中国の産業用ロボット、今年の販売台数30万台突破の見通し~新エネルギー分野が牽引
中国深圳市でこのほど高工機器人産業研究所が主催したロボット関連の年次総会で、中国の今年の産業用ロボットの販売台数について、30万台を突破するとの見通しが明らかにされた。今年後半の自動車産業の回復に加え、リチウム電池や太陽光発電など新エネルギー分野が産業用ロボットの需要を押し上げたという。また、2023年の中国の産業用ロボット市場全体については、20~25%の成長が予想されている。
■今年の産業用ロボット市場
22年の中国の産業用ロボット全体の販売台数は30万3,000台に達し、前年度の26万1,300台から約16%増加する見込み。伸び率は前年の54%から鈍化するものの、台数は30万台を突破する見込み。販売台数のうち、国産ロボットは13万2,000台で、全体の約4割を占めるという。
今年1年を通じた生産動向の推移をみると、前半は振るわなかったが、後半は回復に向かった。実際、1~10月の産業用ロボット生産台数は、累計で前年同期比3.2%減の36万2,600セットに落ち込んだが、10月単月では前年同月比14.4%増の3.9万セットとなり、通年の平均水準を大幅に上回った。上半期は一部地域での封鎖措置やサプライチェーンの逼迫により、部品などの納入に遅れが生じるなどし、生産に影響が及んだ。ただ、川下の購買力はそれほど落ち込んでいないため、サプライチェーンの問題が解決すれば、需要は再び盛り上がるとみられている。
需要サイドの川下の業界には変化がみられた。これまでは3C(携帯電話、コンピューター、家電)業界の需要が60%近くを占めていた。しかし、今年は新エネルギー業界が最大の牽引役となった。リチウム電池、太陽光発電、新エネルギー車(NEV)を中心とする自動車業界の需要の伸びが加速。また、半導体や物流・倉庫などの分野の需要も一定の伸びを示した。一方、従来の主力だった3C業界のほか、金属加工、家電、食品・飲料などの分野は需要の伸びが鈍化した。
NEVなどの新エネルギー分野の需要増大に伴い、大きい負荷に対応できるロボットの需要が伸びている。今年上半期は、6軸ロボットの市場シェアが初めて30%を突破。高速のスカラロボットの需要も伸びた。一方、3C業界の需要鈍化で、小6軸ロボット市場は前年同期に比べて減少が鮮明となった。また、食品・飲料、日用品業界の需要低迷で、パラレルリンクロボットの需要も押し下げられた。
負荷が大きいロボットの需要拡大を受け、国内のロボットメーカーは、130kg以上の負荷対応の新製品の投入に乗り出している。
■来年の産業用ロボット市場
23年の中国の産業用ロボット市場については、成長率が20~25%前後になると予想されている。この予想は、今年の各ロボットの受注残や川下業界の需要を踏まえたものという。
川下の需要については、新エネルギー分野が引き続き牽引役になり、同分野の産業用ロボット需要全体に占める割合は20%を突破する見込み。NEVや動力電池、太陽光発電のほか、エネルギー貯蔵システム業界での需要も期待されている。
中でも、リチウム電池業界は需要増が見込まれる分野。生産能力の引き上げとともに、品質の向上が求められいるリチウム電池業界では、自動化・無人化を通じたコスト削減・効率引き上げが課題となっているためだ。こうした中、業界関係者は、リチウム電池業界での自律移動ロボットの需要について、2025年までに2万5,000台に拡大し、21年から25年にかけての年間平均成長率は38%に達するとの予想を示している。
また、今後は国産ブランドの普及率の上昇が予想されている。ただ、現状、多くの企業がひしめき合う中国のロボット業界は、企業の大規模化、さらには大手企業の集約が課題。高機能なロボットは依然として海外企業が優位に立つ中、需要が拡大している分野を中心に国内のロボット企業がどこまで食い込むことができるのか注目されよう。