝氏が考えるに企業は永遠に起業という段階にあり続けるべきであり、それ以外にターニングポイントでの新たな成長曲線を見いだす方法はない。拼多多の中国国内外での台頭はまさにこうした事実をライバルに知らしめる警鐘となっている。

 

※月刊中国ニュースより

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.