世銀、中国今年のGDP伸び率予想5.6%に上方修正も回復の弱さを指摘~政府は消費活性化に対策
世界銀行がこのほど発表した中国経済動向に関する最新報告で、今年の中国の国内総生産(GDP)伸び率について、5.6%との予想を示した。前回3月に発表した予想(5.1%)から上方修正。中国政府の目標である「5%前後」も上回っている。ただ、世界銀行は足元の中国経済について、「(防疫措置の解除で)景気が回復しているものの、回復は依然として弱い」と指摘。景気を支える措置の必要性を訴えた。こうした中、中国ではこのところ、消費活性化を目的とした措置が相次いで打ち出されている。
■回復はまだら模様
中国の第1四半期の実質GDP伸び率は前年同期比で4.5%。これについて世界銀行は「成長率の加速が鮮明になった」とコロナ禍の景気低迷局面からの回復を評価した。ただし、足元では回復に息切れ感が出てきているとともに、回復がまだら模様であると指摘。そのうえで、中国経済の問題として、個人の景気見通しの弱さ(個人の貯蓄が増加している一方、消費支出は弱い)や不動産業界の負債問題、世界経済の不透明さに伴う輸出の不確定性などを挙げている。
特に、個人の景気見通しの弱さは足元の消費の指標にも出ている。5月の社会消費財小売総額は前年同月比で12.7%増。伸び率は市場予想(13.7%増)を下回った。1~5月の累計ベースでも前年同期比で9.3%増と、伸び率は同じく市場予想(9.6%)に届いていない。
■自動車、スマート家電の消費活性化へイベント開催
こうした中、中国当局は消費活性化を目的とした措置を打ち出している。6月8日、商務部は「自動車消費促進活動の組織・展開に関する通知」を発表。6~12月にかけて各地で自動車フェスティバル、新エネルギー車(NEV)消費シーズンイベントを開催すると発表した。うち、自動車フェスティバルの活動は、自動車購入の優遇政策支援の強化などで自動車消費を促進する。
6月9日には、商務部、国家発展改革委員会、工業・情報化部、国家市場監督管理総局の4部門が「省エネスマート家電の消費活動促進に関する通知」を発表。省エネスマート家電の消費、家電の買い替え、農村部での省エネスマート家電の消費促進、家電のアフターサービス、使用済み家電の回収といった側面から省エネスマート家電の消費を促す。
■地方政府も消費活性化へ措置打ち出す
地方政府も消費活性化に向け施策を打ち出している。
例えば、南京市は6月6日から自動車購入、6月8日から家電消費補助金キャンペーンを開始。補助金の総額は4500万元で、うち自動車が3500万元、家電が1000万元となっている。
消費券の配布も相次いでいる。地方政府による消費券配布はこれまでも消費活性化策の一環として実施され、前回の消費券配布が広がったのは春節前後だった。今回は、消費券の主な対象分野は自動車や家電などに加え、夏場にかけての旅行シーズンを前に、文化・旅行消費のケースも多い。
例えば、湖北省は6月14日、省全体で6月16日から家電消費券3億元分と、湖北省文化旅行消費券4億元を配布すると発表した。また四川省文化旅行庁は、6月30日までに同省各地での文化旅行消費券約3000万元を配布する予定。観光業者に対する措置も併せて打ち出し、観光消費とともに、観光業の活性化を狙う。杭州市余杭区は6月、杭州市民および全国の観光客を対象に、総額300万元の観光消費券を配布する。
中国経済は足元で需要不足を懸念する向きが多いだけに、需要喚起のための消費活性化に向けた措置が功を奏するのか注目される。