Category: 論説・主張

世界人形劇の日に中国・パキスタン文明と文化遺産を祝うイベントが北京にある中国人形劇芸術劇場で行われ、人形劇『孫悟空〜本物と偽物』のさわりが披露された。 0

米国の中国学者ロバート・ヘーゲル 西洋世界は中国古典小説をどう読むか

中国文学が西洋の世界に入ったとき、西洋人は中国の古典小説をどのように見ていたのか。文学は東洋と西洋の文化交流をどのように促進できるのか。米国のセントルイス・ワシントン大学の終身教授で、東アジア学科の元学科長の著名な中国研究家であるロバート・ヘーゲル(Robert Hegel)氏が、このほど中新社の「東西問」の独占インタビューに応じ、中国文学との60年にわたる関わりを振り返るとともに、西洋世界における中国文学研究の発展と影響について語った。

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東西問 |トルコ人中国研究家エユップ氏 現代中国を理解するには、伝統的な中国文化に依拠すべきだ

中国の伝統文化への愛は、エユップ氏が中国学に深く傾倒する最大の動機の一つであった。 第二次世界大戦後、ジョン・フェアバンク氏をはじめとする中国研究家たちが伝統的な中国学研究から現代中国研究への転換を提唱し、米国における現在の「中国学」の研究も現代中国により注目している。

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「新たな広東をつくり出す」、中国にとっての意義(1)~広東省社会科学院・王廷恵院長

中国の旧正月明け7日、広東省で開催された新春最初の会合「広東省、質の高い発展大会」が国内外から注目を集めた。
大会ではどのような重要なシグナルを発したのか。「新たな広東省をつくり出す」という目標をどのように実現するのか。中国式現代化を広東省が模索する意義はどこにあるのか。広東省の質の高い発展推進は世界経済にどのような新たなチャンスをもたらすのか--これらについて、中国新聞社は広東省社会科学院の王廷恵院長にインタビューした。

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中国映画は中国文化や中国そのものを理解してもらうための貴重な媒体―専門家が紹介

中国の映画界は、中国の作品が世界でより広く受け入れられるよう努力をしている。開放的なことばの選択や、国際的な視点を持ち、中国の文化発信の弱さを克服しようとしている。中国の映画人は他者との「和合の知恵」を映画作品に込め、映画を媒介として東西の対話を強化し、外国の観客が中国文化をよりよく理解することを助けようとしている。

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東西問|新疆の人権状況について最も発言権を有するのは誰か

以前から、欧米諸国は、新疆関連の問題を誇張し、「強制労働」「強制的な土地移転」「文化的侵略」などを中心に一連の新疆関連の嘘をでっち上げてきた。新疆の人権に関する成果を中傷している。新疆ウイグルの自治区の人権状況については、新疆の人々が最もよく知っており、最も発言権も有している。

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中国の特色ある現代的資本市場、その「特色」はどこにあるのか?

政府の行為の主な目的は、市場メカニズムの欠陥を補い、市場の機能不全の問題を解決することあるという点である。決して、市場メカニズムの正常な運営を代替したり妨害したりすべきではない。中央の集中・統一指導を強化し、政府の行為を制約する法律・法規体系を確立・健全化することで、政府と市場の関係を整理し、各種市場主体の利益を適切に保護し、金融商品とサービスの刷新を奨励し、資本市場の実体経済に対する支援機能を強化し続けなければならないのである。

