中国の600億元規模の乗用車購入減税で消費刺激、生産回復に期待

中国・国務院は5月23日に開催した常務会議で、景気安定化に向けた包括的な措置を打ち出した。措置には自動車消費を刺激するための乗用車購入減税やサプライチェーンの安定化が盛り込まれた。一連の景気対策は、足元で落ち込んでいる自動車消費を刺激するとともに、自動車産業全体の回復に資するものと期待が寄せられている。

■低迷する自動車市場

自動車は個人消費に占める割合が比較的高く、経済成長をけん引する役割を担っている。国家統計局のデータによると、2021年の中国の自動車類の小売総額は前年比3.6%増の3兆7,000億元。消費支出全体の8.4%を占めている。ここ10年の自動車消費の消費支出全体に占める割合は8.3%~11.1%の間で安定推移している。

ただ、今年に入り新型コロナウィルス感染拡大防止を目的とした厳格な防疫措置などを背景に自動車消費は落ち込んでいる。中国汽車工業協会によると、今年1〜4月の新車販売台数は前年同期比12.1%減の769万1000台。うち乗用車が4.2%減の651万台、商用車が39.8%減の118万1000台にそれぞれ縮小している。

消費が落ち込む中、供給サイドも厳しい状況だ。部品メーカーなどを含む産業チェーンに組み込まれている一部の企業は生産、引き渡しが難しい状況。自動車は産業チェーンの裾野が広いだけに、一部で問題が発生すると全体への影響も大きくなる。

■600億元規模の減税を段階的に実施

こうした中、国務院は乗用車購入に対して総額600億元規模の減税を段階的に実施すると決定した。600 億元は、中国の21年の自動車購入税額の17%に相当する規模。減税率などの詳細は今後発表される予定だが、仮に販売価格が10万元のガソリン車の場合、購入税は8,850元のため、全額免除された場合、600億元の減税は678万台のガソリン乗用車をカバーできる計算。税が半減された場合は購入税4,425元が免除されるため、同1,356万台をカバーできる計算になる。678万台は21年のガソリン車販売規模の38%、1,356万台は同75%を占める規模になり、減税による購買刺激効果が期待されている。

中国政府は金融危機後の09~10年、15~16年、20年以降、自動車購入での税優遇を実施。このうち、15年以降は優遇対象がガソリン車から新エネルギー車にシフトし、新エネルギー車の販売比率拡大など構造的な変化ももたらした。

今回の減税方法の詳細は明らかでないが、ガソリン乗用車への恩恵が大きいとの見方が少なくない。特に足元では、ガソリン乗用車に対しては、(1)末端の割引率が低水準にあること、(2)在庫が低水準にあること、(3)新エネルギー車に比べてガソリン乗用車の販売低迷が鮮明なことー-などを背景に今後の販売の回復余地が大きいとみる向きもある。今回の減税措置で「100万~200万台の乗用車の新規需要が喚起される」との予想も出ている。

国務院常務会議で打ち出された景気対策は乗用車購入税減免のほか、サプライチェーンの安定化に向けた措置など供給サイドを対象とする内容も盛り込まれ、生産回復を含めた自動車産業全体の回復に期待が寄せられている。

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