中国EVメーカーのNIO、「NIO Phone」発売~EVとスマホの一体化へ
中国のEV(電気自動車)メーカーである蔚来汽車(NIO)はこのほど、自社ブランドのスマホ「NIO Phone」の発売を始めた。EVメーカーであるNIOのスマホ事業への参入は、EVとスマホの一体化を進展させる動きとして注目されている。
■NIO Phone
「NIO Phone」は、NIOのスマホの旗艦モデルとの位置づけの下、まずは3機種を投入し、価格は6,499元、6,899元、7,499元となっている。
NIO Phoneには自動車を操作するための独立した「自動車コントロールボタン」を設け、ユーザーは遠隔操作が可能。施錠・開錠、エアコン調整などのほか、車両の状態や駐車位置などを確認できる。自動車キーを超える機能を持ち、スマホと自動車が相互に連携する製品となっている。
スマホに搭載したチップは自社開発。チップは「楊戩」という名称でLiDARマスターコントロールチップ。8コア64ビットのプロセッサーで、10月から量産を開始する。
■スマホ事業参入の背景
単純な移動手段としての位置づけが薄れる自動車。EVや自動運転車など中身のソフトの重要性が増す中、スマホと自動車の融合は必然的な流れとなっている。自動車メーカーの吉利汽車がスマホメーカーの魅族を買収したほか、スマホメーカーも小米(シャオミ)が自動車事業に参入。また華為(ファーウェイ)は自動車メーカーの賽力斯(セレス)と提携し、自動車事業に参入し、自社のソフトを自動車に活用している。
中国、自動車とスマホメーカーの連携相次ぐ~吉利はスマホ、ファーウェイはスマートカー
では、EVメーカーのNIOがスマホ事業に参入したのは、こうした動きの追随なのか。NIOのスマホ事業への参入理由について李斌CEOは、「スマホメーカーが自動車をつくり始めたからでもなければ、NIOの自動車事業の赤字が続いているからでもない」と説明している。自動車メーカーによるスマホ事業への参入は、前述の通り、吉利の事例があるが、吉利がスマホメーカーを買収したのに対して、NIOは自社でスマホ事業をつくりあげた。それだけに、NIOのスマホに対しては、「単純なスマホ」という面でみた価値に関しては「他社に比べて競争力は低い」と指摘されている。
■一体化するEVとスマホ
ではNIOのスマホに期待されているのは何か。NIOの主力製品はあくまで自動車で、「NIOのユーザーは、NIOの自動車とスマホのシームレスなつながりを求めているから、スマホ事業に参入した」(李斌CEO)という。
NIOのスマホの性能はどうか?これについて李斌CEOは、「他のスマホメーカーには及ばないが、使い勝手は非常に良い」と、使い勝手の良さを強調している。
NIOが目指すのは自動車とスマホのシームレスなつながり。自動車製造の経験、技術を持つ自動車メーカーとしてNIOは、スマホを「中央制御端末」とし、スマホで自動車を制御し、よりスマートな運転体験ができる「自動車・スマホ一体化システム」を持つ製品が求められている。同時に、スマホのセンサー技術などを活用し、自動車の安全性やスマート化の進化につなげるとともに、消費のアップグレードなどで複雑に変化する消費者のスマホのニーズに対応するためのスマホが求められている。
NIOのスマホ投入は、今後の自動車とスマホの一体化に向けた動きの試金石として注目されている。