中国の特色ある現代的資本市場、その「特色」はどこにあるのか?

中国社会科学院金融研究所資本市場研究室・張躍文主任に聞く

中国共産党第20回全国代表大会(党大会)では、資本市場の機能を健全化し、直接金融の割合を高める方針を示した。中国証券監督管理委員会党委員会は党大会で示した方針を伝える会議で、資本市場のルールと、中国市場の実際の状況、中華の優れた伝統文化とを結び付け、中国の特色ある現代的資本市場の整備を加速すると表明した。中国の特色ある現代的資本市場はいったいどこに「特色」があるのか。またどのようにしてより良い資本市場を構築すべきか。中国社会科学院金融研究所資本市場研究室の張躍文主任はこのほど、中国新聞社の「東西問」のインタビューに応じ、これについて解説した。

中国新聞社:中国の特色ある現代的資本市場という概念をどのように理解しているか?

張躍文:資本市場は西側先進国から生まれたもので、中国の社会主義市場経済の重要な構成部分になるまでの歴史的プロセスには理論の刷新と実践の探求が存在していた。中国の特色ある社会主義が新たな時代に突入したという大きな背景の下、資本市場はより質の高い実体経済を支えるという現実のニーズに直面している。こうした中、中国の経済発展の独自性に基づいた資本市場自身の特色を構築・形成する必要がある。同時に、中国の資本市場の社会主義的属性と発展途上国としての属性を鮮明にする必要がある。中国の特色ある現代的資本市場の「特色」は、発展の基盤、発展の目標、発展の道において主に体現されている。

中国新聞社:中国の特色ある現代的資本市場の発展の基盤は何か?この基盤は西側諸国とどのように異なるのか?

張躍文:資本市場は資本の所有サイドと需要サイドが取引を行う場で、本質的には実体経済を支えるためのものである。どのような実体経済に、どのような資本市場が適しているのか、各国・地域で異なる。

実体経済の性質については、基本的な経済制度と発展段階から分けられることが多い。欧米の先進資本主義国において資本市場は法規・監督システムが整備され、高度なインフラと強力な市場機能を有している。しかし、根本的には、これらの国々の資本市場は資本主義経済制度を支えるもので、その根本的な目標は特定の階級の利益を守ることにある。

中国が実施しているのは社会主義基本経済制度と社会主義市場経済体制である。社会主義国が資本市場を発展させることができるのか。マルクス主義では答えが出ている。マルクスは『ゴータ綱領批判』の中で、労働と生産手段が共同で富を創造することは、すなわち使用価値を創造することで、富の創造活動は社会主義社会と共産主義社会の全過程を貫いていると指摘している。社会主義の段階では、富の創造は労働、土地、資本、技術、管理などの要素の集合の過程で、富の分配は、富の創造に参与する要素の所有者が各自の富の創造に対する貢献に従って行う。

中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)では、資本、知識、技術、管理などの要素市場が決定する報酬メカニズムを健全化することが提起された。生産要素が収入分配に参与するシェアは、各自の投入だけでなく、各自の「貢献」と需給状況によって決められる。資本は生産要素として生産に参与するだけでなく、市場原則に基づいて分配に参与する権限があり、これは社会主義大生産における資本の地位を確立した。所有権と分配権に基づく資本取引、そして資本取引がサービスを提供する資本市場は当然、社会主義市場経済の構成部分となるべきである。

もう一つ、中国の事情が大きくことなるのは、世界最大の発展途上国という点である。新中国が誕生して以来、中国の物質の生産能力は大きく向上し、世界第2位の経済大国に成長した。しかし、依然として発展のバランスが取れておらず、発展の程度も十分とはいえず、実体経済の構造的な矛盾が鮮明となっている。中国の資本市場においては、金融は実体経済を支える重要な手段で、実体経済の均衡な発展を促し、経済運営の効率を高める角度からサービスを改善し、資本、技術と実体経済の循環を円滑にし、経済の構造的矛盾を解決する必要がある。これは、西側資本市場がマクロ上で主に総量問題の解決に重点を置いているのと明らかな違いである。

中国新聞社:中国の特色ある現代的資本市場の発展目標は何か?これらの目標を達成するために、今後どのような改革を強化していくべきか?