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東西貿易を切り開いた中国の帆船

――上海中国航海博物館 副研究館員・葉衝氏インタビュー 中国は世界で最も古い造船の歴史を持つ国の1つである。広大な国土を有する古代中国はなぜ帆船建造に精通していたのだろうか。先進的な造船技術はどのようにして中国の海洋文明を支え、人類の「グローバル化」のプロセスを牽引してきたのだろうか。中国初の国家級航海博物館である、上海中国航海博物館・副研究館員の葉衝(イエ・チョン)氏にお話をうかがった。 文/樊中華 写真編集/張興竜 翻訳/及川佳織 記者:中国の伝統的な木造帆船は何種類ありますか。西洋のものと比較して、どんな特徴がありますか。 葉衝:中国は広く、水系が豊かな上、長い歴史において様々な帆船が発達したため、具体的な数の統計は困難です。19世紀前半から20世紀半ばに かけて、外国人や機関が沿海部と長江流域でおこなった調査によると、帆船の種類は一千種以上でした。しかし、これはすべてを網羅しておらず、しかも調査時にはすでに伝統的な帆船の最盛期は過ぎていました。  中国式帆船の特徴は第1に、設計と建造に独創性があることです。西洋の帆船はフレーム構造ですが、中国式は独特の横隔壁構造で、設計の発想がまったく違います。  第2に、中国の帆船は柔軟性と実用性が高いことです。まず、中国帆船の横隔壁構造と水密隔壁は、船の構造上の強度と沈没防止性能を大きく高め、人と貨物の空間を分け、船体の形状線確定と、その後の建造をしやすくします。設計や建造は図面に頼る必要がなく、ポイントとなる横隔壁と主要部品間の長さの比率関係によって、段階的に計算して建造できます。次に、職人は経済力、積載貨物量、航行する水域といった船主のニーズに合わせて水密船倉の配置や数を自由に調整できるので、「一艘一設計」と言えます。さらに職人は、造船する土地の木材の条件によって、船の各部に合わせて使い分けることができます。このほか、西洋の帆船には前後を貫通する甲板が何層もありますが、中国の帆船は通常、主甲板だけで、そのほかに取り外し可能な平甲板を設置します。危険に遭遇したら、平甲板を外して救命道具にするのです。  中国式帆船の第3の大きな特徴は帆装です。西洋式の「軟帆」に対し、中国のものは「硬帆」「活帆」と呼ばれ、縦横の経脈のように、帆布に横桟(バッテン )を配置し、帆の周囲と内部に縄を縫い込んで帆筋とします。こうすることで帆が風を受けるエリアが増えて効率が高まり、穴がたくさん開いても使うことができます。西洋の帆は1つ穴が開けばすべてダメになってしまいます。  「活帆」の「活」とは、融通が利くことです。第1にマストを中心に八方から風を受け、ジグザグに船を走らせ(つまり、方向を調整して)、風向きが悪いときにも航行できます。これに対し西洋の帆船は逆風では操縦しにくいため、長い間、オールを併用していました。第2に、中国式の帆はそれ自身の重さですばやく取り込むことができ、西洋式より早くて便利です。海上で暴風を受けたときに帆を下ろすのが間に合わずに重大な事故に遭うことがなく、操縦者も少なくてすみます。 記者:中国は土地が広く、古代から農耕文明主体と考えられていました。なぜこのように先進的な造船技術を持つようになったのでしょう。 葉衝:春秋時代から、水上戦が戦闘用船舶の発展を促しました。戦闘用船舶の持つ突撃、遮蔽、輸送など細分化された機能により、船の種類は豊富になり、それが民間の船の基礎となりました。三国時代、呉政権は海路を使って東南アジアや朝鮮半島に進出し、台湾諸島を探索しました。木造帆船は大型化し、呉の船は長さ48mに達し、人は600~800人、貨物は500~700t載せることができました。東晋では水密隔壁技術が船の安全性を飛躍的に高め、唐では1000t積載できる大型船ができました。当時の外国商人には安全で快適な中国帆船に乗ることが人気であり、大型・多様・安全という優位性により、中国帆船は海洋航海で主導的地位を占めていたことが分かります。 記者:現在、造船の材料と動力システムは木造帆船とまったく違いますが、中国の帆船の技術はいまでも価値がありますか。 葉衝:もちろんあります。まず、中国式帆装はウォータースポーツにますます応用されるようになっています。西洋の船員や学者は中国帆装の長所を 項目余りにまとめています。イギリス中国式帆装協会は2019年に、世界の30の国と地域の船員や帆船愛好者が近代船や西洋船に中国式帆装を取り付けているとの統計を発表しました。  次に、将来の造船はますますスマート化や環境保護を追求するようになっており、新しい帆装の設計には風力が補助動力として利用されるでしょう。外観、材料、設計原理などは大きく変わりますが、「八方から風を受ける」という発想は、伝統的技術と切り離せません。  また、水密隔壁など船舶の安全に関わる設計技術は、現在でも世界の船舶にとって沈没を予防する重要な技術です。「海上における人命の安全のための国際条約」は、すべての船が安全基準に達した水密隔壁を備えるよう強く求めています。  このほか、遅くとも漢代には船尾舵が現れ、軸舵、昇降舵、釣合舵、穴あき舵などさまざまなタイプが生まれました。 世紀初め頃、西洋では方向の制御はオールに頼っており、技術の差によって航海の能力と範囲が大きく制限されていました。 世紀以降、西洋の船にやっと船尾舵がつき、改良を重ねて、いまではすべての遠洋航海船で使われています。 【プロフィール】 葉衝(イエ・チョン) 1983年生まれ、安徽省廬江出身。中国航海博物館副研究館員、収蔵品修復部副主任、船舶モデル研究センター主管。中国航海シンクタンク特約研究員、中国造船工程学会船史研究学術委員会高級会員。主な研究分野は船舶史、航海史、船舶モデル研究。「鄭和、西洋へ」、「中国航海史基礎資料考古学編」、『船舶モデル評価基準』、『中国木造帆船モデル製作・考証ガイドライン』などの課題と標準の研究に参加。

