中国語教育はどのように中華文化の海外伝播の橋渡しを構築するのか
中国は豊富な華僑事務資源を持ち、6000万人以上の華僑華人が世界約200カ国・地域に分布している。中国語教育は海外華人社会の「希望プロジェクト」「根下ろしプロジェクト」と「民心プロジェクト」であり、海外華僑華人が中国言語文化を伝承し、中外の民心の相互疎通、文明交流の相互参照を促進する上で重要な意義を持っている。
湖南師範大学国際中国語文化学院の沈敏副院長はこのほど、中国新聞社の「東西問」の特別取材に応じた際に、「中華文化の『海外進出』を推進し、中国文化のソフトパワーを育成し、明らかにする。中国語教育は天然のプラットフォームである」と述べた。中国語教育が中国語と中国文化の世界進出を推進する過程でより効果を発揮するためには、伝承と伝播、事業と産業の関係をうまく処理しなければならないとの考えを示した。
ここで、インタビューの実録を以下のように要約する:
中新社:
海外における中国語教育は初期から現在まで、どのような段階を経てきたのだろうか。現在、どのような新しい変化、新しい特徴が現れていますか。
沈敏:
海水のあるところには華人がいて、華人のいるところには中国語教育があります。海外における中国語教育の段階区分は、第二次世界大戦を分岐点とする見方が一般的である。第二次世界大戦以前の海外の中国語教育は「華僑教育」あるいは「僑民教育」と呼ばれ、中国国民教育の海外における延長であった。第二次世界大戦の勃発後、多くの国で中国語教育が停滞した。第二次世界大戦以降、植民地国家の独立と中華人民共和国の華僑華人に対する政策調整に伴い、華僑の多くは所在国の国籍に加入し、中国語教育は急速に回復し、所在国の教育体系の一部となり、その性質は日増しに複雑で多元化している。
国際政治と国家民族主義などの影響を受けて、20世紀50、60年代、中国語教育は長い衰退期に陥り、中国語学校は一部の国ではほぼ消えた状態になってきた。多くの国の中国語教育は、第一言語の教育形態から第二言語の教育形態へと変化している。
二十世紀80、90年代、海外における中国語教育は復興し、中国の国際的地位の向上とともに急速に発展してきた。現在、海外の中国語学校は2万校以上ある。2014年、第3回世界中国語教育大会は「中国語教育のモデルチェンジとグレードアップを推進し、中国語教育の標準化、正規化、専門化への邁進を促進する」という共通認識に達し、海外中国語教育は「三化(標準化、正規化、専門化)」を主な発展特徴とする「モデルチェンジとグレードアップ」の新たな段階に入った。
現在、中国語教師の証明書基準、中国語レベルテスト、海外全日制中国語学校の運営基準などが相次いで発表され、現地出身の中国語教師の学歴化、専門化の程度が明らかに向上し、海外の中国語学校の運営条件が持続的に改善され、「通用」と「ネイティブ」を結合した教材体系が次第に形成されている。「一帯一路」建設の推進に伴い、海外の中国語教育における「中国語+」の理念も実践され、中国語に精通し、職業技能も身につけた人材の需要がますます旺盛になっている。
中新社:
ますます多くの海外の人々が中国を知りたいと希望し、中国語を学び始めたのです。「中国語ブーム」は中国語教育の展開にどのような積極的な役割を果たしているのでしょうか。
沈敏:
ますます多くの海外の人々が、中国語を身につけることは中国の発展の高速道路にもっと良く追いつくことができ、より良い未来を持つことを意味すると認識している。「中国語ブーム」が海外における中国語教育の発展に果たす役割は顕著である。
第一に、海外華人の世界における「言葉への自信」と「文化への自信」を高める。原籍国の言語がより多くの人に学習され、原籍国の文化が一層注目されるようになると、海外華人社会の中国語と中国文化に対する自信も高まり、華人の民族的アイデンティティ、文化的アイデンティティも高まるだろう。
第二に、海外の中国系が中国語を学ぶ動機を強化し、中国語教育の内生的原動力を高める。身近な主流社会の人々や親しい人々が中国語の勉強に励み、さらに中国語の勉強が主流社会の学習者により多くの実用的価値と素晴らしい生活をもたらしてきた時、中国系の学習動機はむしろ「勉強させる」から「勉強したい」に転換しやすい。
第三に、中国語教育が所在国のより多くの政策支持を獲得し、より良い発展環境を獲得し、中国系の人々の中国語学習をより便利にし、より多様な選択を可能にする。
中新社:
海外での中国語教育は実施過程において、どのような困難とネックに直面しているのだろうか。どうやって打開を求めるのか。
