東西問|雷小華: RCEP協力の下で中国は文化の「美美与共―多様性の尊重と調和」をいかに展開させるべきか
地理的に近い中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は、ますます緊密になる交流と協力の下で、「あなたの中にわたしがある、わたしの中にあなたがある」というように双方の文化が融和している。たとえば、独特な風味をもつASEANの食品が中国広西チワン族自治区憑祥市の中越国境鉄道税関を通じて輸入され中国各地に広がり、袋入りの柳州螺螄(ルオス)麺(タニシ風味の麺)などの中国食品もまたASEAN諸国で好評を博している。 「東アジア地域包括的経済連携」(RCEP)の発効に伴い、中国ASEAN博覧会(略称「東博会」)ではRCEPエリアが増設されるなどサービス範囲がRCEP加盟国に拡大され、双方の文化交流がますます緊密になる。中国とRCEP加盟国との経済貿易協力の緊密化が高まる背景の下で、人文交流をいかに充実させ、文化間の「多様性の尊重と調和」を展開していくか。広西社会科学院東南アジア研究所副所長兼広西社会科学院東南アジア国別研究革新チームの主席専門家である雷小華氏が中新社の「東西問」の独占インタビューに応じ、このテーマについて解説してくれた。 インタビューの概要は以下のとおりである。 中新社記者:中国ASEAN自由貿易地域(CAFTA)の発足は、双方の文化交流にどのような影響を与えたのでしょうか。 雷小華:中国ASEAN自由貿易地域の発足以来10年間で、中国とASEANの間で90%以上の7000品目を超す商品の関税が撤廃されました。これにより、子ども向け玩具、放送映像器材、文化番組、テレビドラマ、映画、アニメーションなどのサービス貿易が活発化しました。 現在、中国の対ASEAN投資の方向性は、従来型のインフラ分野から観光地、観光サービスプラットフォーム、放送や映像などの文化インフラ分野のほか、さらに文化系の企画や作品制作への参加へと徐々に変化しつつあります。このことが、ASEAN諸国の文化インフラ整備のレベルを一定程度引き上げ、文化商品を多彩にしています。 同時に、中国とASEANは、互いに最も重要な観光地の一つになっています。特に新型コロナウイルスによるパンデミックが起こる前の2019年には、中国とASEANの双方向の人的交流がのべ6500万人を超え、中国と東南アジア間のフライトが週約4500便、ASEAN諸国への中国人観光客がのべ3907万人となり、過去最高を記録しました。 文化商品の貿易拡大、文化インフラ整備のレベルアップおよび双方向の人流の急速な増大に伴い、中国とASEANの文化の融和を支える世論の基盤はますます強固なものになってきています。 中新社記者:中国ASEAN自由貿易地域の発足は、中国人の食卓にどのような変化をもたらしたでしょうか。 雷小華:中国の経済発展と強大な国内需要は、特に国内の大市場を主軸とし、内循環(国内市場)と外循環(海外市場)を互いに活発化させるという新しい発展の枠組みの構築は、ASEAN諸国の輸出、特に農産物と旬の果物に関して、大きなチャンスをもたらしました。ベトナムは、9種類の果物の中国向け輸出がすでに可能となり、さらに7種類が交渉中です。今年の春節には、タイ産のドリアン、マンゴスチンやベトナム産のジャックフルーツ、ドラゴンフルーツそのほか大量の水産物が広西チワン族自治区を通じて中国市場に入ってきました。 ASEAN諸国の良質で安価な商品は、中国の消費者の食卓を豊かにしただけでなく、当初は高価だった果物も次第に手が届く価格になり、ドリアン、マンゴスチン、ジャックフルーツなどは中国の一般市民の食卓に上る珍しくない果物になっていったのです。 中新社記者:中国とASEANの文化的類似性、共通性は、自由貿易地域(FTA)の締結にどのような役割を果たしましたか。 雷小華:中国とASEANは地理的に近く、民俗的にも共通点が多いので、互いに親しみがあり、あまり気兼ねすることなく最適な方法でコミュニケーションができます。これが、双方の信頼性を高め、FTAの枠組みの下で全方位的でハイレベルの協力を推進するのに役立っています。 同時に、文化的な類似性や共通性があるため、双方のコミュニケーションに言葉の壁が少なく、意思疎通が容易でスムーズであり、双方の人的交流や経済貿易協力にプラスになっています。中国とASEANが互いに最大の観光地であるのもこのおかげです。 さらに、文化的な類似性、共通性により、双方が互いの風俗や習慣に精通することができます。それによって、企業が現地での市場調査を行い、各国の消費者のニーズにあった市場性のある製品の生産やプロモーションができるので、互いの市場を開拓して製品の市場シェアを拡大するのに有益です。 中新社記者:中国とASEANには長い人文交流の歴史がありますが、人文交流を通じて進めてきた経済貿易協力の経験は、RCEPの設立にどのような示唆を与えましたか。 雷小華:第一に、相互尊重と相互学習です。中国は、近隣各国と良好な関係を築き、パートナーとして、互いに信頼し尊重し合う誠実な友人、戦略的なパートナーであることを提唱しています。中国とASEANの間に「和して同ぜず」「小異を残して大同につく」という状況が生まれたのは、相互尊重があるからです。中国とASEANの歴史や文化は多様で包容力があり、特色があります。