「新たな広東をつくり出す」、中国にとっての意義(1)~広東省社会科学院・王廷恵院長

中国の旧正月明け7日、広東省で開催された新春最初の会合「広東省、質の高い発展大会」が国内外から注目を集めた。
大会ではどのような重要なシグナルを発したのか。「新たな広東省をつくり出す」という目標をどのように実現するのか。中国式現代化を広東省が模索する意義はどこにあるのか。広東省の質の高い発展推進は世界経済にどのような新たなチャンスをもたらすのか--これらについて、中国新聞社は広東省社会科学院の王廷恵院長にインタビューした。

中国新聞社:広東省の「新春初会合」は質の高い発展に焦点が当てられた。これはどのような重要なシグナルを発したのか?


王廷恵:広東省は改革開放の先行地、実験区で、中国の改革開放と現代化建設の大局の中で非常に重要な位置づけにある。広東省の計画、アクションは最新の発展方向を示唆する特別な意義がある。


広東省の「新春初会合」は方向性を明確にし、力を結集して人々を奮い立たせる新年のキックオフイベントである。広東省は、「遅れてはならない」、「座視していられない」という切迫感、危機感、責任感の下、新年の会合では「質の高い発展」という明確なスローガンを打ち出した。経済に注力し、質の高い発展を目指すことを現代化建設の最優先課題に置くと、一年の始まりのシグナルとして発した。


中国新聞社:広東省はかつて改革開放で先陣を切り、現在は質の高い発展を全面的に推進している。広東省が現在置かれている歴史的な位置づけをどのように見ているか?
王廷恵:広東省は中国と西洋文明の交流の最前線に位置し、近代では現代化の先駆者の役割を担ってきた。広東省は近代中国の早い段階で留学生やエンジニアを輩出。最初の民族資本主義商工業として位置づけられる継昌隆製糸工場を設立した。康有為、梁啓超、孫中山らも広東省の出身だ。


新中国設立後、特に改革開放以来、広東省は先行地、モデル区として現代化を進め、日進月歩の発展を遂げてきた。例えば、広東省のGDPは1978年の185億8500万元(人民元、以下同)から2022年には12兆9000億元を超え、34年連続で全国首位を成し遂げた。一人当たりGDPは1978年の370元から2021年には9万8285元に拡大。また161万5000人が相対的貧困から脱却した。


一方で、広東省は人口が多く、リソースが制限され、開放発展の外部環境が複雑で、発展のバランスをとることが難しいといった問題がある。土地、価格、労働力を競い合う粗放な発展方式は続かない。現在、広東省の経済発展は、規模の拡大は踊り場に入り、質の突破は準備期間にある。質の向上、新たな発展の突破は、外部環境の不確実性に対応することで実現が可能だ。また、質の大幅な向上を規模の一段の拡大につなげることで、質を重視した新たな発展を切り開くことができる。


改革開放初期の「手探りで石を探りながら川を渡る」という状況と異なり、現在広東省は、「質の高い発展」という強い共通認識を形成している。広東省は歴史の方向性を明確に認識し、「質の高い発展」においても先頭に立って、模範を示さなければならない。


中国新聞社:「新たな広東省をつくり出す」という目標が外部から高い関心を集めているが、広東省がこの目標を実現するためどのような道を歩むべきか?


王廷恵:中国共産党広東省委員会の黄坤明書記は「広東省質の高い発展大会」で、「新たな広東省を築き、世界に一目置かれる新たな奇跡を創出する」と明言し、未来に向けた広東省の新たな目標を打ち出した。私は、「新たな広東省をつくり出す」という道は、新しい発展理念を貫き、質の高い改革、開放、イノベーションによって、質の高い発展を推進することにあると考えている。そのためには以下の3つが必要だ。


一つ目は、質が高くで包括的かつ深い改革を行うこと。国家の戦略的配置と計画に基づいて、広東省は改革の先行優位性、政策優位性、地理的優位性、プラットフォーム優位性、イノベーション優位性を最大限に生かす必要がある。特に、粤港澳大湾区の設立と発展をリードすることで、改革の全体的な計画を策定し、より高い出発点とより深いレベルで改革の発展を推進し、高水準の社会主義市場経済体制を構築する。また高品質の発展を促進するため、市場の需要に応じた供給制度を適時、効果的に実施する必要がある。さらに深セン総合改革試行地プラットフォームをさらに活用し、各戦略的協力プラットフォームの改革措置を効率的に推進。科学技術イノベーション、国有企業改革、デジタル政府、などの領域における改革深化に全国に先駆けて挑戦する必要がある。


二つ目は、質の高い開放を全面的に拡大すること。「双区」(粤港澳大湾区、深セン先行モデル区)を中心に、広東省・香港・マカオの開放に向けた一段の協力を推進し、横琴、前海、南沙といった広東省・香港・マカオ協力プラットフォームの建設、「湾区通」(大湾区内の移動を自由にできるようにする政策)の実施を促進。制度面の開放を推進し、よりハイレベルな開放型経済の新体制を構築し、国内と海外の融合を促進する必要がある。


三つ目は、質の高いイノベーションを全面的に推進すること。広東省のイノベーション能力は、6年連続で全国1位。基礎研究、技術開発、成果の実用化、科学技術金融、人材支援の全プロセスのイノベーションエコシステムを構築し、全体的なイノベーション要素の活力を引き出し、重要なコア技術の攻略や、制約要因を解消するために、新しい「広東の道」を積極的に探索する必要がある。香港やマカオのイノベーションリソース、プラットフォーム、組織と協力して、大湾区の国際科学技術イノベーションセンターを早期に設立し、世界的な重要な科学技術イノベーション源泉エリアを構築する必要がある。

王廷惠氏プロフィール:
広東省社会科学院党組副書記、院長。主に規制経済学、発展理論と政策、制度経済学などの分野の研究に従事している。2003年5月に中国共産党広州市委員会、広州市人民政府から「広州市労働模範」の称号を、2006年5月に中国共産党広東省委員会、広東省人民政府から「広東省労働模範」の称号をそれぞれ授与した。

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