中国中央経済工作会議で「新たな質の生産力」に言及~科学技術イノベーション主導の発展に絡んで

中国で12月に開催された中央経済工作会議では、来年の経済政策の基本方針が示された。その中で注目されたのは、質の高い成長に向けた重要任務のうち一番目の項目として、これまでの「内需拡大」に代わって「科学技術イノベーション主導の発展」が置かれたこと、それに絡んで「新たな質の生産力」との言葉が使用されたことである。

 

■重要任務の筆頭に「科学技術イノベーション主導」
翌年の経済政策の方針を定める中央経済工作会議。今年の会議では、2024年の質の高い成長に向けた9つの重点任務を列挙した。その中で筆頭に挙げたのは、「科学技術イノベーション主導による現代産業システム構築」。またその構築に向けて、「顛覆性のある技術、先端技術によって生み出される新産業、新モデル、新エネルギーを生み出し、新たな質の生産力を発展させる」として、「新たな質の生産力」との言葉が使われた。

重点任務で昨年まで筆頭に挙げられていた「国内需要を拡大させる」は、今年は2番目に後退した。科学技術イノベーション主導による発展が筆頭に挙げられた理由については、「経済の規模の拡大から質の高い発展に転換する重要な時期において、中国が科学技術イノベーションを通じた産業の全面的な活性化をより強い決意で推進するもの」、「新たな競争優位性を構築し、産業の高度化によって経済成長を促す強い意志を示したもの」などと捉えられている。

 

■「新たな質の生産力」
「新たな質の生産力」という言葉については、今年9月に習近平・国家主席が黒竜江省視察の際に初めて提出した概念。ここ数カ月、この言葉が頻繁に使われるようになり、中国の人文雑誌「咬文嚼字」が12月に発表した「2023年流行語トップ10」にも選出され、中国の経済政策を理解するうえでのキーワードの一つとなっている。

習主席の発言では、「科学技術イノベーションのリソースを統合し、戦略的新興産業と未来産業の発展を主導し、新たな質の生産力の形成を加速する」、 「新エネルギー、新素材、先端製造業、電子情報などの戦略的新興産業および未来産業を積極的に育成し、新たな質の生産力の形成を加速し、成長の新たなエネルギーを増強する」とされている。つまり大枠では、「戦略的新興産業および未来産業を育成することで新たな質の生産力の形成を加速していく」ということと読み取れる。

ではそもそも「新たな質の生産力」とは何か。政府系メディアによると、「新たな質の生産力」の「新」は科学技術イノベーションを源泉とするもので、新技術を代表し、新たな価値を創造し、新産業に適応し、新たなエネルギーを再構築する新型の生産力。「新たな質の生産力の発展は、社会主義現代化国家の全面的建設の物質的・技術的基礎を固める重要な措置である」と説明されている。

要約すれば、「科学技術イノベーションを通じた新技術で新たな価値を創造し、経済・産業構造の高度化、生産性の向上を促すと同時に、経済成長の源泉となるもの」といえそうだ。

 

■「新たな質の生産力」関連分野
気になるのは「新たな質の生産力」に関連する分野。政府系メディアやシンクタンクは、大きく3つに分類できると分析している。一つ目は、「デジタル関連」。基礎科学研究を基礎にした重大なイノベーションによって生み出されるもので、具体的には、電子情報、クラウドコンピューティング、人工知能、量子情報、遺伝子技術、新素材など。二つ目は、「新型エネルギー関連」で生産性と同時に環境の改善にも資するもの。具体的には、新エネルギー自動車、水素エネルギー、省エネ・環境保護関連など。三つ目は航空宇宙、海洋経済などの「未来産業」。

 

科学技術イノベーションを通じて「科学技術立国」を目指す中国。「新たな質の生産力」などスローガン的で独自の言葉が頻繁に出てくるが、中国の経済・産業政策を理解するうえでは、こうした一つ一つ言葉の解像度を高めていくことが欠かせない。

中国の来年の経済政策基本方針~新たな文言に注目

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