中国、景気下振れリスクに懸念で経済政策の動向に注目

中国では景気の下振れリスクに懸念がくすぶる中、今後の経済政策の行方に注目が集まっている。中でも政策決定に影響を与える有力経済学者の政策提言は、今後の政策を占ううえでの重要な手がかりとして注目されている。

■GDP成長率予想下方修正の動き

昨年はコロナ防疫措置の強化などでGDP成長率が前年比3.0%と、政府目標に届かなかった中国経済。今年に入ってからは回復しているものの、「回復はまだら模様」との指摘が多い。こうした中、格付け会社のS&Pグローバルは6月26日、今年の中国のGDP成長率予想を従来の5.5%から5.2%に引き下げ。足元の中国経済について、「回復が続いているもの、回復は不均衡で、主に投資と工業が回復の足かせになっている」との見解を示した。
S&Pグローバルの前にも、シティが6.1%から5.5%に、バンク・オブ・アメリカが6.3%から5.7%に、JPモルガンチェースは5.9%から5.5%にそれぞれ中国の今年のGDP成長率予想を引き下げている。

■「過度の景気冷え込みの防止が必要」~李稲葵氏
こうした中、気がかりなのは経済政策の動向。今後の動向を占ううえでは有力経済学者の政策提言が一つの手がかりとなる。
まず、政策決定に一定の影響力がある清華大学中国経済思想・実践研究院院長の李稲葵氏はこのほど『新時代のマクロ経済政策運営の基本課題-2023年下半期の中国経済発展に関する報告書』を発表し、その中で「過度の景気冷え込みを防止することこそが、新たな段階のマクロ経済政策の基本課題であり、一つのキーワードになる」とし、「過度の景気冷え込みの防止」は、短期でなく長期にわたって必要になる措置との認識を示した。
李氏は改革開放以降の経済運営について、「当初の主な課題は行政の簡素化、権限移譲だった」と指摘。「こうした規制緩和などの措置は、ミクロ経済主体の活性化につながり、これまでは景気の過熱に主眼が置かれてきた」という。
しかし、一定の水準に達した中国経済。ここ数年は景気が減速傾向にある。李氏は「中国経済が長期にわたって過度の冷え込みが続いた場合、重大なリスクを引き起こし、ひいては中国式現代化を推進する最大のリスクになり得る」と警鐘を鳴らす。リスクとは、失業問題の深刻化に伴う社会の不安定化、研究開発の原動力の低下、製品需要不足による科学技術の後退などを挙げている。
そのうえで、マクロ経済政策運営にあたって思考を「過熱防止」から「過度の冷え込み防止」に変える必要性があると指摘。景気冷え込みの防止として、個人消費と民間企業投資の活性化策が重要との見解を示した。
なお「過度の景気冷え込み」とは、実際の経済成長率が潜在成長率を下回ることを指すという。

■「長期の成長を支える新たな原動力が必要」~江小涓氏
また、元国務院副秘書長の江小涓氏はこのほど中国人民大学で開催された中国マクロ経済フォーラムで講演し、「中国経済は短期的な政策支援が必要であると同時に、長期的な経済成長を支える新たな原動力が必要」と訴えた。
江氏は目下の中国経済について、「安定していない」と指摘。安定していない状況は、短期にとどまらず長期にわたる可能性があるとみる。それだけに、政策は短期的なものだけでなく、長期的な成長を支える新たな原動力を生み出すことが必要との認識を示した。
新たな原動力とは、改革、イノベーション、開放の推進によって新しい原動力と新しいチャンスを創出することで、具体的には▽デジタル経済の発展推進を通じて新たな成長の牽引役を創出すること、▽一段の対外開放を通じ、クロスボーダーの資源配置の効率を高めること――などを挙げている。

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