中国の21年の人口、16省で常住人口減少~都市部への人口集中など構造問題も

中国の31省・直轄市・自治区の人口統計が出そろった。2021年末時点で常住人口が前年末比で減少したのは16省・直轄市・自治区。増加したのは15省・直轄市・自治区。人口減の地域が増加の地域を上回った。人口減の地域が増えると同時に、都市部への人口集中など構造的な問題も垣間見られる。

■中国全体の人口増は48万人

まず、中国全体の統計を確認する。21年末時点の人口は14億1,260万人。前年末からの増加数は48万人にとどまった。21年の人口の自然増加率※は0.34‰で、前年に比べて1.11ポイント低下した。国家統計局は人口増鈍化の要因について、出生数が減少しているためと説明。出生数減少の主な要因は2つあり、1つは出産適齢年齢人口の減少、もう1つは出生率の低下という。

※自然増加率とは、一定期間(通常は1年間)の平均人口(または期中の人口)に対する人口の自然増加数(出生数から死亡数を引いたもの)の比率で、千分率で表される(自然増加率=出生率-死亡率)。

■北部、中部、西北で人口減

地域別にみると、21年末の人口が減少した16省・直轄市・自治区は、黒竜江省、遼寧省、吉林省、河北省、甘粛省、内モンゴル、北京市、天津市、陝西省、山西省、江西省など。うち10省・直轄市・自治区で減少数が10万人を超えた。

減少数のトップ3は河南省、黒竜江省、雲南省で、それぞれ58万人減、46万人減、32万人減だった。遼寧省、吉林省、湖南省は、減少数がいずれも20万人を超過。人口が減少したのは主に東北、華北、西北、中部地区となっている。

このうち、東北は全国に先駆けて人口が減少し始めたエリア。20年以降、人口1,000人当たりの出生率は5人を割り込んでいる。東北は人口、特に若い人の流出が増加し、それに伴い出生数が低迷している。

このほか、戸籍人口が全国最多の河南省のほか、湖南省といった中部も人口減が目立つ。戸籍人口が全国最多で、常住人口が同3位の河南省の21年の出生数は80万人を割り込んだ。また、湖南省の21年の出生数は60万人を割り込んだ。

■人口増は浙江省、広東省など経済をリードするエリア

一方、人口が増加した15省・直轄市をみると、増加数トップ5は浙江省、広東省、湖北省、江蘇省、福建省。この5省の21年の1人当たりGDPの全国順位は浙江省が5位、広東省が7位、湖北省が9位、江蘇省が3位、福建省が4位と、相対的に経済が発展しているエリアとなっている。湖北省以外の4省はいずれも東南沿海部に位置し、人口純増数の合計は186万1,000人に達した。

■浙江省と広東省の人口増、要因は対照的

うち人口増が最多だったのは浙江省で72万人増。内訳をみると、出生数が44万9,000人、死亡者が38万4,000人で、自然増はわずか6万5,000人だった。一方、純流入人口は65万5,000人で、浙江省は流入者が人口増を支えている。

人口増で2位は広東省で60万人の増加。内訳は、自然増が57万1,900人、純流入人口は2万8,100人万人となっており、浙江省と対照的に、自然増が人口増に寄与している格好だ。広東省内の都市をみると、二大都市の深圳と広州はそれぞれ4万7,800人、7万300人の増加となった。

3位は湖北省。湖北省は20年は新型コロナウィルス流行の影響で一部の人が省から出てカウントされなかったが、コロナが落ち着き経済が回復するのに伴い、戻ってきた人が多かった。次いで4位の江蘇省は28万1,000人の増加、5位の福建省は26万人の増加だった。

■省都に人口集中で都市間格差も

人口増の分布では、省都など経済規模が大きい一部の都市で人口増が集中している現象がみられる。例えば、陝西省では10市のうち、常住人口が増加したのは省都の西安のみ。銅川、宝鶏、延安、漢中など残りの9つの都市は減少となった。また、湖北省では省都の武漢市で増加したものの、他の都市の常住人口は減少した。江西省でも、省都の南昌市が増加した以外、他の都市は減少となっている。

一方、広東省など相対的に経済が発展している省は、常住人口が平均的に増加している。同省は仏山、広州、東莞、深圳、中山、江門、恵州、珠海、肇慶などでいずれも増加を記録している。

■出生数は総じて減少傾向

21年の出生数に関するデータを発表したのは27省・直轄市・自治区。自然増加率をみると、黒竜江省、遼寧省、吉林省、重慶市、内蒙古自治区、湖南省、湖北省、上海市、江蘇省、河北省、山西省を含む11省・直轄市・自治区がマイナスとなっている。

うち、江蘇省は自然増加率がマイナス1.12‰。江蘇省の出生数は約47万9,800人にとどまり、統計が確認できる1978年以降で、初めて50万を割り込んだ。また湖南省は、出生数が過去60年で初めて50万人を下回った。

一方、出生数が最多だったのは、自然人口増が人口増に寄与した広東省。同省の出生数は118万3,100人、出生率は9.35‰、死亡数は61万1,200人で、死亡率は4.83‰、自然増は57万1,900万人で、自然増加率は4.52‰だった。

出生数が100万人を超えたのは広東省のみ。国家統計局によると、21年の全国の出生数が1,062万人だったため、広東省の出生数は全国の約11%を占めたことになる。

■河南省などで出生数の減少際立つ

広東省と同様に1億人規模の人口を有する河南省と山東省は、出生数がそれぞれ79万3,000人、75万400人で、それぞれ2位、3位となった。ただ、前述の通り河南省は全体で人口が減少している地域。出生数は1978年以来で最低となり、同省の出生数は20年に100万人を、21年に80万人を割り込み、減少傾向にある。

河南省を含め、複数の省で21年の出生数が数十年ぶりの低さを記録した。江西省の出生数は前年比5万400人減少して40万人を下回った。40万人を下回るのは1950年以降で初めて。江西省統計局は出生数の減少の要因として、主に結婚・出産年齢の遅れ、「2人っ子政策」の効果の弱まりを挙げている。

■都市部への人口集中、全体の人口減は今後も継続の見通し今後については、都市部への人口集中、全体的な出生数の減少といった構造は続くとの見方が大勢だ。こうした中、人口減が最多だった河南省は先ごろ「出産政策最適化を通じた人口の長期的なバランスのとれた発展促進に関する実施計画」を発表。出産の登記制度の改善などの施策を盛り込んだ。今後、急速な人口減を食い止めるとともに、地方都市の振興などによる人口分布の最適化を図ることができる。

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