理想汽車、純電気自動車投入へ~その背景は

理想汽車(Li Auto)はこのほど、新たに投入するEVの車名について「MEGA」に決まったことを明らかにした。同社がこれまで投入してきたのは全てレンジエクステンダーEV(EREV/Rex)。MEGAは同社初の純電気自動車(BEV)となる。年末に発売予定で価格は50万元台という。

■REEVからBEVへ
理想汽車の現在の製品はいずれもEREV。なぜEREVだったのか。これについてCEOの李想氏はかつて、「電池の価格が高く、充電が遅いという問題が解決されるまではBEVは投入できない」と語っていた。EREVは、EVに発電専用エンジンを搭載し、バッテリーの電力がなくなる前にエンジンを駆動して航続距離を伸ばす仕組みで、BEVの電池切れ問題を補足するエンジンタイプだ。
だが、理想汽車は2020年第4四半期の決算発表会で、2023年にEVモデルを発売する予定と明らかにした。2021年8月には、「Whale(Wプラットフォーム)」と「Shark(Sプラットフォーム)」という2種類のEVプラットフォームの開発を進めていると発表した。
そして今年5月の上海国際モーターショーで、EREVとBEVの「ダブルエンジン戦略」を発表。ダブルエンジンとはREEVとBEVの2つのエンジンタイプを指し、理想汽車が本格的にBEV市場に参入することを表明した格好だ。

 

■BEV投入の背景
理想汽車がBEVの投入に乗り出す背景の一つは政策の変化。これまでEREVを含めたプラグインハイブリッド車(PHEV)は新エネルギー車(NEV)普及の一環として、NEVの優遇政策を受けるべくNEV用ナンバープレートである「グリーン・ナンバープレート」の発行対象だった。しかし、上海市と北京市は、PHEVに対する「グリーン・ナンバープレート」の発行を取りやめ。つまり、PHEVはガソリン車と同様のナンバープレートになり、ナンバープレート取得にも相応の時間を要するとともに、NEVの政策恩恵を享受できなくなる。こうした動きは、今後他のエリアにも拡大するとみられている。
市場の変化も理想汽車のBEV投入を後押しする一因。そもそも、ガソリンと電気を併用するハイブリッド車は、ガソリン車から純粋な電気自動車への移行製品として位置づけられている。 前述のCEOの李氏の「バッテリーの問題が解決されるまでは、BEVは投入できない」という発言は、裏を返せば、バッテリーの問題が解決できれば、BEVを投入するということ。バッテリーの性能が向上する中、理想汽車はこのタイミングでBEVの投入を決めた。
理想汽車にとって初のBEVでえる「MEGA」。消費者が注目したのはミニバン型多目的車であるMPVということだ。これは、競争が激しいSUVを避けたためとみられている。
競争が激しい市場を避けるべくMPVにする理想汽車。ただ今後、競争が激しいBEV市場で生き残るには、バッテリー、スマート化などの核心的な技術のブレークスルーは避けて通れない。こうした中、上海モーターショーで理想汽車は電池に関する技術を発表。寧徳時代(CATL)と提携し、CATLの第四世代電池パックである「4C麒麟(Kirin)」を世界で初めて搭載すると明らかにした。ただ、BYDのような電池の自社開発ではなく、あくまでも外部からの調達で賄う。

 

■「25年までの3年間は重要な年」~李CEO
6月30日に開催された理想汽車設立8周年記念式典で、CEOの李氏は「2023~2025年の3年間は、最も重要な年になる」と強調。「中国の高級ブランド販売数でトップとなり、年間の納車台数を160万台にするのが目標」と語った。
理想汽車は足元の販売が好調。2022年の同社の納車台数は13万3,200台だったが、2023年は5月末時点で36万3876台。既に2022年通年の3倍近くになっている。
赤字が続く新興NEVメーカーの中にあって、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng Motors)に比べて赤字額も少ない状況にある。今後、REEVからBEVへのシフトが必須となる中、競争が激しいBEV市場で生き残ることができるのか、注目される。

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