韓国人は中国を過不足なく認識すべきだ―「チャンケ主義の誕生」の著者が説く 

韓国・光云大学の金希教(キム・フイギョ)教授は、韓国人の対中観には問題があると考えている。金教授は中国に留学した経歴もあるなどで、専門家としても現地での生活経験者としても中国を極めてよく知る人物だ。

 ネットの世界では中国人ユーザーと韓国人ユーザーが“激突”する現象がしばしば発生している。もちろん、中国人の全員と韓国人の全員が互いに相手を憎み軽蔑しているわけではないが、双方で相手に対する悪感情が「爆発」する現象がしばしば発生しているのは事実だ。

 米中関係の東アジアに対する影響などを研究する韓国の光云大学の金希教(キム・フイギョ)教授は中国に留学した経歴もあるなどで、専門家としても現地での生活経験者としても中国を極めてよく知る。韓国で出版された金教授の「チャンケ主義の誕生」は、韓国社会の中国観についての問題提起だ。チャンケの本来の意味は「(店など)の主人」であり、理由については諸説があるが、韓国では中国人に対する蔑称(べっしょう)として用いられている。金教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、韓国における対中観についての持説を改めて紹介した。以下は金教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

 ■近隣国である韓国では「中国脅威論」で緊張の度合いを高める人もいる

 「チャンケ主義の誕生」を世に問うた時には、二つの状況を覚悟した。一つは、世間から何の反応もないことだ。この本では主に、中国問題についての韓国への批判を書いた。そのような批判は見なかったことにしたいという心理が働くかもしれないと考えた。逆に批判が寄せられるかもしれないとも思った。現在の韓国の出版界では「今の中国とはどのような国か」をテーマとする書籍は少なく、あっても中国の一面だけを論じている。私の考えは違う。中国のよい部分はしっかりと示した方が、韓国人はより正しく中国を見られるようになると考えた。

 私は復旦大学で博士号を取得した後に韓国に戻った。その後は専門の研究を続ける一方で、韓国の大衆に中国を客観的に見てもらおうと思い、著述活動を続けてきた。「チャンケ主義の誕生」の刊行は、その一部だ。

 客観的に言って、現在の韓国人の中国に対する認識は全面的ではない。ここ何年かは新型コロナウイルス肺炎の流行の影響で、韓国の若者は中国を旅行する機会がない。特に20歳前後の若者は中国の発展や経済における達成を自分の目で見ておらず、目にするのはネットで見られる中国だけだ。ネットには中国に対する偏見をあおるような記述もある。そのため、韓国人が中国を誤解しやすい状況が強まっている。

 また、西側には中国を「恐ろしい国」と決めつける、いわゆる「中国脅威論」を流すメディアがある。韓国は中国の近隣国だ。「中国脅威論」に接して緊張の度合いを高める人もいる。だか私は、より多くの人に真実に基づき全面的に中国を見てほしいと望んでいる。中国が一貫して堅持しているのは平和的発展であり、中国が侵略や覇権争いの道に進んだことはない。私は中国が今後も侵略や覇権争いの道に進むことはないと信じている。

 ■民族感情だけで「嫌いだ」と主張するのは人種差別主義

 中国に対する一面的な認識が“社会の空気”になれば、中国が韓国の経済発展にどれだけよい効果をもたらしても、平和体制の構築に貢献しても、誤解に基づく中国への悪感情が醸成されてしまう。

 このような方向は韓国にとってマイナスだ。韓国は多国間主義的秩序の恩恵を受けてきた国であり、米国にやみくもに追随して中国との対立あるいは「新冷戦」という局面を目指すべきではない。私の考えでは、中国が提唱する平和的発展と多国間主義の道筋こそが国際秩序の正しい方向だ。

 より広い視野から言えば、どの国にもさまざまな面がある。長所もあれば短所もある。民族感情だけで、「この国は嫌いだ」「この民族は嫌いだ」と主張するのは誤った人種差別主義だ。他国の欠点を指摘するならば、具体的な政策や現象についての言明でなければならない。ところが現状では、単純な偏見に基づいて主張をする人がいる。これは危険だ。

 今年は中国と韓国の国交正常化30周年だ。両国は交流することで、この30年の間にそれぞれ大きな利益を得た。特に経済分野では、両国は互いに交流しつつ長足の進歩を遂げた。

 ■韓国では、ポータルサイトに掲載される記事への依存度が高い

 私は韓中が引き続き経済連携を強化し、双方の民衆が経済交流の成果を享受することを願う。そうすれば、韓中交流の重要な意義が事実によって証明されることになる。また、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた後、韓中が可及的速やかに人と人の対面交流を再開することを願っている。人と人との現実空間での交流では、ネットを介して交流よりも多くを得られるはずだ。

 私は、韓国の若者が中国に行って実際の中国を見れば、中国を毛嫌いしなくなると信じる。同時に、中国の若者に韓国についてもっと理解してもらえば、双方の文化交流を促進することができると信じる。そうなれば、相互の庶民感情も改善される。そのことは、政治的な相互信頼や相互交流を推進につながるだろう。

 メディアの役割についても論じておきたい。このデジタル時代を生きる大衆は、情報入手をほぼ全面的にモバイル通信機器に依存している。特に韓国では、ポータルサイトに掲載されるメディアの記事への依存度が高い。メディアは両国関係を構築する上で非常に重要な役割を担っている。両国のメディアが事実に基づいて報道し、バランスの取れた視点で議題を設定し、韓中交流のために友好的な世論環境を構築することを希望する。

 いずれにせよ、韓国と中国は切っても切れない隣国だ。国交が成立してからの30年は始まりにすぎない。今後は長い時間をかけて関係をさらに深めねばならない。私は常に、多くの韓国国民がよりよい世界を目指す夢を持ち、より理性的に中国を見るようになると信じる。中国人には、韓国でも多くの人々が敵対や衝突を乗り越えて和解と平和を達成することを願い、平和で友好的、多国間発展の素晴らしい世界を期待していることを覚えておいてほしい。(構成 / 如月隼人)

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.