世界のサプライチェーン再構築も多国籍企業の中国製造業投資は引き続き拡大

中国山東省青島市で6月19日に開幕した「第3回多国籍企業リーダー青島サミット」で商務部国際貿易経済合作研究院は「中国における多国籍企業:グローバルサプライチェーン再構築における再選択」と題する研究報告書を発表した。報告書によると、保護貿易主義の台頭、米中対立激化、新型コロナウイルス感染症、ロシア・ウクライナ紛争などの影響を受け、グローバルサプライチェーン構造の再構築が加速しており、地域化、多角化、デジタル化、グリーン化などの方向に傾いている。とはいえ、グローバルなサプライチェーンの構図を決めるコアロジックは不変。多国籍企業の製造業のグローバル投資が縮小する背景の下で、多国籍企業は中国への投資を着実に進めているという。

■グローバルサプライチェーン構造再構築

商務部国際貿易経済合作研究院の顧学明・院長によると、同報告書は主に3つの観点が含まれている。一つ目はグローバルサプライチェーン構造の再構築が加速していること。反グローバル化貿易、保護主義の台頭、新型コロナウイルス感染症などの影響を受けて、グローバルサプライチェーン構造は(1)グローバル分業から地域集約に、(2)高度な集中局面から多角化に、(3)ネットワーク構造から研究・生産・消費の一体化に、(4)労働者集約型からデジタル化主導に、(5)市場化競争から政治権力による競争に——転換しているという5つのトレンドがみられる。

中国でも近年、製造業のデジタル化、グリーン化への転換・高度化を積極的に推進。多国籍企業の中国の製造業分野の投資において研究開発、スマート製造、川下の精密・高度加工などの産業チェーン分野への拡大を促進し、製造業の質の高い発展を促している。

■中国の製造業は多国籍企業の依然重要な投資先

二つ目は、中国は依然として多国籍企業の重要な投資先であること。多国籍企業の中国製造業分野への投資は拡大が続く。2021年の中国製造業の外資導入額(実行ベース)は前年比8.8%増の337億3,000万ドルに拡大し、世界の製造業のFDIの伸び率を1.1ポイント上回った。

同時に投資構造は最適化され、スマート製造における外資導入は高い伸びを示し、全体の3分の1を超えている。また、外資の大型プロジェクトは3年連続で2桁の成長を維持。多国籍企業の売上高と利益はともにプラス成長を実現している。

■中国のグローバルサプライチェーンは依然として優位性

三つ目は中国のグローバルサプライチェーンは依然として優位性があること。顧学明氏は、中国の制造業の優位性について次の5つに要約。(1)規模が大きくて、サプライチェーンが完備されており、サプライチェーンの強靭性の優位性は他者が代替しにくい、(2)低コストの競争優位性は弱まっているが、労働生産性、デジタル化モデル転換などの面で効率性を高めて優位性を維持している、(3)市場規模が巨大で、潜在力が十分にあり、アジアのサプライチェーンにおける中心的地位が上昇。中国への投資はより大きな成長チャンスを獲得することを意味している、(4)イノベーションリソースが潤沢で、研究開発成果の実用化率が高く、イノベーションの応用性が高いという新たな優位性が出ている、(5)国際的でハイスタンダードな経済貿易ルールに対応し、制度の開放を推進し、国際協力・競争で新たな優位性が形成されつつあるーーという。

■多国籍企業の中国の投資状況

―東部地区に集中

次に報告書に示された多国籍企業の中国製造業分野の投資状況をみてみる。エリア別では、東部地区が引き続き外資の主要投資先となっている。2021年の東部地区の製造業の外資導入額は全国の87.9%を占め、2017年に比べて8.9ポイント上昇。一方、同期間の中部地区と西部地区の製造業の外資導入の割合はそれぞれ7.6ポイント、1.3ポイント低下し、全国の製造業の外資導入の地域間の不均衡という問題が浮き彫りになっている。

省ごとの製造業の外資導入を見ると、製造業の外資導入額が大きいのは江蘇省、広東省、山東省、浙江省の4省。4省の製造業の外資導入規模は中国全体の60%以上を占めている。

―業績拡大、効率向上

多国籍企業の中国での経営状況をみると、売上高、利益総額などの財務指標、売上高利益率、1人当たり売上高などの経営効率指標はいずれも国内資本企業を上回り、成長が続いている。2019~2021年の間、一定規模以上の外資工業企業の売上高は23兆5,000億元から28兆9,000億元に増加し、利益総額は1兆5,000億元から2兆3,000億元に拡大している。

―一部外資企業の業務停止は環境変化に対応した調整

報告書はまた、多国籍企業の資金引き揚げや移転に関して言及している。近年、多国籍企業の資金引き揚げや移転の情報が頻繁に見られるようになり、外資撤退に関する議論を引き起こしていると指摘。しかし、中国の外資利用の実態と、複数の機関の中国における外資企業の投資調査によると、一部の外資企業が中国関連業務を停止したのは、主に市場の需要と競争環境の変化に適応して行った業務調整であり、正常な市場行為だとの認識を示した。その上で、中国に進出している外資系製造業の多くは依然として中国を主要な投資先と見なしているという。

実際、各機関が中国に進出している外資企業に対して実施した投資調査の結果を見ると、外資企業は引き続き中国への投資意欲を維持している。5月に中国国際貿易促進委員会が発表した『2022年第1四半期中国外資ビジネス環境調査研究報告』によると、2022年第1四半期、調査対象となった外資企業の約71%が中国での業務規模を維持。16.4%が業務規模を拡大し、72.1%が中国での投資増加率が5%を上回った。3月に中国の米国商工会議所が発表した調査報告によると、60%の企業が中国をグローバル投資計画の投資先トップ3の一つとし、66%の企業が2022年に中国での投資を増やす計画。また、83%の企業が製造や調達を中国から移転する計画はないとの結果が示された。このほか、華南米国商工会議所が発表した『2022年華南地域経済状況特別報告』によると、72%が今後3年間で中国での事業拡大を計画していると回答している。

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