沈敏:
二十一世紀に入り、特に「一帯一路」の構想が実施されて以来、海外における中国語教育の発展はかつてのない歴史的チャンスの時期を迎えているが、発展の過程では依然として多くの問題に直面している。
多くの国では中国語教育の断絶された期間が長かったり、理念、経済、教育発展レベルなどの条件に制約されたりするため、中国語教育の「三化」(標準化、正規化、専門化)の建設は任重く道遠しだ。標準化を例にとると、東南アジア諸国ではシンガポール、マレーシアを除いて、その他の国の中国語カリキュラム標準、中国語教育要綱などの業界標準が不足していて、教育の質と教育の効率を保証することができない。
中国語教育の「三教」(教師、教材、教育法)の問題もうまく解決されていない。中国語教師の人数と全体的な素質はある程度充実し、改善され、学歴化、職業化の程度は明らかに向上したが、「量」と「質」はいずれもなお大きな向上の余地がある。各国が自主的に中国語教師を養成する能力はまだ強化されていない。
海外における中国語教育の形態は多様化で、第一言語教育に近いものもあれば、第二言語教育に近いものもあり、その中間に位置するものも少なくない。国と地域によって、学校の運営形態、管理モデル、カリキュラムの設置、学生の学習動機は大きく異なっている。現在、異なる教育の性質と形態における中国系学習の特徴に対する調査研究が不十分で、学習状況の把握も不十分であり、中国語教育の「精確な施策」に影響を与えている。
海外の中国語学習者の「低年齢化」傾向も非常に明らかであるが、現在の中国語教育研究及び教育理論の構築にはまだ低年齢学習者の中国語学習に関心を持つことが少ない。
これらの問題に直面して、次のいくつかの方面から考えることができる。第一に、分類指導だ。海外中国語教育の多様性の実情に基づき、その地域や国ごとの中国語教育の標準及び異なる教育の性質、運営形式の中国語教育標準を制定し、標準を用いて中国語教育の質の向上をリードすることである。
第二に、多くの措置を講じ、現地出身の中国語教師陣の育成を強力に推進することだ。「中国留学」と「現地での育成」の二兎を追うことを堅持し、各国が自主的に中国語教師を育成する能力をどのように高めるかを考えなければならない。
第三に、問題志向の中国語教育の調査研究を強化する。例えば、中国系と非中国系の中国語学習の特徴の比較研究、「低年齢化」を背景とした中国語教育のモデルと方法の実証研究などである。これらの「地味」な研究は、新しい時期の海外中国語教育活動の的確な施策に役立つ。
第四に、中国語教育の関心を高め、広げることである。中国語の伝承は学校教育に限らず、家庭、華人コミュニティ、中国語メディア、言語景観、文化活動などと結びつける必要がある。
中新社:
中華民族の偉大な復興を実現するには、ソフトパワーを含む全体的な向上が必要である。中華文化の世界進出を推進するために、中国語教育はどのように独自の役割を発揮しますか。
沈敏:
中国の物語をよく話し、中国の声をよく伝えるために、中国語教育は天然のプラットフォームとなる。中華文化の「海外進出」を推進し、中国文化のソフトパワーを育成、展示するためにも、中国語教育は天然のプラットフォームとなる。
中国語教育が中国語と中国文化の世界進出を推進する過程でよりよい効果を発揮するためには、次の2つの関係をうまく処理しなければならない。
一つは、伝承と伝播の関係である。伝承は集団内の世代間で発生し、縦方向のものである。伝播は集団の間で発生し、横断的に行われる。中国語教育は伝承と伝播を互いに効果的に作用し合うようにしなければならない。ここ十数年、中国語学校に入学する非中国系の学生がますます増えていることは、中国語教育が世代間の伝承から横方向の伝播へと拡大してきた喜ばしい変化である。中国語教育は世代間の伝承をしっかりと行うとともに、横方向の伝播を拡大してこそ、主流社会に溶け込み、波及することができる。
二つ目は、事業と産業の関係である。中国語教育は華人社会の「根下ろし」事業である。が、その範囲と影響を拡大し、内在的な発展動力を強化すれば、条件のある地域、適切な学校で産業化を試みることができる。中国語教育の主要な目標を失わない限り、産業形態の中国語教育は経済的、実用的な機能を発揮することもでき、人文交流と文化伝達の機能も発揮することができる。事業と産業が連動することは、中国語教育自身の発展と中国語、中国文化の世界への進出にさらに有利である。(翻訳:華僑大学外国語学院 姚文清 王 静)