人民元の対ドル相場、今年初めて7元台に下落

5月17日、人民元の対米ドルレートが、1ドル=7元台に下落した。7元台への下落は2022年12月以来で、今年に入ってからは初めて。足元の人民元安は、米ドル高の進行と中国国内の景気回復ペースの鈍化という国内外の要因が絡み合っているとみられている。


■年初来の人民元の動き
今年に入ってからの人民元対米ドル相場の動きをみると、1月に6.7元台に回復。その後はやや下落し、6.8~6.9元代での推移が続いていた。しかし5月5日以降、元安進行が加速。17日に再び7元台に下落している。
足元の人民元安の要因としては外部要因と内部要因が絡み合っている。外部要因は、米国の利下げ観測が後退し、米ドル高が進行していること。足元の米ドル指数は上昇し、米ドルは人民元に対しても上昇している。
内部要因は、国内の景気回復ペースが鈍っていること。直近4月の経済指標が弱い結果だったことで、景気回復の勢いが弱まっているとの見方から、金利引き下げの観測が再燃している。
貿易収支も人民元安の圧力になっていると指摘されている。海外旅行が再開され、海外への旅行者が増えていることでサービス貿易が赤字に転じた一方、財貿易は外需の弱さから貿易黒字が縮小しているためだ。
こうした中、米ドルの先高観(人民元の先安観)が再燃し、人民元と米ドルの金利差拡大が意識される流れ。貿易で獲得した外貨を人民元に交換せずに、米ドル預金に転換される動きが広がっていると指摘されている。
実際、中国人民銀行が発表したデータによると、第1四半期末時点の外貨預金残高は9,115億米ドルで、年初から576億米ドル増加している。

■過去の人民元相場、7元台に下落局面も6元台に回復
これまでも幾度か人民元の対ドル相場は7元まで下落したが、いずれも同じ年に6元台に回復している。中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は今年4月に開催されたフォーラムの席上、「過去5年、人民元の対米ドル相場は、3度7元まで下落した」と指摘。「一度目は2019年8月、二度目は2020年2月、三度目は昨年の9月。一度目と二度目は5カ月で、昨年は3か月で6元台に戻っており、これは市場の需給の結果である」と述べ、為替が市場需給に基づいて動いている点を強調している。
こうした点を踏まえ、今後の人民元の対米ドル相場については、「短期的には一段の元安が進む可能性があるものの、昨年の安値(1ドル=7.328元前後)を割り込む可能性は低い」というのが大方の見方。短期では米国の金融政策や米ドルの動向という外部環境の影響が大きくなりそうだが、中長期的に為替レートに大きく影響を与えるのは国内経済のファンダメンタルズ。それだけに今後の中国の景気回復動向が中長期の人民元相場を占ううえで大きなカギになるとみられている。

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