VW傘下のソフト開発会社がVIVOと提携~中国で「スマートカー」開発加速へ

独フォルクスワーゲン(VW)の自動車用ソフト会社・CARIAD(カリアド)の中国法人と中国スマホメーカーのVIVOはこのほど、提携を発表した。中国で自動車メーカーとスマホメーカーの提携が相次ぐ中、VWは中国のスマホメーカーとの提携を通じて、中国現地のニーズに即した「スマートカー」の開発を迅速に進めたい考えだ。

 

■開発の中心はスマートコックピット
両社はスマホと自動車の融合を目的とするイノベーション実験室を設立。研究開発チームはカリアド中国とVIVOの地元人材で構成され、中国の消費者のニーズに対してより機敏にスピーディーに対応する体制を整えている。

開発の中心はスマート・コックピット。 スマホと自動車の双方のヒューマン・マシン・インターフェースの同期・統合、ユーザーデータの統合・共有、車内外のスマートアプリケーションのシームレスな接続、スマホとスマートカーのハードウェアリソースやセンサーの共有などに関して開発を進める。

将来的には、大規模言語モデルの開発の連携も視野に入れている。 実際、VIVOは先ごろ開催した「2023年開発者会議」で、自社開発の大規模言語モデル「 BlueLM(藍心大模型)」を発表している。このことは、今後VIVOの大規模言語モデルがVWのスマートコックピットに活用される可能性があることを意味している。

大規模言語モデルの自動車コックピットへの活用に関しては、商湯科技(センスタイム)や百度(バイドゥ)などの中国企業が先行して実施している。

 

■自動車とスマホの融合
VWとVIVOの提携は、自動車とスマホメーカーの連携の流れの一環ともいえる。中国では華為(ファーウェイ)や小米(シャオミ)などのスマホメーカーが自動車事業に参入し、吉利、蔚来汽車(NIO)などの自動車メーカーがスマホ事業に参入している。このうち、ファーウェイは自動車メーカーの賽力斯集団(セレス・グループ)と提携。吉利は創業者である李書福氏が設立した星紀時代科技有限公司(「星紀時代」)を通じてスマホメーカーの魅族科技有限公司(「魅族科技」)を買収した。それによって設立された星紀魅族集団の沈子瑜CEOは、「自動車産業の変革と統合が始まっており、スマホのソフトウェアを活用しない自動車メーカーは徐々に淘汰されるだろうと」と語っている。

中国、スマホと自動車の融合拡大~進む「自動車のスマート化」

 

■VW、VIVOとの提携でソフト開発強化へ
VWのVIVOとの提携は、ソフトの自社開発が順調に進まなかったというVW独自の要因もある。自動車メーカーにとってソフトウェアの重要性が増す中、VWは2020年にカリアドを設立。だが、研究開発に多額の資金を投じ、2021年から2022年の累積赤字が約34億ユーロ(約266億元)に達したほか、同社EVの「ID.シリーズ」でソフトウェアの問題が露呈するなどしていた。こうした中、VWはVIVOとの提携に至った。

VWは中国でEV開発にあたり、今年7月、小鵬汽車(Xpeng Motors)とも技術面での協力で合意している。両社は2車種のEVを共同開発し、小鵬は同社の旗艦モデル「G9」の車台をベースにコックピットや自動運転支援システムなどで協力。VWブランドで中国で販売する。

中国のEV市場ではBYDとテスラが先行し、これに中国地場メーカーが攻勢をかける構図。VWなど外資系が後れを取る中、VWは小鵬やVIVOとの提携を通じてEV事業を強化すると同時に、中国市場に即した製品開発で販売に弾みが付くのか注目される。

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