中国、戸籍制度改革を通じた消費刺激策を権威筋が相次いで提唱

中国で消費刺激策の一環として戸籍制度改革の必要性を求める声が権威筋の間で上がっている。農村戸籍と都市戸籍の「二重戸籍制度」となっている中国では、農村戸籍保有者の医療や年金などの社会保障は都市戸籍保有者に比べて十分に整備されていない。農村戸籍が7億人以上いる中、戸籍制度改革を通じて農村戸籍保有者のセーフティネットを整備することで個人消費を活性化させる必要があると指摘されている。

複数の中国メディアによると、中国社会科学院元副院長で中央銀行金融政策委員会委員などを務める蔡昉氏は、7月8日の「2023青島・中国財富フォーラム」で、目下の中国経済について回復の大きな足かせになっているのが消費不振であると指摘。個人消費を刺激することが急務であるとの見解を示した。
そのうえで、個人消費を刺激する策として農村戸籍改革が必要と訴えた。農村戸籍であるが故に消費が抑えられている状況に関して、すでに都市で働いているが、まだ都市戸籍を取得していない1億8,000万人の農村出稼ぎ労働者について言及。「これら出稼ぎ労働者の消費は、社会保障が不十分なため23%抑制されている。換言すれば、これら出稼ぎ労働者が都市戸籍を取得し、関連の社会保障を受けることができれば、消費力は30%押し上げられる」とし、年間2兆元以上の消費が喚起されるとの試算を打ち出した。

 

国際通貨基金(IMF)元副総裁で中国国際経済交流センター副会長の朱民氏も、6月末の夏季ダボスフォーラムで、景気浮揚の第一の課題は国民の所得を増やし、消費を促進することだと指摘。この目標を達成するため、農村戸籍改革を加速させ、より多くの農村世帯の都市世帯化を促進し、年金・健康保険制度を改善することで、効果的に内需が拡大するとの考えを示した。

 

中国人民政治協商会議委員で上海交通大学教授、中国発展研究院常務理事の呂明氏も先ごろ、北京日報に寄稿し、経済活性化のために戸籍改革の必要性を提唱。改革は人口500万人以上の大都市に焦点を当て、より多くの農村住民がこれらの都市に定住させることで、消費者の需要を喚起するだけでなく、都市における労働力不足の緩和にもつながるとの見解を示した。

 

権威筋が相次いで農村戸籍改革を通じた経済活性化を提言していることから、「政府が近く、関連の政策を打ち出すのでは」との観測が出ている。農村戸籍の7億人という数字は米国の人口の2倍、EUの人口の1.5倍に相当する。それだけに、これら農村戸籍保有者の社会保障が整備されることで消費が喚起されれば、経済の活性化につながる。ただ、問題は財源。戸籍制度改革を大胆に進めるには大規模な財源が必要となるだけに、実際に改革が加速するかには懐疑的な見方は少なくない。

 

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