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中国と西洋の家庭観の違いとは

家庭は個人と社会の橋渡しをする社会の基本単位である。中国と西洋の家庭観は、社会環境や政治経済の条件が異なるため、同じところもあればそれぞれの特徴もある。中国と西洋の家庭観を知ることは、お互いの文化を学び、交流する助けになり、世界文明の共同発展を促進するだろう。 文/尼山世界儒学センター孟子研究院院長・研究員 陳暁霞 翻訳/及川佳織  中国も西洋も、家庭は幸福の実現を目的とし、家庭という細胞の健康を確保し、そのメンバーの生活を守る。家庭は、倫理の最小単位として「個人」間の関係、責任、愛を育てる上で重要な役割を果たしている。中国と西洋には共通した教育観があり、同じように子どもの社会性を育み、社会の適格な一員に育てている。  中国と西洋では家庭観に様々な違いがあるが、その根源、意味、類型、教育の重点などいくつかの面で比較してみたい。  中国では古代から集団としての家庭という考え方を重視し、そういった価値観を作ってきた。『周易・説卦』には、「乾は天なり。故に父と称す。坤は地なり。故に母と称す」とある。「天」と「地」は人類の父母であり、天下は一家である。『論語・顔淵』には、「四海の内は、皆兄弟なり」とある。孟子は「家族を愛するという此の心をとりあげて、広く世の中の人に施した。したがって恩愛の心を推し広めれば世界の人を安んずることができ、恩愛の心を推し広めなければ自分の妻子さえ、安んずることができない」と言う。中国は家族という集団を基本として重視し、個人を集団に溶け込ませ、個人と家庭・社会・国家の運命を一致させてきた。中国文化において、家庭は「生生」〔生きること〕の媒体であり、「一以貫之」〔貫かれる唯一の道理〕の本体であり、「配天祭祖」〔天祖先を祀る〕の基礎であり、「報本返新」〔本に報いて新へ帰る〕の始まりであり、宇宙の秩序と社会生活はみな家庭を巡って展開する。  西洋の地理や気候などの環境は、商業文明を栄えさせ、理性や勇気や独立した個性を育てた。彼らは個人の権力や財産所有権を重んじ、理性の価値を強調した。キリスト教において、イエス・キリストは、父母や兄弟姉妹を離れて主の懐に入り、信仰の共同体を作ろうと呼びかける。ロックによれば、子どもは神の生み出したもので、父母は子どもの保護者でしかない。西洋で確立された「個人−主体」という現代的哲学に基づき、個人主義は長く「個人」の自己実現に重きを置き、「個人」間の相互関係を軽視してきた。人の依存関係は弱まり、個人の理性と権力が一貫して強化された。  中国人は「利他の中で利己を実現する」という価値を目指してきた。家庭が人々の生活の中心であり、肉親の情や血縁が一番しっかりした社会的絆である。父母は子どもを養い、教育し、子どもは父母の面倒を見て、独特の「孝」という文化を創りだした。家族としての責任は自由より重んじられ、義務が権利より先に立ち、集団が個人より上にある。