一帯一路の「債務の罠」理論が成り立たない理由(2)~中国国際経済交流センター張燕生氏

2023年は「一帯一路」構想が打ち出されて10年目の節目に当たる。過去10年、「一帯一路」構想は共同参画国・地域の発展に寄与した一方、中国がいわゆる「債務の罠」を作り出したとの見方もある。事実はどうなのか?これについて中国国際経済交流センターの張燕生主任研究員は中国新聞社のインタビューに応じ、長年にわたり、中国は世界の経済成長促進に重要な役割を果たしてきたと同時に、発展途上国の「貧困の罠」からの脱却を支援するパートナーだったと指摘している。

一帯一路の「債務の罠」理論が成り立たない理由(1)

 

中国新聞社:今後、中国と「一帯一路」に参画する国・地域はどのように協力し、債務リスクを防ぎながら共に発展していくべきか?

張氏:第一に、中国は「一帯一路」建設において大国としての責任と覚悟を示すと同時に、世界の発展を促進する模範的な役割を果たすことである。

第二に、「一帯一路」建設のプロジェクトにおいて、長期的な観点から、プロジェクトの管理人材の現地化、プロジェクトの持続可能な運営を促進し、現地や地域全体の経済・社会の発展を推進することである。

第三に、協力メカニズムを活用することである。協力メカニズムには、2017年の「第1回一帯一路国際協力サミットフォーラム」で中国と26カ国の財務省が共同で承認した「一帯一路ファイナンス指導原則」、2019年の「第2回一帯一路国際協力サミットフォーラム」で中国財政部が発表した「一帯一路債務持続可能性分析に関する枠組み」などがある。同枠組みは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際機関の国際規範を参考に、関連機関が債務管理を強化するよう奨励しているもので、「一帯一路」に参画する各国の状況や慣行を踏まえたものである。

第四に、「一帯一路」関連プロジェクトのファインナンスの推進である。中国は2014年にシルクロード基金を設立。2017年にはシルクロード基金に1000億元を追加出資するなどした。同時に、多くの中国国有大手銀行は「一帯一路」沿線国・地域に拠点を設置。また、中国はBRICS新開発銀行(NDB)の設立にも加わり、BRICsの債務の持続可能性を共同で模索している。

このような制度的枠組みから、「一帯一路」参画国・地域の資金調達を支援するとともに、債務圧力の早期解決を後押しするよう努めている中国の状況が見て取れる。

中国新聞社:現在、世界の政治・経済環境の不確実性は増幅している。新たな情勢下、中国と「一帯一路」参画国・地域との協力を一段と強化するにはどうすべきか?

張氏:第一に中国は「一帯一路」関連プロジェクトで一段の協力強化が可能である。関連国が債務問題に直面した際、中国はより包括的で柔軟な債務持続可能性分析の枠組みを打ち出している。これは財務的な利益の追及を重視する西側先進国とは一線を画すもので、中国はプロジェクトから生み出される総合的な経済的・社会的利益という観点から、建設プロジェクトを分析している。

第二に、中国は「一帯一路」参画国・地域と協力し、現地の状況に適した応用可能なルールを模索すべきである。「一帯一路ファイナンス指導原則」を例にとると、中身は先進国と発展途上国、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパ諸国をカバー。現地のニーズに応じた方法を見つけ出すことが重要である。

第三に、長期主義と多国間主義を堅持すべきである。「一帯一路」建設は、世界的、戦略的、マクロ的、長期的な観点から構想が練られており、自国の発展とともに、国際的なハイレベルなルールと歩調を合わせる必要がある。同時に、「一帯一路」建設は、包摂的、開放的な多国間協力の方法を引き続き堅持し、「誰もが利益を享受できる」ようにすべきである。

張燕生氏プロフィール
中国国際経済交流センター主席研究員、世界経済学博士。国家発展改革委員会学術委員会秘書長、対外経済研究院院長などを務めた。研究分野は国際金融と国際貿易。中国語と英語で10冊以上の書籍を出版(共著を含む)、200本以上の学術論文を発表。国家発展改革委員会優秀研究業績第一等賞など数々の賞を受賞。

 

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