ファーウェイの2023年決算は大幅増益~端末事業と自動車事業の業績改善が鮮明に
ファーウェイの2023年決算は大幅増益~端末事業と自動車事業の業績改善が鮮明に
ファーウェイが3月29日に発表した2023年12月期決算では、大幅増益を達成したことが明らかになった。過去数年の米国からの制裁を跳ね除け端末事業の業績改善が鮮明となった格好。また不採算が続いている自動車事業(インテリジェントカー・ソリューション事業)の業績も上向いている。巨額の研究開発費で知られる同社の2023年の研究開発費は1647億元。同年の売上高の23%に相当する額で、過去10年の累計の研究開発費は1兆1100億元に達した。
■利益は倍増
ファーウェイの2023年の売上高は6423億元、純利益は356億元。前年に比べると、売上高が9.6%増、純利益は144%増となった。ファーウェイは2023年決算について、「全体の運営状況は予想とほぼ合致した」と指摘。「過去数年、(米国からの制裁など)数々の試練に直面しながらも、成長を続けている」と総括している。
事業別の売上高は、ICT(情報通信技術)インフラ事業が2.3%増の3620億元、端末事業が17.6%増の2515億元、クラウド事業が21.9%増の553億元、デジタルパワー事業が3.5%増の526億元、インテリジェントカー・ソリューション事業が128.1%増の47億元だった。
■「Mate 60 Pro」投入で端末事業堅調
このうち、注目されるのは、米国の制裁の影響を大きく受けた端末事業が20%近い増収を達成したこと。2023年8月に投入した「Mate 60 Pro」の売れ行きが好調だったことで同事業の業績が押し上げられた格好だ。「Mate 60 Pro」は自社設計のチップを搭載したことなどで注目を集め、販売は好調に推移した。
新製品の投入でファーウェイの携帯電話販売台数は大幅に増加。調査会社Canalysによると、2023年第4四半期の中国全体の携帯電話出荷台数は前年同期比1%減の7390万台に縮小したが、ファーウェイは47%増の1040万台に拡大した。2023年通年の出荷台数は48%増で、出荷台数全体に占めるファーウェイのシェアは12%。前年の8%から拡大し、シェア6位になった。
■自動車事業は大幅増収
インテリジェントカー・ソリューション事業の大幅増収も注目点の一つ。前述の通り、同事業の売上高は2倍以上になり、売上高構成比は前年の0.3%から0.6%に拡大した。
ファーウェイのインテリジェントカー・ソリューション事業は2019年5月に設立。設立以降、同事業の研究開発費は300億元を超えているが、収益化はまだ実現できておらず、同事業はファーウェイにとって唯一の赤字部門。最初の1年目は100億元の赤字、2年目は80億元の赤字、昨年は60億元の赤字だった。しかし、経営陣は「今年は黒字転換を達成できる」との見通しを示している。
ファーウェイの自動車事業は、自らは「車はつくらない」との方針の下、自動車メーカーに部品やソフトを提供するなど「他社との協力」の下で自動車事業を推進している。
他社との協力方式は大きく(1)部品サプライヤー、(2)HI(Huawei Inside)モデル、(3)スマートセレクトーーの3つに分けられる。(1)はエンジンやARヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)などの部品を提供するもの。部品の出荷数は現時点で300万セットを超えている。
(2)は自動車メーカーにスマートコックピットなどを含むスマートカー向けソリューションを提供するもの。自動車メーカーごとにカスタマイズした商品を提供しており、提携先は長安汽車。今年は東風汽車傘下の「嵐図」と「猛士」もHIモデル陣営に参画する予定となっている。
(3)はHIモデルの基礎のうえに、中核のスマート化技術のほか、ユーザー体験の設計、販売方法、品質管理などを含めた管理全般をファーウェイが行い、提携先の自動車メーカーは自動車をつくるだけ。つまり、スマートセレクトのほうがHIモデルに比べてファーウェイの関与が大きくなる。スマートセレクトの提携先は賽力斯(セレス)や奇瑞汽車。セレスはファーウェイとともに電気自動車(EV)「問界(AITO)」、奇瑞汽車は「智界(LUXEED)」を投入している。
ここにきて収益性が向上したのは、(3)の方式で提携しているセレスと共同で打ち出した「問界(AITO) M7」の販売が好調に推移していること。2023年、ファーウェイはインテリジェントカー向けの鴻蒙智行 (Harmony Intelligent Mobility Alliance: HIMA)を立ち上げて、セレス向けの製品をアップグレード。「AITO M7」は発売以来、累計の納車台数が2024年2月末時点で10万台を超過。「AITO M9」は2023年末の発売以来、累計で5万台を納車した。
■今後のファーウェイの自動車事業
注目されるのはファーウェイの今後の自動車事業の行方。2023年末には長安汽車と新会社設立を発表し、自動車事業を新会社に移管する方針を示している。新会社の出資者は長安汽車のほか、業務提携しているセレス、奇瑞汽車、江淮汽車、北京汽車にも出資を呼び掛けており、これまでの業務提携から資本提携へとさらに緊密な関係を築こうとしている。
日系でもトヨタがファーウェイと自動車事業で提携すると報じられる中、ファーウェイが自動車事業をどのように進化させていくのか、引き続き目が離せない。