西洋社会は個人の自由、権利、尊厳を尊重し、愛欲、信仰の愛、友愛を重視し、家庭は個人を基本とし、「利己こそが利他」という価値観を守ってきた。西洋は個人の理性をより重視し、自身の価値を重視する。個人は家庭や社会の主人公であり、往々にして個人の利益が重要な要素となり、家庭は二次的なものとなる。   中国の家庭は父子文化であり、『易経・家人卦』には「家の中には威厳のある君主が居て、それは父母である。父は父らしく子は子らしく、兄は兄らしく弟は弟らしく、夫は夫らしく妻は妻らしく、各々その道を固く守れば、家の中は正しく治まる。先ず家の中をしっかり治めてこそ天下も治まる」と言う。家族はそれぞれの立場を守り責任を果たすべきなのである。男女間は婚姻を結び、家庭を作り、家庭の倫理を守る。夫婦は互いに敬い、夫はおだやかに、妻は優しく、それぞれ自分の権力を捨てて、調和のとれた統一を実現する。西洋の家庭は夫婦が中心であり、夫婦関係と男女の自然な情を重んじる。夫婦間の考えや感じ方を婚姻の目的とし、結婚は両性が幸せになる権利を行使するためのもので、家庭は完全に個人の問題であり、外部が干渉することを許さない。個人の自由と権利が家庭より高い地位にあり、夫婦がそれぞれ自由と平等の権利を享受することが主張されている。  子どもに対する中国の家庭教育の中心は「道」である。伝統的な家庭観では、世界は天、地、人の「三才」から成り、それがすべて「1つの世界」にある。「道は人から離れたところにあるのではない」、つまり道とは身近なところから探求するものであり、まずは夫婦、親子という家庭から始める。『周易』は「家を正しくして天下定まる」と言った。家道が正しければ、天下は安定する。孔子の庭訓〔家庭内での教育〕などは、家風を伝えるための手本である。家風は個人の運命を決定し、家の盛衰に影響を与える。西洋の家庭は知識の蓄積を重視し、子どもの興味と創造力を育てることが中心で、自然に対する子どもの好奇心や創造力を開発し、成長と愛を重視した教育をする。父母は励ましの言葉で子どもを褒め、激励し、コミュニケーションによって子どもの心理的欲求を探る。  つまり、中国の家庭は家族の調和をより強調し、西洋の家庭は個人の権利の保護をより強調する。「それぞれが理想を追求し、他人の理想を尊重し、理想を共有する」〔中国の著名な社会学者、費孝通の言葉〕。中国と西洋がそれぞれの文化において家庭観の違いがあることを理解したうえで、交流し、互いに学ぶことで、人類の共同発展を促進することができるだろう。 【プロフィール】 陳暁霞(チェン・シアオシア) 尼山世界儒学センター孟子研究院党委書記、院長、研究員。複数の大学で特任教授を務める。長年にわたり歴史文化、儒学発展史、文化産業の発展、青少年教育を研究し、特に儒家文化など伝統文化の新しい発展に功績がある。国家、省、市の社会科学プロジェクト20件以上を主宰。著書に『新時代の伝統文化の革新的発展研究』『社会道徳風潮研究——郷村振興戦略の視点から』『游学三孔』など8冊がある。

