「恐怖感」乗り越えRCEPを妥結させた知恵―中国人専門家が背景含め紹介

東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の計15カ国が参加する「地域的な包括的経済連携協定(RCEP」が1月1日に発効した。中国-ASEAN商務理事会の許寧寧執行会長はこのほど中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、RCEPの交渉妥結の背景には中国とASEANがそれまでに成立させていた自由貿易協定(FTA)の成果に対する評価が生かされたと説明した。以下は、許執行会長の言葉に説明部分を追加して再構成したものだ。

ASEAN各国と日・中・豪・ニュージーランド、韓国の計15カ国によるRCEPが発効した。それより前に始まっていたFTAにより「恐怖感」が除かれたことがあるという。写真は中国-ASEAN博覧会の様子。

■9年の歳月をかけて繰り返した交渉で、各国の思惑の違い乗り越える

RCEPの発効で、世界人口の3割、全世界の貿易規模の3割、全世界の国内総生産(GDP)の3割をカバーする、世界最大の自由貿易圏が出現することになった。

写真は中国-ASEAN博覧会の様子

RCEP成立への動きの発端は、中国が2005年に提唱しはじめたASEANと日中韓による「東アジア自由貿易圏」と、日本が06年に提唱し始めた「東アジア自由貿易圏」にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加える「東アジア経済連携協定(EPA)」を統合する形で、日中両国が11年に、RCEP設立の共同提案を行ったことだった。ASEAN首脳も、同提案を受け入れることで一致した。

とはいえ、各国の利益が複雑に絡み合うRCEPが簡単に成立したわけではない。事務方による第1回の交渉会合がブルネイで開催されたのは13年5月だった。その後、事務方の交渉会合だけで30回近くも開催され、さらに閣僚会合なども繰り返された。途中でインドが離脱する波乱はあったが、20年11月の第4回首脳会議において、15カ国はRCEPに加わる署名をした。

■FTAには「恐怖感」ある、ただし経験により分かったこととは

かつてASEAN各国には、FTA協定を結ぶことで自国の多くの産業が大打撃を受けると強く懸念する声があった。しかし中国など域外の大国とASEANの連携が強まり、ASEAN加盟国に投資をし、国際市場を開拓すると、ASEAN全体の産業のレベルアップに有利であることが、経験から分かるようになっていた。

例えばインドネシアは、中国とのFTAに最も慎重な国の一つだった。しかし協定が成立すると、中国の鉱業企業がインドネシアに進出し、採掘した鉱物の加工業パークを建設した。そのことで、インドネシアの関連産業がレベルアップした。

ベトナムの場合、EUとのFTA締結が大きな変化をもたらした。ベトナムからEUに衣料品を好条件で輸出できるようになったからだ。すると多くの中国企業がベトナムに投資して、同国での生産を開始した。ASEANはFTAの影響で、経済が世界でも最も活況を示す地域になった。

RCEPの発効で、中国とASEANの協力はさらに高い段階に引き上げられることになった。中国とASEANは互いに最大の貿易相手であり、投資パートナーだ。RCEPの発効により、ASEANは世界経済を成長させるエンジンになるだろう。そして、そのエンジンを動かす原動力は、主に中国とASEANから来るものだ。

写真は中国-ASEAN博覧会の様子

■中国はRCEPとは別枠でASEANとの提携強化を進める

中国とASEANのFTAが起動したのは10年1月2日だった。そして19年には同FTAがバージョン・アップされ、例えば双方の輸出入品目の9割以上が無関税になった。しかし中国の習近平主席は21年10月に行われた中国とASEANの対話関係30周年を記念するサミットで、中国-ASEANのFTAについて「第3バージョン」を構築する提案をした。

その理由とは、RCEPに参加した15カ国には、経済の発展レベル、市場の成熟度、産業特性、開放の度合いなどで違いがあることだった。そのため、「10+1」であるASEANと中国がまず、FTAにおいてレベルアップを行い、RCEPの残りの4カ国にとっての先行モデルケースになる考えだ。

RCEPと比べて、中国とASEANの「第3バージョンFTA」は双方の市場開放度がより高く、投資の自由度や利便性もより上昇する。双方に前回のバージョン・アップの経験があるので、「第3バージョン」の交渉は比較的楽に妥結すると予想できる。(翻訳:Record China)

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