中国、スマホと自動車の融合拡大~進む「自動車のスマート化」

中国の携帯電話メーカーと自動車メーカーの連携が拡大している。携帯電話メーカーが自動車メーカーと提携し、自動車事業に参入すると同時に、自動車メーカーが携帯電話事業に参入する事例が増えている。「自動車のスマート化」が進むにつれ、携帯電話と自動車の融合が深化。特に、携帯電話メーカーの自動車分野への参入方式は、単なる部品供給というサプライヤーから自動車を共同で製造するというパートナーに変化している。


■携帯電話メーカーによる自動車事業参入
自動車は従来、参入ハードルが高かった業種の一つ。閉鎖性が強く、携帯電話メーカーが部品供給などで新規参入するには難しかった。しかし、テスラの登場で状況は変わった。ここ数年、自動車メーカーは新エネルギーや自動運転などの技術強化が必至となる中、自動車用の電子部品の需要が拡大した。
一方の携帯電話メーカー。スマホの機能がかなり進化し、成長に頭打ち感が出てきた。こうした中、電子部品需要が拡大する自動車事業を新たな成長分野として切り開いた格好。自動車市場の閉鎖的な環境も徐々に改善され、単純なサプライヤーとしてではなく、共同で開発を手掛けるパートナーとして存在感を強めている。
携帯電話メーカーで自動車事業に参入しているのはOPPO。同社は2021年、スマートモビリティソリューションを提供するOPPO智行を立ち上げた。OPPO智行はOPPOのハードウェア、ソフトウェア技術、インターネットサービス技術を基盤に、デジタルカーキーや、携帯電話から自動車を管理する「カーマネージャー」など多くのサービスを提供する。これまで新興自動車メーカーの理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、テスラなどと提携。直近では2月24日、蔚来汽車(NIO)とデジタルカーキーの分野での提携を発表した。OPPOによると、自動車事業分野で提携した企業数は120社超。自動車メーカーや二輪電動者メーカー、自動車部品サプライヤー、モビリティサービスなどの企業が含まれる。
小米(シャオミー)も自動車事業への投資を加速している。2月初め、シャオーミグループの投資家向けイベントで、創業者の雷軍氏は、シャオミーの最新の自動車事業の進展を説明。2022年時点で自動車などの新事業に30億元以上を投じ、自動車研究開発チームは2300人を超える規模になったという。同社の2023年の自動車などの新事業分野における研究開発および運営投資額については、「75億~80億元になる」との市場予想が出ている。
華為(ファーウェイ)も自動車事業を拡大している。2021年12月、ファーウェイは完成車・自動車部品メーカーの賽力斯(セレス)と提携。ファーウェイの車載OSを搭載した電気自動車(EV)である「AITO(問界)」を投入した。22年のAITOの納車台数(8月の納車開始以降)累計で約7万6,000台に達し、月平均では1万台を上回った。さらに、2月25日、ファーウェイとセレスは提携関係の強化で合意。26年までのNEVの生産・販売台数について、100万台にするとの目標を示した。
さらに、直近ではファーウェイが江淮汽車と提携を強化して自動車を製造するとの報道が注目を集めている。ファーウェイと江淮汽車は19年12月に提携を発表。双方は、スマートコックピットやスマート電池、クラウドサービスなどの分野で提携し、ファーウェイは自社開発の車載用プラットフォーム「MDC」などを提供している。
今回の報道では、ファーウェイが新製品のコンセプトやコア部品の選定、生産やマーケティングなど広範な範囲で関与を強め、共同で新たなNEVを開発するとされる。つまり、ファーウェイは単純にサプライヤーとして江淮汽車にソフトなどの製品を提供するだけでなく、パートナーとして共同で自動車生産に取り組む形になる。

■自動車メーカーの携帯電話事業への参入
自動車メーカーによる携帯電話事業の参入も出ている。22年、吉利汽車の傘下企業が、携帯電話メーカーの魅族科技(メイズ)の約8割の株式を取得して経営権を獲得した。
また直近では2月、蔚来汽車(NIO)が携帯電話事業に参入すると報じられ、早ければ今年第3四半期にも製品を発売するという。


自動車の定義が単なる乗り物でなくなり、自動車のスマート化が進む中、自動車メーカーはソフト面の技術強化が迫られている。こうした中、長年にわたり激しい競争を繰り広げてきた携帯電話メーカーの技術やノウハウを自動車メーカーが取り込んでいる格好。前述のファーウェイと提携したセレスは、2022年の年間販売台数が前年比626%増の80,041台と大幅に拡大。ファーウェイとの提携が功を奏した格好だ。
一方、NIOなどの新興自動車メーカーは、開発してきた技術を携帯電話に応用することで、携帯電話の機能が一段と進化する可能性がある。かつての自動車、携帯電話の概念が変わりつつある中、両者の融合の一段の進展が注目される。

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