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世界で起こる「人とゾウの衝突」 解決のカギは

近年、生息地の縮小により、野生のゾウが森から人の住むエリアへ侵入し始め、「人とゾウの衝突」が増えている。これは、野生のゾウがいる国にとって問題であるだけでなく、世界が直面している生物多様性保護と経済・社会の発展との衝突の縮図でもある。8月12日「世界ゾウの日」に合わせ、中国国家林業・草原局アジアゾウ研究センターの陳飛(チェン・フェイ)主任と、世界的に有名なゾウ研究家である中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園大型獣類多様性・保護研究チームの アインサ・カンポス・アルセイズ研究員に解説をお願いした。 中国新聞社・記者/胡遠航 韓帥南 翻訳/及川佳織 記者:昨年、雲南省で野生のゾウ十数頭が北 上し、その後、南の生息地に戻るという出来事 が世界の注目を集め、多くの人が「人とゾウの 衝突」に関心を持ちました。「人とゾウの衝突」 が起こる原因は何でしょうか。また、どのよ うな影響がありますか。 陳飛:「人とゾウの衝突(Human-Elephant Conflict)」は、主にゾウの生息地の縮小と断片化の結果です。アジアゾウでもアフリカゾウでも、世界のゾウがいる地域ではこの問題が存在し、深刻な結果をもたらしています。 過去100年間、生息地の喪失、象牙の密猟、「人とゾウの衝突」などによって300万から500万頭いると見られていたアフリカゾウは47万から69万頭に、約10万頭いたアジアゾウは4万から5万頭に激減しました。また、人類は深刻な脅威と損失にも直面しており、インドやスリランカでは毎年100人以上がゾウによって死傷し、ケニアでは過去7年間に200人以上が亡くなっています。住民の財産も損害を受けています。小さな農家ではゾウによって1年分の生活費が奪われ、大きな農場では毎年巨額の損失があります。 アインサ・カンポス・アルセイズ(以下、アルセイズ):実は、人とゾウが同じ空の下にいて、同じ土地を共有していれば、気候や環境や文化がどうであっても、衝突を免れることはできません。「人とゾウの衝突」の本質は、人とゾウの資源争奪です。衝突は昔からありましたが、人類が占用する自然資源が増えるのに伴って、人為的要素が優位になってきました。自然の中で生きる環境が失われ、ゾウは直接人と衝突するようになったのです。 2022年7月31日、雲南省普洱市康平鎮で活動するアジアゾウを撮影した。撮影/李嘉嫻 記者:現在、野生のゾウのいる国ではどのような対策を採っていますか。その効果は上がっていますか。 陳飛:近年、アジアゾウ保護の意識が高まり、ゾウが人間を怖れなくなりました。頻繁に保護区を出て農作物を食べ、頭数も増えていることから、問題がより大きくなっています。海外では、ミツバチ、唐辛子、タバコなどの生物学的・物理学的・化学的威嚇剤を使い、ゾウを田畑や居住エリアから遠ざけていますが、多くの場合、こうした刺激的で対抗的な措置は、反対にゾウの攻撃性を高めてしまいます。ある国では、ゾウの好まない作物を植えるという耕作方式に変更して防御しています。同時に、問題を起こしたゾウに対する管理・抑制も重要です。マレーシアでは、深刻な問題を起こしたゾウを毎年別の森に移していますし、ケニアの野生動物保護管理部門は、現地住民と経済作物を守るため、問題のあるゾウを毎年50頭から120頭射殺しています。ネパール、インドネシアでは、移動用の通路を敷設することで、人とゾウが接触する機会を減らしています。