2023年の中国自動車生産・販売3000万台突破~24年は増勢維持もペースは鈍化見通し
中国の2023年の自動車生産、販売台数は3000万台を突破し、過去最多を記録した。中国の自動車業界への注目度が高まる中、工業情報化部の辛国斌・副部長は1月19日の記者会見で、2023年の自動車業界の実績と2024年の展望を説明。2024年については、自動車の生産、販売は増勢が続くものの、伸び率は鈍化するとの見通しを示している。
■生産・販売台数3000万台突破
中国の自動車生産台数は2017年に2900万台に達して以降、数年は減少を強いられたが、2023年の生産台数は前年比11.6%増の3,016万1,000台、販売台数は同12%増の3,009万4,000台。それぞれ3,000万台の大台を突破し、過去最高を記録した。
自動車小売売上高は4.86兆元。社会消費財消費財売総売上高の10.3%を占めている。また、一定規模以上の自動車製造業の生産高(付加価値ベース)は前年比13%増。辛国斌・副部長は自動車業界の中国経済への寄与を強調している。
■NEVで世界をリード
自動車販売の中でも際立ったのは新エネルギー車(NEV)。2023年のNEV生産台数は前年比35.8%増の958.7万台、販売台数は37.9%増の949.5万台。伸び率はともに30%を超え、自動車全体の伸び率(10%台)を大きく上回った。NEV新車販売台数が新車販売全体に占める比率は31.6%に達している。
部品分野でも進化。エネルギー密度が360Wh/kgの半固体電池の搭載を実現し、搭載された新製品は2023年4月の上海モーターショーで一般公開された。 車載コンピューティングのチップの性能も大幅に向上。辛国斌・副部長は先端技術を搭載した自動車が増えていると総括している。
■輸出台数世界トップに
2023年の自動車輸出台数は前年比57.9%増の491万台に拡大。世界トップに躍り出た。うちNEV輸出は前年比77.6%増の120万3000台。また、エンジン電池の輸出量は87.1%増1億2740万キロワット時と、いずれも大幅な伸びを示している。
■2024年予想
2024年の自動車生産・販売台数については、中国汽車工業協会(CAAM)が3,100万台で、前年比成長率は3%程度になると予想。うちNEVの生産・販売台数は約1,150万台で、成長率は約20%。成長率は鈍化するとの見通しが示されている。
■課題
辛国斌・副部長は2023年の自動車業界の成果を評価する一方、課題についても言及。▼需要が弱まっていること、▼赤字企業が多いなど企業の収益性が依然として低いこと、▼車載用チップ分野の販売で劣位にあるがあること、▼企業間で無秩序な競争が激化し、闇雲な投資や重複投資が起こっていることーーなどを挙げている。またインテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)の開発において自動車と道路とクラウドの一体化を必要とするが、それぞれの連携が依然として不十分との認識を示している。
■今後の政策
これら課題を解消する施策にとして一つ目に挙げたのは需要喚起策。自動車購入税の減免などの優遇政策の実施、公共交通車両の全面的な電動化、地方でのNEV販売促進策の実施――などを挙げている。
二つ目は企業の技術革新の支援。車載チップや全固体電池、ハイレベル自動運転などの技術研究を支援し、製品の市場競争力の一段の向上につなげる考えを示している。
三つ目は、ICVの推進。車・道路・クラウドの一体化に向け、道路側のセンサーやクラウド制御システムなどのインフラ整備を加速。同時に、車両側、道路側、ネットワーク側のそれぞれの標準規格の体系を整備し、ICVの商用化を推進するとしている。
四つ目は産業政策の総合的な設計の強化。供給過剰リスクを防止・解決、公正で競争力のある市場秩序の維持などを含め、業界の健全な発展を政府が支えるとともに、自動車産業発展に向けた環境整備を進めるとの見解を示している。