人々の交流の長い歴史は衰えることなく、社会の各界からの幅広い参加が交流チャンネルを持続的に拡大させています。それにより、各分野の交流は緊密で活発になり、人々の交流もますます頻繁になり、交流によって特色あるブランドが絶えず現れています。「親戚も友人も頻繁な交流により親近感が生まれ、相互理解が深まる」という道理は、RCEP参加国との協力関係にもあてはまります。 第二に、華僑華人による橋渡し役、つなぎ役としての役割が十分発揮されるようになったことです。ASEAN諸国には多くの華僑華人がおり、現地の経済発展を促進させるだけでなく、人々の中国文化に対する認識や理解も促し、中国文化の影響力を高めています。 第三に、持続的に人と人の交流という基盤を固めていくことです。中国とASEAN は、教育、観光等の人文交流の規模が大きく、これらは相互関係を深化、強化するための基盤となっています。 中新社記者:中国とRCEP加盟国の経済貿易や文化の面での相違や補完関係についてはいかがでしょうか。中国文化はどのようにすればRCEP加盟国に向けてよりよい働きかけができるのでしょうか。文化間の「多様性の尊重と調和」はどのように展開されているのでしょうか。 雷小華:中国とRCEP加盟国とは政治体制、宗教、イデオロギーなどの面で大きく異なっています。中国文化と文化間の「多様性の尊重と調和」を広めるには関係者がいっしょに努力する必要があります。 第一に、より緊密な戦略的パートーナーシップを構築することです。地域情勢がますます複雑になり、加盟国の関係を域外の国が干渉してくる中で、中国はRCEP諸国との対話と協力という大局的な方向性を堅持し、誠実なコミュニケーションを通じて理解と信頼を促し、違いは違いとして尊重しながら共通点を探って不一致と論争を適切に処理することです。ハイレベルの交流、接触、政策的意思疎通を強化し、各レベルでの相互訪問を拡大し、ガバナンス経験の共有を促進し、東アジア協力の持続的発展を確保することです。 第二に、互いの文化の違いを寛大な心で受け止めることです。文化の違いを正しく扱い尊重し、寛大に、互いの文化の卓越性を認め合うのです。それぞれの国の中国文化の受け手について、各国の政治体制、文化背景、風俗習慣、宗教信仰などに応じて複数に分け、「一国一政策」を展開し、文化産業における協力を強化し、文化産業の包括的発展を奨励します。 第三に、市場調査を強化し、消費者のニーズにあった文化商品を開発することです。違いがあるからこそ、市場調査をして各国の国民性や消費習慣を十分に理解したうえで各国のニーズに合わせた商品づくりをする必要があります。たとえば、より多くの現地のプロモーションプラットフォームやイメージキャラクターを活用して、文化商品のプロモーションを行うなどです。 中国広西チワン族自治区南寧市で2021年に開催された第18回中国ASEAN博覧会の会場。=中新社提供 彭寰撮影 中新社記者:広西チワン族自治区南寧市で開催される「東博会」は、中国とASEANとの間の文化交流および文化貿易の「南寧チャンネル」となっています。RCEP発効後、「東博会」のサービス範囲がRCEP加盟国へと拡大されると、将来的に南寧が中国とRCEP加盟国との文化的融和の中心になるでしょうか。 雷小華:将来的に、南寧は中国とRCEP加盟国との文化的融和において重要な役割を果たすことができるでしょう。 第一に、中国ASEAN博覧会のプラットフォーム機能を上手に利用することです。プラットフォームを中国ASEAN「10+1」向けのサービスからRCEP加盟国向けのサービスへと拡大し、サービス貿易の特別展示エリアを開設し、文化貿易の規模をさらに拡大させ、文化インフラへの投資レベルを引き上げることです。 第二に、ハイレベルな対話プラットフォームとしての機能を強化します。中国とRCEP加盟国の国交樹立記念周年行事を開催し、RCEP加盟国との「友人の輪」を強固なものにし、「中国ASEAN文化フォーラム」、「中国ASEAN博覧会文化展」、「中国ASEAN博覧会アニメーションゲーム展」など多角的なイベントを開催し、かつRCEP加盟国にも拡大します。これらは中国とRCEP加盟国との人文交流の促進に重要な役割を果たすでしょう。 第三に、人文交流をさらに深めることです。「ASEAN文化週間」、「美しい中国」などの文化交流のブランド化したイベントを継続的に開催します。従来型の人文交流の基盤を強化した上で、科学技術、公衆衛生、環境保護、国際的な貧困の削減、デジタル経済など新しい分野での協力を拡大させます。 第四に、RCEP加盟国に向けた広西チワン族自治区の国際的なコミュニケーション力を向上させます。革新的なコミュニケーション方式とコンテンツを通じて、「中国の物語」と「中国イメージ」を「南寧チャンネル」によって、RCEP諸国に広め、より多くの人々が、包括的で立体的な生き生きとした中国を理解してもらえるようにします。(完) 雷小華氏略歴 博士、研究員。現在中国広西社会科学院東南アジア研究所副所長兼中国広西社会科学院東南アジア国別研究革新チーム主席専門家。長年東南アジアの政治、経済、文化の研究に携わっている。近著『ASEAN諸国の海洋管理論および実践研究』主編著『マレーシア経済研究報告』『広西チワン族自治区の国境開発開放の報告』等【編集:蘇亦瑜】