総じて言えば、いまのところ「人とゾウの衝突」を完全に回避する方法はありません。 アルセイズ:地域環境や文化の影響によって、ゾウの行動にも違いがあり、これがゾウと人の関係を複雑にしています。例えば中国は人が多くゾウが少ないので、ゾウの生息地は断片化しており、その周囲はほとんどが人の使用する土地なので、人とゾウが遭遇しやすいのです。マレーシアは人が少なくゾウが多く、広大な土地がシュロの栽培に使われているので、ゾウの活動でシュロは破壊されますが、人と遭遇する可能性は低いのです。スリランカは人が多くゾウも多いので、衝突の可能性はかなり高いと言えます。現地の人はゾウを大切にしていますが、衝突が増えると、ゾウを狩る形で、被害を避けるしかありません。「人とゾウの衝突」の実態を語るときには、人の要因、ゾウの要因、環境の要因を考慮する必要があります。 雲南省普洱市康平鎮にある約167ha のアジアゾウ食料基地の空撮。ドローン撮影/李嘉嫻  現在世界的には、射殺によって衝突に対処するという過激な方法を採っているところもありますし、ゾウを驚かせて離れさせるという、さほど過激でない方式を採っているところもありますが、ゾウは人間が実質的な脅威を与えているのではないと気づくと、また戻ってきてしまいます。ある地域では、衝突のあった場所からゾウを別の場所に移していますが、通常、アジアゾウは元の生息地に戻ってきます。また、電気柵を発明して広く使用している地域もあり、これは効果を上げています。私たちには、根本的にゾウとの衝突をなくす方法はなく、受け入れられる程度にまで衝突を減らすことしかできません。 雲南省普洱市康平鎮に作られたゾウ監視塔。撮影/李嘉嫻 記者:昨年、雲南省のゾウが北上して世界の注目を集めましたが、多くの努力によってゾウは無事に戻りました。この事例から、どのような教訓が得られましたか。 陳飛:この成功例によって、人々のゾウに対する容認度が高まったことと同時に、食べ物による誘導や電気柵といったソフトな介入が衝突を減らすのに有効だということが分かりました。しかし大量の人員と物資、資金が投入されたことは間違いなく、長期的にできるものではありません。「人とゾウの衝突」を緩和する根本的方法は、ゾウのために適切な生息地を確立することです。面積、森林の質などの必要条件のほかに、ゾウが必要とする大量の食べ物と活動の範囲を考え、生息地の改造や建設を行い、緑の通路などで生息地をつなぐことが必要です。中国は国立公園の建設により、アジアゾウの生息地回復を模索しているところです。 雲南省シーサンパンナ国家級自然保護区管護局のスタッフがスマホアプリでアジアゾウの監視・警報システムの画面を見せてくれた。撮影/李嘉嫻 アルセイズ:「人とゾウの衝突」は漠然とした問題ではなく、具体的な問題です。雲南省のゾウの北上では、少なくとも3つの有益な経験が得られました。第1に、人々のゾウへの態度が「人とゾウの衝突」問題解決にとって非常に重要なことです。中国では政府も国民も、積極的にゾウを保護しており、これが今回の突発的事件解決のベースになっていました。第2に、より動的な見方でゾウ保護の問題に対処することです。アジアゾウの数は常に変化しており、群れの数が増えれば、ゾウは保護区に留まらず、出て行くでしょう。第3に、ゾウの群れは大きな範囲で移動し、都市部に近づいて、人の生活に問題を起こすことです。雲南省の事例では、被害に対する補償、事前警報、各部門の協力などでよい対応が実現できました。これらは、今後この問題を処理するための参考になります。 