中国史劇を彩る装飾品:「鳳冠」に宿る数多の伝統技術

鳳冠(ほうかん)

中国史劇の魅力といえば壮大なスケールや複雑に絡み合う人間ドラマ、そして物語を彩る絢爛豪華な装飾品の数々。今回は中国の皇后や高位の女性が重要な儀式や婚礼の際に着用した伝統的な頭飾り「鳳冠(ほうかん)」に用いられている多様な工芸技術と、鳳冠の要ともいえる「青色の装飾」に隠されたとある技法についてご紹介します。

鳳冠に用いられている工芸

鳳冠は、以下の四つの主要な技法を用いて作られる複合工芸品であり、それによって視覚的に複雑な印象を生み出します。さらに、「点翠(てんすい)」技法を組み合わせることで、より一層豪華な仕上がりとなります。

主要な技術

  • 鏨刻:金属の表面に鏨(たがね)を使って模様や文字を彫る技法。細かい装飾や立体感のあるデザインを施す際に用いられる。
  • 溶接:金属の接合技法の一つ。高温で金属を溶かし、異なるパーツをしっかりと結合させる。鳳冠の複雑な構造を支える重要な工程。
  • 象嵌:異なる素材(宝石や貴金属)を土台の金属に埋め込んで装飾する技法。鳳冠の華やかさを引き立てる要素の一つ。
  • 花絲:細い金属線を編んだり、曲げたりして模様を作る技法。繊細で優雅なデザインを生み出し、鳳冠の装飾に欠かせない。
花絲工芸の加工技術
  • 掐花:細い金属線を手作業で曲げ、花や葉の形を作る技法。華やかな装飾を生み出す。
  • 盤曲:金属線を巻いたり、ねじったりして立体的な装飾を作る技法。動きのあるデザインを表現する。
  • 填絲:花絲の枠内に細い金属線を詰め、模様を埋める技法。緻密で繊細な装飾を可能にする。
  • 堆累:金属線を何層にも重ねて装飾する技法。立体感や奥行きを強調し、豪華な仕上がりになる。

このような花絲工芸の技法を組み合わせることで、繊細で美しい鳳冠の装飾が完成します。さらに、花絲工芸に宝石を象嵌する加工は「花絲象嵌工芸(かしぞうがんこうげい)」と呼ばれ、一層華やかになります。

点翠(てんすい)点翠(てんすい)

鳳冠に広く施されている青色の装飾は、「点翠(てんすい)」技法によって作られています。点翠とは、カワセミの羽毛を金属工芸と組み合わせて装飾する技法のことです。

カワセミの羽毛は、異なる光源の下で青紫やターコイズブルーなどの色彩を放ちます。当時、この虹色の光沢と羽毛の自然な模様が合わさることで、鳳冠は精緻で生き生きとした印象を与え、さらに金の縁取りを施すことでより華やかで豪奢な仕上がりになるとされていました。

現在では、カワセミを保護するため、ガチョウの羽など比較的入手しやすい素材を使用することが一般的になっています。これにより、同様に美しい仕上がりを実現することが可能となりました。

江蘇人民出版社『天上取様人間織ー≪玉楼春≫里的服飾之美ー』より一部引用(筆者翻訳)

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