中国NEV販売、今年上期の販売台数に占める比率30%突破~売れ筋車種に変化
中国では今年上半期、新車販売に占める新エネルギー車(NEV)の比率が30%を突破した。これは、燃料車からNEVへの切り替えが増え、より広範な消費者がNEVを受け入れていることを示した格好だ。企業別では上位15ブランドのシェアが拡大。販売台数上位メーカーへの集約度が高まった。一方、売れ筋の車種は変化。純電気自動車の車種別ではセダンの中でも超小型「A00級」の販売が減速した。一方、SUVは総じて好調。また、30万元以上の高価格帯は苦戦している。
■上半期のNEV市場概況
2023年上半期のNEV生産台数は前年同期比39.4%増の355万1,000台、小売販売台数は40.4%増の294万4,000台。新車販売に占めるNEVの比率は30.69%で、前年同期に比べて7.79ポイント拡大した。
NEV輸出も堅調。同期のNEV輸出台数は前年同期比154.97%増の48万1900台で、乗用車輸出販売台数全体に占める比率は30.66%。前年同期に比べて7.36ポイント拡大した。うち、自主ブランドのNEV輸出は226.15%増の29万9500台と大幅な伸び。乗用車輸出全体に占める比率は19.05%で、前年同期比8.02ポイント拡大した。
■企業別販売動向~上位15社への集約度高まる
企業別の販売でみると、販売上位メーカーへの集約度が高まった。上位15ブランドの上半期販売台数は249万1,815台。前年同期比で55.75%増で、伸び率は全体(40.4%)を大幅に上回った。これにより、 上位15ブランドのシェアは84.65%と、前年同期に比べて8.34ポイント拡大している。
個別では、圧倒的な販売台数を誇っているのはBYD。上半期小売販売台数は前年同期比76.48%増の103万6100台。市場シェアは35.2%と、前年同期に比べて7.2ポイント拡大した。BYDとメルセデスベンツの合弁EVメーカーである騰勢(Denza)の上半期の小売販売台数5万1,000台を含めると、市場シェアは36.96%に達し、上半期のNEV販売台数でテスラを抜いて世界トップの座に躍り出た。
■販売台数10万台突破は7社
今年上半期、小売販売台数が10万台を超えたのは7社。BYDのほか、テスラ、広汽埃安(GAC Aion)、五菱、長安汽車、理想汽車(Li Auto)、吉利汽車だ。
このうち、シェアが縮小したのは五菱。同社は「A00級(ホイールベース 2400mm以下)」の超小型セダンの売れ行き低調で、上半期の販売台数は前年同期比16.15%減となった。
■販売台数8位~15位までのブランドは総じて販売減少
8位から15位までの企業はフォルクスワーゲン(VW)、蔚来汽車(NIO)、BMW、騰勢(Denza)、哪吒汽車(Neta)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、Zeekr(極氪、ジーカー)、零跑科技(Leap Motor)。
これら7社の市場シェアは合計で11.42%。2位のテスラのシェアをわずか1.33ポイント上回る程度だ。
これら7社は販売台数が前年同期比で減少した企業が目立つ。フォルクスワーゲン、NIO、哪吒、小鵬、零鵬はいずれもマイナスで、中でも小鵬汽車は40%以上の落ち込みを示した。
■車種別はセダンの伸び鈍化、特に超小型「A00級」の減速顕著
今年上半期の純電気自動車の車種別販売台数は、セダンが前年同期比10.4%増の123万8383台、SUVが33.8%増の81万6755台、MPVが170.9%増の3万5924台。伸び率はセダンが最も低かった。MPVは伸び率は高いが、台数自体は依然小規模にとどまっている。
セダンの中では超小型の「A00級(ホイールベース 2400mm以下)」の販売台数が前年同期比42.1%減の29万9945台と大幅に減少。前出の「A00級」に属する五菱の宏光MINI EVの販売台数は12万1600台で、前年同期比38.2%減だった。
23年1~6月期 | 22年1~6月期 | 前年同期比 | |||||
販売台数 | シェア | 販売台数 | シェア | 販売台数 | シェア | ||