記者:世界の国立公園と比較して、中国が計画しているアジアゾウ国立公園はどのような違いがありますか。「人とゾウの衝突」解決に対して根本的な変化がありますか。 陳飛:中国の国立公園には、はっきりとした特色があります。  まず、より保護を重視しています。中国は国立公園を最も重要な自然保護区域に位置づけ、厳格・科学的で規範に沿った管理をおこない、本来の完全な生態系を保護することを重視しています。  次に、生態系建設を強化しています。中国政府は行政管理能力が高く、集団の意思を統一して実施できるという優位性を持っているため、エコロジーな文化を建設するという立場から、国立公園を主とした自然保護エリアを体系的に建設し、効果的・長期的メカニズムを構築できます。  さらに、生態環境保護とコミュニティ発展の融合を強調しています。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは国立公園を建設する際、広大な荒野や人のいないエリアがあり、公園内の人口が少なく、コミュニティとの矛盾は多くありません。中国は人口が多く、公園内に住んでいる住民の一部を行政の指導で集住させますが、より多くは公園内の不規則な自然村に分布し、遊牧民の冬の住居や夏の牧場の一時的なテントなどもあり、「広範囲に分散し、集中の度合いは小さい」という特徴があります。これに対して、国立公園建設と保護においてはコミュニティや生活をより重視し、科学的な計画、合理的な区分けにより、個別の政策と管理を実施して、住民をパートナーと考え、「美しい生態、豊かな住民」を実現します。  現在計画中のアジアゾウ国立公園は、こうした特徴のほか、アジアゾウ保護について新しい方法を実現します。アジアゾウが集中している一部の農地を残し、作付けをして食料を補償します。ゾウの食物を供給し、群れを引きつけて森へ返し、生息を安定させて「人とゾウの衝突」を回避し、共存を実現します。  現在、人間の住むエリアへのゾウの侵入はこれまでにない規模になっており、従来の動物管理手法は限界を迎えています。「人とゾウの衝突」をどう解決するかは、人と動物の共存に関わるだけでなく、人類の智慧と勇気が試されているのです。喜ばしいことに、対処方法が行き詰まりを脱して徐々に多様化し、短期的対応から持続可能な発展へと考えが変わっています。人類が発展し、かつ野生動物の発展に対応するためには、こういう考えが必要なのです。総合的な保護理念を持ったアジアゾウ国立公園ができれば、地域の「人とゾウの衝突」に根本的な変化をもたらしうると信じます。 アルセイズ:アジアゾウ国立公園建設の目的は、まず熱帯雨林の保護、次にアジアゾウの保護です。従来の自然保護区と比べ、この公園は、より人為的要素に関わります。多くの資源を統合し、管理も体系的なものになるでしょう。アメリカにできた世界初の国立公園 は、大部分に人が住んでおらず、公園内での人の活動は限定的でした。アジアゾウ国立公園は全く新しい方式を採用します。「人とゾウの衝突」、さらには人と自然との関係について、多くの経験を蓄積できるでしょう。 【写真キャプション】 陳飛:国家林業・草原局アジアゾウ研究センター主任。主にアジアゾウとその生息地、生物多様性の研究に携わる。 アルセイズ:アインサ・カンポス・アルセイズ(Ahimsa Campos-Arceiz、中国名・康牧颯)。スペイン国籍、中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園研究員。主にアジアの大型動物の生態と保護、種子散布、人類と野生動物の衝突、学際的保護科学および保護能力建設などの研究に携わる。

