中国のNEV市場、22年は販売急増~23年は一段の競争激化で勢力図の変化に注目

2022年の中国の新エネルギー車(NEV)販売は大幅な伸びを示した。NEVの販売台数全体に占める割合は、20%を超え、「新エネルギー車産業発展計画(2021-2035年)」で打ち出した「2025年までにNEVの販売台数を自動車の新車販売台数の20%にする」との目標を前倒しで達成した。注目される23年のNEV市場については、販売の伸びこそ鈍化するものの拡大基調に変わりはないとみられている。ただ、群雄割拠するNEVメーカーの間では、競争が激化し、ブランド認知度が低いなど劣勢にある企業にとっては試練の年になるとみる向きもあり、勢力図の変化が注目されている。

■22年のNEV販売、自動車全体に占める割合の目標を前倒し達成

22年の中国のNEV小売販売台数は前年比90%増の567万4,000台に拡大。全国乗用車市場情報聯席会(乗聯会)によると、販売台数全体に占めるNEVの割合は27.6%と、21年の14.8%から大幅に上昇し、「新エネルギー車産業発展計画(2021-2035年)」で打ち出した「2025年までにNEVの販売台数を新車販売台数の20%にする」との目標を前倒しで達成した。

NEV小売販売台数販売全体に占めるNEVの割合
2020年110万9,000台8.8%
2021年298万9,000台14.8%
2022年567万4,000台27.6%

■海外輸出も加速

国内販売だけでなく、海外輸出も加速した。中国汽車工業協会によると、22年の自動車輸出台数は前年比54.4%増の311万1,000台と、300万台を突破。うち、NEV輸出台数は120%増の67万9,000台(うちNEV乗用車は61万5,000台)だった。NEV輸出を通年でみると、4月は上海のロックダウンの影響で前年同月比マイナスとなったが、それ以外の月はいずれも増加を記録した。

■企業別納車実績、目標達成は4社

企業別のNEV納車実績をみると、最大の納車台数は比亜迪(BYD)で、納車台数が186万を超え、目標を2割以上上回った。このほか、目標を達成したのは広州汽車傘下の広汽埃安新能源汽車(AION)、吉利汽車傘下の極氪(Zeeker)、新興メーカーの哪吒汽車(Neta)の4社だった。

一方、テスラは納車台数が131万台で、目標に対する進捗率は87.3%。また、昨年まで好調だった「蔚小理」と呼ばれる蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、理想汽車(Li Auto)の新興勢力はやや勢いを落とし、年間の累計納車台数は微増にとどまった

各社の22年納車台数と目標に対する進捗率は以下の通り。

◆BYD:納車台数186万8,000台(目標150万台に対して進捗率124.6%)

◆広汽埃安新能源汽車(AION):納車台数27万1,000台(目標25万台に対して進捗率108.4%)

◆極氪(Zeeker):納車台数7万2,000台(目標7万台に対して進捗率102.8%)

◆哪吒汽車(Neta):納車台数15万2,000台(目標15万台に対して進捗率101.4%)

◆問界(AITO):納車台数7万5,000台(目標8万台に対して進捗率93.8%)

◆テスラ:納車台数131万台(目標150万台に対して進捗率87.3%)

◆蔚来汽車(NIO):納車台数12万2,000台(目標15万台に対して進捗率81.3%)

◆理想汽車(Li Auto):納車台数13万3,000台(目標17万台に対して進捗率78.2%)

◆嵐図汽車(VOYAH):納車台数1万9,000台(目標3万1,000台に対して進捗率61.3%)

◆小鵬汽車(Xpeng Motors):納車台数12万1,000台(目標25万台に対して進捗率48.4%)

■23年の中国のNEV市場

22年に販売を急速に伸ばした中国のNEV市場。23年については、22年に比べて勢いは鈍るものの、拡大基調に変わりはないとみられている。23年のNEVの販売台数について乗聯会の崔東樹秘書長は、「850万台に拡大し、販売全体に占める割合は36%に達する」との予想を示している。

拡大基調が続くとの見方の根拠の一つは政策支援。国の補助金政策は22年末で廃止になったものの、上海市、浙江省、吉林省などの地方政府ベースでは、NEV補助金政策やNEV産業支援策を打ち出している。こうした地方政府の政策支援が販売を押し上げるとみられている。

企業動向に目を向けると、現状、中国のNEV市場は新興勢力に加え従来型自動車メーカーも参戦し多くの企業がひしめき合う状況。だが、23年は「二極化」が進むとの見方が出ている。23年に入ってから、テスラは大幅な値下げを実施し、BYDはハイエンド製品を投入。小鵬汽車、理想汽車などの新勢力は、製品ラインや戦略を大幅に調整し、市場競争が激化している。こうした中、国の補助金政策がなくなった23年のNEV市場では、生産の大規模化が進んでおらず、自社ブランドの認知度が低いメーカーにとっては試練の年になり、淘汰が進む可能性が指摘されている。

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