氷雪芸術が東西文明間の相互学習の「万華鏡」になる理由、彫刻の専門家に聞く
北京2022冬季オリンピックを迎え、いつもとは趣向が異なる氷の彫刻と雪像が冬季オリンピックのムードを高めている。中国の氷雪芸術は、起源、成熟、発展の過程で徐々に国外へと飛び出し、世界に影響を与えている。氷雪彫刻コンテスト、氷雪文化交流、氷雪観光や相互訪問などの活動において、それぞれにすぐれた氷雪芸術が東西文明間の相互学習の「万華鏡」になっている。
中新社「東西問」は先日、中華文化促進会氷雪文化芸術専門委員会高級創作員、黒龍江省当代芸術研究院彫刻院研究員の管洪亮氏にインタビューを行い、氷雪彫刻芸術の視点と海外コンテスト参加経験をもとに、中国氷雪芸術の世界展開の過程、中ロ氷雪彫刻芸術の違い、「冷たい氷」が東西文明交流の「熱いブーム」をつくる可能性を解説してもらった。
インタビューの概要は以下のとおり。
中新社記者:世界の主要な冬の祭典にはどういう特徴がありますか。ハルビン国際氷雪節にはどのような国際的な要素が含まれているのでしょうか。
管洪亮:地域や文化によってさまざま氷雪文化がありますが、世界の重立った冬の祭典は、世界的な氷雪文化の代表的なものです。日本のさっぽろ雪まつりのハイライトは、雪像の技術を競う「国際雪像コンテスト」ですし、カナダのケベック・ウィンター・カーニバルは、冬バージョンの「ディズニーカーニバル」のような10日間ですし、ノルウェーのホルメンコーレンスキーフェスティバルは毎年3月の第一土曜日に開催され、世界中のスキーヤーが集まります。
その中でも、ハルビン国際氷雪祭は世界最長の氷雪祭と言えるもので、開会式は開催されても閉会式はなく、5カ月間の長い氷雪シーズンをつくり出しています。ここ数年は、地方レベルのお祭りから、国レベル、国際レベルへとグレードアップしており、数十カ国・地域の数百人の海外ゲストが参加し、400以上の文化、観光、スポーツ、貿易などの冬季イベントにおいて国際交流協力が展開されています。
中新社記者:中国の氷雪芸術はどのように形成されたもので、また、どのように海外に発信され、世界に影響を与えているのでしょうか。
管洪亮:自然の氷雪が人文の芸術を形成するのには、まず恵まれた寒冷な気候と氷雪資源が必要です。中国の氷雪についての活動は北方を起源とし、古くから氷上釣り、氷雪スポーツ、氷灯づくりなどが受け継がれています。これは人と自然との調和のあらわれですし、北方人の楽観的な性格と生活の知恵のあらわれでもあります。
黒龍江は中国の氷雪芸術、近代氷雪観光産業の発祥の地とされていて、この地には優れた才能を持つ氷雪彫刻芸術家がたくさんいます。「氷城」ハルビンでは、1963年に兆麟公園で第1回氷灯遊園会が開催されています。それ以来、氷雪文化の蓄積、商業化が進み、氷の彫刻と雪像は規模、スタイル、照明などが飛躍的に進歩しました。1985年、ハルビン氷雪祭が全国向けに初めて開催されました。そして、1999年、ハルビン氷雪大世界が初めて開催され、氷雪芸術が世界へと発信を始めました。
1980年代以降、ハルビンの氷雪彫刻芸術家は、カナダ、アメリカ、韓国、日本など、海外で次々と交流や展示をするようになりました。吉林、新疆、北京、上海などでも氷雪のテーマパークが建設されています。海外の観光客が氷雪を見るために中国を訪れ、中国の氷雪彫刻芸術家もまた、氷雪の風景をつくるために海外に招待されるようになりました。
中新社記者:中国とロシアの氷雪彫刻芸術は、どのように互いに交流を図ったのでしょうか、互いにどのような違いがありますか。
管洪亮:中国とロシアの一部の地域は同じ中高緯度にあり、冬は寒さが厳しく、長くて、しかも雪が多いです。中ロ両国が友好的な隣国であることが良好な人的交流環境をつくり出しており、中ロ氷雪彫刻芸術分野の交流を親しくて打ち解けたものにさせています。
中ロの芸術家の彫刻技術は同じように優れていますが、比較するとちょっとした違いはあります。中国は大型のものが好まれ、彫刻技術でも細部にこだわり、工芸の美観を強調します。一方、ロシアのものは小型で、思想や抽象化に重点があります。冬には、中ロの地方政府が互いの芸術家をコンテストに招くことで、互いの作品を鑑賞し、お手本にし合い、高め合い、深い友好関係を築いています。