張躍文:機能からみると、資本市場は実体経済を支える機能を有し、資本市場と実体経済の依存関係はほとんどの国に当てはまる。しかし、基本的な経済制度と経済発展の段階で分けると、国ごとに大きく異なる。これは中国の資本市場が発展目標で独自の特色を持つ理由である。

中国の特色ある社会主義政治経済学の重大な突破は、中国がまだ社会主義の初期段階にあることを明確にし、且つこの段階の本質は生産力を解放し、発展させ、搾取と二極化をなくし、共同富裕を徐々に達成することである。中国の特色ある資本市場の発展目標は実体経済の発展目標と整合性を保つべきである。

中国の特色のある社会主義が新たな時代に入ったのに伴い、中国社会の主な矛盾は、生活に対するニーズや、不均衡・不十分な発展の間の矛盾に転化しており、中国の特色のある社会主義を堅持し発展させるには必ず「国民を中心」に据えなければならない。資本市場の主要な任務は、経済発展中の構造的矛盾の解決を支えることで、単純なファイナンスの総量の拡大はもはや市場発展のレベルを測る唯一のバロメーターではない。

新時代の中国の特色ある資本市場の発展には、基礎制度の整備を強化し、実体経済へのサービスと投資家の合法的権益の保護という根本的な趣旨を確りと理解し、市場化、法治化、国際化の方向を堅持し、中国の資本市場の魅力と国際競争力を向上させ続けなければならない。現在、中国の資本市場制度の改革のカギは、株式発行登録制の全面的な実行をはじめ、資本市場の重要な制度の刷新を促すことにある。これまでの「科創板」、「創業板」の試行経験を踏まえて、全市場で登録制を推進するとともに、それに応じて株式上場、取引、情報開示、投資家保護、上場廃止などの基礎的制度を調整、補完、整備し、中国の株式市場の運営における市場化のレベルを全面的に高めることが重要である。

中国新聞社:中国の特色ある現代的資本市場の発展の道の中で、政府と市場の関係をどのように適切に処理すべきか?

張躍文:歴史、経済、政治、社会、文化など様々な要因によって各国、資本市場の発展の道は異なる。自由市場経済思想を尊重する西側諸国の資本市場の多くは、自由放任モデルから監督管理のある自由市場のモデルへと徐々に進化する道を歩み、政府の役割を可能な限り制限している。中国の資本市場の発展は、初期にも一時的に自由市場モデルを模索したが、全体としてやはり「政府主導の下で市場を発展させるモデル」となっている。

有効な市場と能力のある政府の組み合わせは、中国の特色ある社会主義新時代の国家経済運営における重要な特徴の一つである。資本市場システムの整備に向けた長期的なプロセスにおいて、政府は引き続き重要な役割を果たしていく。政府の主な役割は、資本市場制度の設計者、資本市場メカニズムの建設者、資本市場運営の監督者である。同時に、政府は資本市場における特殊な投資家の役割を果たし、国有資産の価値維持と付加価値を保障し、市場の安定的な運営を維持しなければならない。

強調しなければならないのは、政府の行為の主な目的は、市場メカニズムの欠陥を補い、市場の機能不全の問題を解決することあるという点である。決して、市場メカニズムの正常な運営を代替したり妨害したりすべきではない。中央の集中・統一指導を強化し、政府の行為を制約する法律・法規体系を確立・健全化することで、政府と市場の関係を整理し、各種市場主体の利益を適切に保護し、金融商品とサービスの刷新を奨励し、資本市場の実体経済に対する支援機能を強化し続けなければならないのである。(翻訳:香港ポスト)

回答者のプロフィール:

張躍文:経済学博士、中国社会科学院金融研究所資本市場研究室主任、研究員、博士指導教官。主な研究分野は資本市場、コーポレートファイナンス。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.