1 | BYD | 1,036,148 | 35.2% | 587,125 | 28.0% | 76.5% | 7.2% |
2 | テスラ | 297,124 | 10.1% | 198,193 | 9.5% | 49.9% | 0.6% |
3 | 埃安(Aion) | 198,681 | 6.7% | 83,157 | 4.0% | 138.9% | 2.8% |
4 | 五菱 | 169,889 | 5.8% | 202,617 | 9.7% | -16.2% | -3.9% |
5 | 長安 | 155,737 | 5.3% | 62,742 | 3.0% | 148.2% | 2.3% |
6 | 理想 | 141,189 | 4.8% | 60,823 | 2.9% | 132.1% | 1.9% |
7 | 吉利 | 105,153 | 3.6% | 67,155 | 3.2% | 56.6% | 0.4% |
8 | VW | 58,285 | 2.0% | 72,007 | 3.4% | -19.1% | -1.5% |
9 | NIO | 56,483 | 1.9% | 49,485 | 2.4% | 14.1% | -0.4% |
10 | 騰勢 | 51,706 | 1.8% | 901 | 0.0% | 5638.7% | 1.7% |
11 | BMW | 49,574 | 1.7% | 22,910 | 1.1% | 116.4% | 0.6% |
12 | Neta | 49,504 | 1.7% | 58,889 | 2.8% | -15.9% | -1.1% |
13 | 小鵬 | 41,088 | 1.4% | 68,824 | 3.3% | -40.3% | -1.9% |
14 | Zeekr | 40,925 | 1.4% | 18,825 | 0.9% | 117.4% | 0.5% |
15 | 零跑 | 40,329 | 1.4% | 46,177 | 2.2% | -12.7% | -0.8% |
上位15社計 | 2,491,815 | 84.7% | 1,599,830 | 76.3% | 55.8% | 8.3% | |
その他 | 451,826 | 15.3% | 496,743 | 23.7% | -9.0% | -8.3% | |
合計 | 2,943,641 | 100.0% | 2,096,573 | 100.0% | 40.4% | 0.0% |
■30万~40万元の価格帯はテスラが圧倒も全般に不振
価格帯では、30万~40万元の製品市場では、テスラがブランド力を背景に圧倒。それ以外のメーカーは総じて振るわない。
この価格帯は、テスラ「モデルY」がシェアの約30%を占めている。一方、2位の「Zeekr001」の販売台数は3万台で、シェアは約4%。3位は「BMW i3」の2万2,000台で、シェアは約2.9%にとどまる。このほか、NIOの「ES6」と「ET5」、小鵬の「G9」などのSUVも販売が振るわない。
30万~40万元という高価格帯が振るわない背景の一つは、需要側のニーズと供給側のギャップ。この価格帯の新規購入者は主に、BMWなどのブランド認知度が高い内燃車からの切り替え層で、且つこうした新規購入者は一線都市や二線都市といった大都市ではなく、三線都市や四線都市といった地方都市が多いとみられている。こうした新規購入層は「使いやすさ」、「より多くの場面での使えること」、「より高い安全性」といった利便性を重視する傾向がある。ただ、純電気自動車の重要なインフラである充電ステーションはこうした地方都市ではなお改善余地が大きい。同時に、外資系ブランドからの切り替え層にはブランド力を訴求する傾向が強いことも、テスラ以外の高価格帯を投入する新興メーカーが苦戦している一因と考えられている。
主戦場が内燃者からNEVに切り替わった中国の自動車市場。NEVの中でも売れ筋の車種や価格帯が目まぐるしく変化する中、消費者のニーズの変化の把握とともに、変化への機敏な対応が求められているといえそうだ。