服の中で遊ぶ唐子たち:伝統図柄「百子図」を用いた衣装【百子衣】③
「百子図」図案が持つ意味
「百子図」に描かれる子供たちの遊びの場面は、現実生活の描写と象徴的な意味を持つ図案に分けられます。古代の子供たちの遊びは多種多様で、大人の世界への憧れを表すものとして獅子舞や竹馬遊びなどがあり、友達同士の遊びとして猜拳(じゃんけん)や捉迷蔵(かくれんぼ)などがありました。また、観賞を楽しむ趣旨で鳥や魚を眺めるもの、さらには季節ごとの遊びも存在しました。古代の子供たちは幼少期から自然界の神秘を探求し、春には蝶を捕まえ、夏には蓮を摘み、秋には蟋蟀(コオロギ)を戦わせ、冬には氷雪遊びを楽しんでいました。『周易』繋辞篇には「仰ぎては以て天文を観、俯して以て地理を察す、是の故に幽明の故を知る。」と記されています。
思想的な意味
明代の「百子図」には象徴的な意味を持つ場面が多く見られます。例えば「荷を持って遊ぶ子供」の場面では、男の子と女の子が池で蓮の葉を持って遊ぶ姿が描かれています。この姿は宋代の七夕の行事に由来し、当時の子供たちは新しい蓮の葉を使って「磨喝楽(まかつらく)」を模倣する遊びをしていました。「磨喝楽」は梵語の音訳で、仏陀の十大弟子の一人であり、仏教の天龍八部の一つです。中国においては土や木で作られた人形のことを指し、七夕には多産や子孫繁栄を祈願して牛郎織女を祀る際に供えられていました。古陶磁器学者の曹淦源氏によれば、「荷を持って遊ぶ子供」は、魚が男児、蓮が女児を象徴し、団らんの美しさや生殖行為の意味を含んでいるといいます。
縁起の良い意味
明代の装飾図案では、比喩や語呂合わせを用いて吉祥の意味を表現することが一般的でした。「百子図」では、子供たちが伝統的な祭りや日常の遊び、祝祭の場面で描かれ、民俗的な意義だけでなく、深い象徴性を持っています。例えば、子供が凧を揚げる場面は幸運を招くことを意味し、端午の節句に鐘馗(しょうき)の面をかぶって遊ぶ場面は邪気を払うことを象徴します。また、子供が麒麟の背に乗る場面は「麒麟送子」と呼ばれ、早く子供を授かることを願うものです。さらに、子供が龍舟を押し、その舟に官帽や官帯が乗っている場合、「官帯流伝」(代々官職に就く)を象徴し、家系が代々官職に就くことを願う意味が込められています。
「嬰戯図」と「百子図」の違い
明代には吉祥図案が流行し、宋代に子孫繁栄を祈願する意味を持つ「嬰戯図(幼児遊戯図)」が、明代にさらに発展しました。例えば「百子衣」に描かれる「百子紋」は「嬰戯図」から派生したものです。形式的に見ると、「嬰戯図」には数人の子供しか描かれませんが、「百子図」は複数の「嬰戯図」を組み合わせたものであり、子供の数が圧倒的に多くなります。また、構図の面では、「嬰戯図」は遊ぶ子供たちだけでなく、周囲の環境も詳細に描かれ、時には整然とした庭園、時には花々が咲き誇る林間が背景となります。一方、「百子図」では環境の描写は「嬰戯図」ほど重視されず、主に賑やかな子供たちの姿を強調しています。
江蘇人民出版社『天上取様人間織ー≪玉楼春≫里的服飾之美ー』より一部引用(筆者翻訳)
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