中国の来年の経済政策基本方針~新たな文言に注目
中国共産党中央委員会政治局会議、中央経済工作会議がこのほど開催された。会議はともに2023年の経済情勢を総括したうえで、2024年の経済政策の基本方針を示した。中でも2024年の経済政策の基本方針を巡っては、新たな文言が追加され、その文言、そして文言の解釈に注目が集まっている。
■来年の経済政策の基本方針
2024年の経済政策の基本方針としては、「安定の中で進歩を求め、進歩を通じて安定を促進し、基盤を固めてから突破する(中国語:「穏中求進、以進促穏、先立後破」)」との文言が盛り込まれた。
このうち、「安定の中に進歩を求める(穏中求進)」との文言はこれまでも一貫して使われてきたが、今回は「進歩を通じて安定を促進し、基盤を固めてから突破する(以進促穏、先立後破)」との文言が追加された。この文言の解釈に関しては政府系メディアをはじめ中国メディアが相次いで専門家の見解を紹介している。
■「以進促穏」~「安定したうえで進歩」
うち「進歩を通じて安定を促進(以進促穏)」に関する解釈は概ね、「安定は進歩の基盤」、「安定した経済・社会環境が進歩の前提」というもの。例えば、新華社通信によると、国家発展改革委員会国民経済総合部の責任者は、「『安定』を基礎に『進歩する』べきで、『安定』は経済構造の調整、質の高い成長、大きな改革を『進める』ことを通じて達成されるべきである」との見解を示している。
「安定」のうえに「進歩」があるというのは共通した見解。安定と進歩は「安定の中で進歩を求める(穏中求進)」との文言でもみられるが、今回、「進歩を通じて安定を促進(以進促穏)」の文言を追加したのはなぜか。これに関しては、「進歩」も強調するためと分析されている。従来は安定が強調されて安定を求めるあまりに政策が「無作為」になる傾向があった。こうした点を踏まえ、「進歩」を強調する文言を追加することで、より積極的に政策が打ち出されるシグナルとみられている。
■「先立後破」~「確立したうえで突破」
「基盤を固めてから突破する(先立後破)」に関しては、まずは基盤を固めて、そのうえで突破・躍進していくという意味。足元の景気回復の基盤の弱さ、各種改革を進めるうえでの体制基盤の弱さなどを踏まえてこの文言が追加されたとの解釈が少なくない。
中国の今年1~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で5.2%増。2023年通年の経済成長率については、中国政府による目標は5.0%前後。足元はこの目標を上回る予想が相次いでいる。例えば、国際通貨基金(IMF)は11月初旬、従来の5.0%から5.4%に修正。経済協力開発機構(OECD)は11月下旬に同5.1%から5.2%に引き上げている。
経済規模が一定の水準に達し、成長率が鈍化する中国。今回の文言追加は、そうした中でも「進歩」、「突破」が必要とのシグナルとも読み取れ、一定の基盤が固まり、安定した先もさらなる進歩、突破することで持続可能な成長につなげるとのスタンスを示したといえそうだ。