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増える極端気象、地球の「発熱」は抑えられるか

―― 国家気候センター・巣清塵主任インタビュー 今年の3月、熱波がインドとパキスタンを襲った。6月以降、アメリカでは高温が続き、9000万人に警報が出された。7月にヨーロッパ各地で気温が史上最高を記録し、ポルトガルでは一時47度に達した。中国では河川の増水期に南部各地で降水量が新記録を作り、北部では熱波で気温が40度以上になった。地球はどうなってしまったのか。なぜ世界で、これまでの観測値を超える豪雨や強風、 過酷な高温など局地的に大きな被害をもたらす極端気象が増え続けるのか。この問題について、国家気候センターの巣清塵(チャオ・チンチェン)主任に話を聞いた。 中国新聞社・記者/陳溯 翻訳/及川佳織 記者:今年、増水期になって南部を大雨が襲い、洪水被害が深刻です。最近になって、北部でも大雨が増え始めました。また、夏に広範囲で気温の高い日が続き、最高記録を作っています。こうした極端気象の原因は何ですか。近年、中国では極端気象が増えているのでしょうか。 巣清塵:中国の広い地域で6月以降、暖かい高気圧のために下降気流が発生し、雲が少なく晴れた日が増え、太陽が照りつけて気温が高い状態が続いています。また地球温暖化により、平均気温が上がっているため、気温の高い日が頻繁に発生しています。地球温暖化は大気環流、海洋や地表の状態を変え、間接的に世界の気温上昇に影響しています。  総じて言えば、今年の天気は異常です。華南の1回目の増水期は例年より16日早まって期間が長く、累計降水量も多く、雨の降り方も極端でした。福建省・広東省・広西チワン族自治区・海南省にある国立気象観測所の多くで、1日の降水量がその月の最高記録を突破しました。3月1日から7月31日の間、珠江流域では例年より86・4mmも多く雨が降ったのです。 記者:世界的にも今年の夏の北半球では極端な高温が多発しています。ヨーロッパやアメリカ西部は猛暑に見舞われ、一部では新記録を創りました。世界で極端気象が多発する原因は何ですか。気候の変化には、どのような特徴がありますか。 巣清塵:北半球の猛暑の多発の背景にあるのは地球温暖化ですが、6月以降の気温上昇の直接的原因は大気環流の異常です。  近年の極端気象の増加と温暖化には、密接な関係があります。温暖化によって世界の海と大気環流の状況が変わり、海と大気、陸と大気の相互作用が、局地的な気候にさらに影響を与えます。地球温暖化は気象システムの不安定性を加速させ、極端気象を発生させています。  地球温暖化によって極端気象や激甚化した気象が発生する確率や、その程度が高まっています。陸と海の極端な高温、大雨、干ばつと火災などが社会、生産、生活を破壊し、死傷者を出し、財産の損失を招いています。 2020年8月、カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアで山火事が多発。22件の火災で少なくとも4000ヘクタールが焼け、2万2000人以上が避難した。写真は、消火に当たる消防士が仲間とトランシーバーで話す様子。撮影/劉関関 記者:気候変動に対応するために、主な課題となるのは何ですか。人類はどのようにして気候変動に対応すべきですか。中国の関係各方面はどのような努力をしていますか。 巣清塵:気候変動への対応策を国レベルの計画に落とし込むには、まだ問題があります。国によって発展段階や状況が違い、直面する脅威も異なります。世界的な行動、政策、計画をそれぞれの国で実施するのは簡単ではありません。また、途上国が気候変動に対応するには多くの資金、技術、政策支援が必要です。「パリ協定」や「グラスゴー気候合意」 が結ばれ、この面では一定の進歩があったのですが、実際のニーズとはまだ差があります。 2022年4月、杭州西駅屋上の太陽光発電設備の空撮。杭州西駅の太陽光発電設備は1万5000m²、完成後の予想年平均発電量は 231万 kWh で、年に標準炭換算で830トン余りを節約し、二酸化炭素排出を2300トン余り削減できる。撮影/王剛   気候変動の二大対応策は軽減と適応で、両者を組み合わせることが必要で、どちらも欠かせません。軽減はエネルギー、工業、交通などの経済システムと生態系の長期にわたる調整によって、温室効果ガス排出を削減することです。適応はすでに発生した、または今後発生が予想される気候変動に対し、自然のシステムと人類のシステムとを調整して、気候変動が社会・経済の発展と生態系に与える悪影響を減らし、気候変動による、ある種のチャンスを十分に利用することです。  現在、世界は軽減を重視し、適応を軽視する傾向にあります。中国は一貫して軽減と適応の両方を重視し、気候変動に積極的に対応する国家戦略を採用しています。軽減については、「双炭〔カーボンピークアウトとカーボンニュートラル〕」を掲げ、産業構造とエネルギー構造の最適化により、二酸化炭素排出削減で大きな成果を上げています。2020年、中国の二酸化炭素排出は2015年から18・ 8%、2005年から48・4%減りました。世界に約束した40~45%減という目標以上の数値を達成したのです。エコロジーな低炭素型発展を推進し、新エネルギー車の生産・販売が世界トップになり、風力・太陽光発電設備の製造では世界一完備された産業チェーンを形成しています。適応については、今年6月、「国家気候変動適応戦略2035」を公布しました。これは気候変動適応政策に関して、世界の手本となる重要文書です。 【プロフィール】 巣清塵(チャオ・チンチェン) 国家気候センター主任、党委員会書記、研究員、理学博士。グローバル気候観測システム(GCOS)研究チーム共同主席、指導委員会委員。中国気象学会気候変動・低炭素経済委員会主任委員、中国気象学会気象経済委員会副主任など。研究分野は、気象システム分析と相互作用、気象リスク管理および気候変動政策。国家科学技術部重点研究計画、科技支援計画、中国クリーン発展基金、国と地方の発展・改革委員会、中国気象局、国際協力などのプロジェクト10件以上を主宰している。