中国、一線都市「北上広深」の人口、2022年はいずれもマイナスに

中国では、2022年末時点の一線都市と呼ばれる北京、上海、広州、深圳の4都市の常住人口がいずれも前年末比でマイナスになった。このうち、深圳は市創設以来、初めてのマイナスで、北京、上海、広州、深圳の人口がそろってマイナスとなったのは初めて。これは、一線都市の人口増加がすでに臨界点に達していることを示すもの。中国全体の人口が減少に転じる中、各都市がどのような人材誘致策を打ち出すのか課題になっているといえる。


■深圳、市創設以来で初のマイナス
一線都市の人口減少で、特に注目を集めたのは広州と深圳。広州と深圳は、2010年代後半以降、人口の減少がみられた北京と上海と異なり、人口の増加が顕著だったためだ。
深圳市統計局によると、2022年末時点の深圳の常住人口は1,766万1,800人。2021年末の1,768万1,600万人から1万9,800人減少し、深圳市が創設された1979年以来で初めて減少した。同じく広東省の広州市も減少。2022年末の常住人口は1,873万4,100人で、前年末に比べて7万6,500人の減少となり、過去20年で初の減少だった。
北京と上海の2022年末の人口は、北京が4万3,000人の減少、上海が13万5,400人の減少。北京、上海、広州、深圳の4都市の人口減少数は合計で約27万5,000人に達した。


■過去20年の人口動態、北京と上海は2000年代、広州と深圳は2010年代に増加が顕著に
「一線都市」という概念は、不動産デベロッパーが最初に提起したものといわれている。1998年、中国は住宅制度改革を実施し、住宅の「商品化」が進んだ。それに伴い、都市化が急速に進み、一線都市への人口流入が加速した。
この20年余りの北京、上海、広州、深圳の人口動態をみると、2000年代と2010年代の2つに分けてみることができる。うち2000~10年までは北京、上海の黄金時代だった。2001年に北京五輪、2002年に上海万博の開催が決定。国際イベントの開催地である北京と上海は大規模な都市建設ブームが起こり、市区面積、都市範囲が拡大するとともに、外来人口の流入が加速した。
これにより、北京の常住人口は、2000年の1,363万6,000人から2010年に1,961万9,000人に、上海は同1,608万6,000人から2,302万7,000人に増加。10年間で600~700万人増えた計算になる。
しかし、2010年代に入ると、北京と上海では交通渋滞など大都市特有の問題が深刻化。2014年以降、北京と上海は相次いで都市機能を分散させるとともに、都市人口を抑制する政策を打ち出した。これにより、北京では2017年から常住人口の減少が続き、過去6年間で累計11万1,000人の減少となった。上海では、常住人口が2013年に2400万人を超えて以降、ほぼ横ばい。2015年、2017年に減少し、2022年は5年ぶりの減少となった。
一方で、広州と深圳は2010年以降の人口増加が顕著だった。2000~2010年の広州と深圳の人口増加数は約200~300万人で、北京、上海の半分にも満たなかった。しかし、2010~2020年は、600~700万人の増加で、北京、上海とは対照的な動きだった。


■2020年に入り広州、深圳も人口増に陰り
しかし、広州と深圳ともに2020年代に入り、人口増の勢いは鈍っている。広州の人口増加数は2020年の43万人から2021年に7万人に縮小。深圳の人口増加数も2020年の53万人から2021年は5万人未満に縮小。さらに、2022年は広州、深圳ともにマイナスに転じた。
広州と深圳の人口減は、コロナの影響が大きかったとみられている。外来人口が多い広州、深圳ではコロナ禍で企業の雇用需要が低下し、外来人口が帰郷。これにより、非戸籍人口が大幅に減少し、常住人口の減少につながった。
このため、コロナ規制が解除され経済活動が再び活発化している2022年には、広州、深圳の人口は再び増加する可能性が高いと予想されている。実際、今年に入ってから、深圳の地下鉄の1日の旅客輸送量は800万人を突破し、過去最高を更新。同様に、広州も地下鉄の利用客が急増している。


■一線都市への人口集中時代は曲がり角に
とはいえ、4大都市への過度に人口が集中する時代は曲がり角にきているのは事実だ。2022年の人口増加人数が多かったのは「二線都市」と呼ばれる都市が多い。人口増が最多だったのは長沙(18万1300人)。続いて、杭州(17万2,000人)、合肥(16万9,000人)、西安(12万2,900人)、武漢(9万100人)、鄭州(8万6,000人)、青島(8万5,400人)、済南(7万9,000人)、成都(7万6,000人)、寧波(7万4,000人)となっている。
二線都市の人口増の要因としてまず挙げられるのは、一線都市に比べた不動産価格の安さ。例えば、中古住宅の1平米当たり価格は、長沙が約1万元。対して、北京や深圳は6万元を超えるエリアが少なくない。
一方で、一線都市の平均給与は二線都市ほど高い水準とはいえない。智聯招聘が発表した第1四半期の最新データによると、一線都市の中で平均給与が最も高い上海(13,433元)は、武漢(9,998元)、成都(9,694元)に比べて約4割高い程度。不動産価格と給与を勘案して、二線都市を選択する人が増えている。
二線都市への産業移転が進み、就業機会が増えたことも、二線都市への人口流入を後押ししている。
2022年末時点の人口が61年ぶりに減少した中国。全体の人口が今後は大きな伸びが見込まれない中、各都市が人材誘致策を制定するにあたっては、人口の規模拡大だけでなく、質の向上も必要と指摘されている。

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