中国には既に氷雪彫刻の産業チェーンが形成され、豊富で多様な彫刻道具、専門的な体制があります。現在、ロシアにはまだ成熟した産業チェーンがないため、ロシア側の参加者の多くが自作の彫刻道具を使うか、中国でのコンテスト参加の際に購入しています。私たちも激励の気持ちで何回もプレゼントしています。以前は、中国とロシアのコンテスト参加者がお互いの作品集などをプレゼントし合っていたこともありました。
中新社記者:なぜ、それぞれにすぐれた氷雪芸術が東西文明間の相互学習の「万華鏡」になるのでしょうか。
管洪亮:氷雪は大自然からの贈物です。真っ白で透明なものですが、この贈物は受け取る人によって様々に形を変えます。人文、歴史、風俗、ファッションなどの要素によって美的空間をより拡張し、それぞれに優れた氷雪芸術をつくり出しています。したがって、それぞれの国の氷雪芸術は、人類文明の「万華鏡」のようなものになるわけです。
芸術家は、氷雪彫刻を通じて、自国や民族の文化を展示できます。例えば、2017年の第31回中国ハルビン国際氷彫刻コンテストの受賞作品「蓮池月色」は、私がデザインを構想し、氷雪彫刻芸術家の蘇適とともに完成させました。蓮池、蓮の花、月、泳ぐ魚、縁台などのイメージを氷の彫刻で表現し、美しい東洋の魅力を表現しました。
文化の違いもあって、私たちは、初めは外国の作品を鑑賞しても理解ができないかもしれませんが、交流、学習を通じて、そこから東西文明の違いと魅力を知ることができます。これも氷雪芸術のすばらしいところです。例えば、2018年中国ハルビン国際雪像コンテストの受賞作品「海之霊」は、蘇適がアイデアを構想し、蘇適、管大江、于春風、私で完成させたものです。海の神話で古典の美女のイメージを伝え、東西文化を結びつけました。
中新社記者:「冷たい氷」が東西文明交流の「熱いブーム」つくるには、どうすればいいのでしょうか。
管洪亮:中華文化促進会の目的は「中華文化を発揚し、国際交流を促進する」ことです。氷雪文化芸術専門委員会はその支部として、中国氷雪業界のレベルを向上させ、国際交流協力の拡大に取り組んでいます。ですから、「冷たい雪」を東西文明交流の「熱いブーム」にすることは、私たちの義務と使命です。
このことについて、提案が3つあります。第一に、氷雪の情緒的側面についてです。例えば、氷雪彫刻芸術の国際組織を設立し、定期的に交流や相互訪問活動を行うなど、我々は氷雪を情緒的つながりとして結びつけて、組織活動の中で各国の友人の気持ちを高めることが大事です。第二に、氷雪の精神的側面についてです。闘争心を共鳴させ、「友情・連帯、フェアプレー、相互理解」というオリンピック精神のように、共通の自然条件、競技目標に協力して挑戦すべきです。第三に、氷雪の経済的側面についてです。氷雪芸術、氷雪スポーツ、氷雪観光などの分野へと広がる氷雪経済は、各国が協力し合い、ウィンウィンとなれるよい方法です。
中新社記者:今冬はどんな作品をつくりますか。氷雪芸術に、北京2022冬季オリンピックのムードをどのように投影させますか。
管洪亮:待ちに待った北京冬季オリンピックが開催されています。氷雪彫刻芸術家として、芸術によってオリンピックを支援するという熱意も責任もあり、ビン・ドゥンドゥンとシュエ・ロンロンの氷雪彫刻作品を制作しました。また、ハルビン氷雪大世界では、「五環迷宮」、「冬夢飛揚」などの氷雪彫刻風景などを手がけました。
これらの作品は、美しい冬景色や都市での冬季オリンピックのムードづくりだけでなく、人々から広く愛され、氷雪への関心を高め、「氷雪スポーツ参加3億人」の目標の実現に貢献しています。同時に、北京冬季オリンピックによって、世界の多くの国々の人々が氷雪スポーツや氷雪芸術鑑賞に注目しており、氷雪彫刻には広い国際舞台が与えられています。北京冬季オリンピックは氷雪芸術にチャンスとモチベーションをもたらし、氷雪芸術は北京冬季オリンピックのムードと魅力を高めています。(翻訳:李年古)
管洪亮
黒龍江省ハルビン市出身。現在、中華文化促進会氷雪文化芸術専門委員会高級創作員、黒龍江省現代芸術研究院彫刻院研究員。黒龍江省美術家協会氷雪彫刻芸術委員会会員、ハルビン国際氷雪彫刻コンテスト専門家審査員メンバー。ハルビン国際氷雪祭に30年以上にわたり参加、中国国内外の氷雪彫刻コンテストに15回参加。受賞歴は、国内コンテストで3回、国際コンテストで7回。雪像の作品「踏浪」は、2020年のロシア国際雪像コンテストで最優秀賞受賞。