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斉白石がダ・ヴィンチに出会ったとしたら、中国の写意彫刻はどのように輝くのか

――中国・美術館館長、著名彫刻家の呉為山氏にインタビュー 2017年、「孔子」のブロンズ像は正式にブラジルのクリチバ市の「中国広場」に「設置」された。2019年には彫刻『時空を超えた対話-――ダ・ヴィンチと斉白石』がイタリア芸術研究院で除幕、2021年、彫刻「神遇――孔子とソクラテスの対話」はギリシャ・アテネの古市跡に、彫刻「隠元禅師像」は日本の長崎・興福寺に永久安置された…  現在、中国美術館の館長、中国美術家協会の副主席を務める著名な彫刻家の呉為山氏は、この30年間で600以上の彫像を制作し、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ギリシャ、シンガポール、日本、韓国、デンマーク、ベルギーなどの国々で彼の作品が建てられている。いかに彫刻芸術と中華の美学精神を融合させ、世界に中華の「美」を伝えるか。呉為山氏はこのほど、中国新聞社の「東西問」の独占インタビューに応じた。 ここにインタビューの実録の要約を以下に示す: 中国新聞社記者:世界各地にあなたの彫刻作品があります。東西文化交流の観点から言えば、「ダ・ヴィンチと斉白石」、「孔子とソクラテス」が最も代表的です。この2組の彫刻作品はどのようなもので、何を伝えようとしているのでしょうか。 呉為山:彫刻『時空を超えた対話――ダ・ヴィンチと斉白石』のインスピレーションは、10数年前にイタリアのベネチアを訪れ、霧雨の中で船に乗っていた時、時空を超えた東西文化の代表者が人類文明の長い河の中で一緒に船に乗っているというアイデアが浮かんだとがきっかけで生まれました。この作品は、ヨーロッパ・ルネサンスの巨匠ダ・ヴィンチと近現代中国画の巨匠斉白石の「出会い」を表現している。ダ・ヴィンチの写実と斉白石の写意は、それぞれ西洋と東洋の美的追求を表しており、中伊両国の時空を超えた文化芸術交流を意味しています。  彫刻ダ・ヴィンチの長い髪は滝のようで、指は空のようで、科学と理性への敬意を表現しています。斉白石は顔がやつれ、手が節杖をつき、控え目で自然体ですが、その杖は9万里を揺れ動く勢いがある。私の目には、杖は天と地を結ぶ1本の線であり、中国文化の宇宙観や芸術観を象徴し、東と西を結ぶシルクロードのように映る。ダ・ヴィンチと斉白石が生きた年代は数百年離れており、彼らの「対話」は時空を超えた交流です。  彫刻『神遇――孔子とソクラテスの対話』がギリシャ・アテネの古市に建てられた。ソクラテスは孔子と肩を並べて、堂々と意気軒昂と雄弁に語っている様子である。一方、孔子は温厚で、春の光を浴び、交手磬折の礼(古代中国の礼儀作法の一つ、へりくだって尊敬の意を表す。――訳者注)をしています。  ギリシャの文学巨匠・カザンツァキスの名言に、「ソクラテスと孔子は人間の二つの仮面であり、その下には人間の理性という同じ顔がある」という言葉がある。2体の彫像は東西文明発祥の地である古い国、中国とギリシャ間の偉大な思想の対話が春の風雨に似ていることを示しており、東西文化の交流・融合が新たな段階、新たなモデルに入ったことを象徴しています。 中国新聞社記者:秦の兵馬俑や敦煌・莫高窟などを代表とする中国の彫刻と、ダビデやビーナスを代表とする西洋の彫刻との類似点と相違点をどのように考えていますか。また、どのような文化的、芸術的差異を現わしているのでしょうか。 呉為山:原始期、中国の紅山、磁山文化などはすべて高度な写意性を体現して、この写意は生命の自然状態に対する直感的な表現;先秦三代期、商周の青銅器と四川広漢の三星堆青銅雕刻を代表とする写意は、東方式神秘主義の色彩の魅惑と抽象性に満ちあふれています;漢代の雕刻イメージは中国古代雕刻の中で最も強烈で鮮明な芸術言語を代表し、西洋の写実的な雕刻体系と呼応するもう一つの審美体系、創作体系と価値体系です。  漢代に仏教が中国に伝わり、石像を彫ることが重要な芸術となりました。当時の仏教芸術はインドのガンダーラ芸術の影響を受け、ガンダーラ芸術はギリシャ芸術の影響を受けていました。仏教と中国文化の融合の過程で、中国の仏教芸術は次第に中国らしい様相を呈してきました。例えば、敦煌の壁画の中の飛天、龍門、雲岡石窟の中の菩薩、天王、力士の造像などは、形式、イメージ、題材、表現手法を問わず、文明の交わりを十分に現わしています。  全体的に言えば、東洋芸術はイメージ性、写意性を持っており、それは「意」を出発点として芸術イメージを形成する。西洋芸術、特に西洋古典芸術は明らかな理性的特質と科学的態度を持っている。例えば、ダビデの彫刻は、ミケランジェロがダビデを石から解放しようとしているような感じで、人文主義的な意識の強さが作品によく表れています。  中国の彫刻の発展を振り返ると、その精神的な内包は政治、宗教、哲学の影響を受け、その造形は絵画の影響を受け、そして、イメージ、抽象、写意、写実の諸方面で道、慧、美を示し、西洋の伝統と全く異なる独特な価値を持っています。私たちは中国の雕刻が博物館、石窟、墓道だけに存在していることに満足することはできません。現在と未来に影響を与える絶倫の極意、超越の意志、高尚な領域として抽出しなければなりません。これは中華独特の趣を保ち、民族の伝統を発揚するだけでなく、人類の文化生態の多様な発展を促進するためでもあります。 中国新聞社記者:写意は中国人の伝統的な美的感覚であり、彫刻はこれまで写実的で有名だったが、両者はどうすればこの二つが融合して素晴らしい芸術を生み出すことができるのだろうか。中西文化の精神を、どのように作品づくりに取り入れ、活かしていますか。 呉為山:私の家族は文化的な雰囲気が強くて、目で見て、耳で聞いて、影響を受けてきました。わたしの祖先に詩文、書道を研究する優れた学者がいて、私は小さい時から書道と縁があり、大人になってからも書道と雕刻を類推して、共通点を見つけて互いにも融和させてきました。書道は文字をもとにして、それ自体が抽象的な絵画であり、彫刻が外にイメージを持ち、内に構造を持つように、文字が具象から抽象へと発展していくものです。  グローバル化の時代背景の下で、中国の美術家は支点を見つけてこそ、世界の芸術史の図の中で文化的座標を立てることができます。私は中華の美学精神、中国の伝統的な彫刻芸術を研究した上で、写意彫刻の概念を提唱し、長年にわたり写意彫刻を創作、伝播、提唱してきました。写意雕刻の「意」は、中華文化の「意」であり、形によって「神」を書き、形と神を兼ね備えています。写意彫刻も西洋写実主義の精華を吸収し、20世紀以来の西洋視覚芸術革命の中で確立された芸術の新しい様式を参考にしています。古今東西を融和し、芸術ジャンルの壁を打ち破ることを意図しており、世界に進出するだけでなく、世界と対話する開放的かつ内包的な文化概念です。 中国新聞社記者:孔子、老子、李白から費孝通、季羨林、楊振寧などまで、「中華歴史文化有名人」シリーズの彫刻の探求に力を注いでいる。中国の歴史的文化的著名人を彫刻刀で生み出すことは、中国文化の「海外進出」をどのように後押ししているのでしょうか。 呉為山:1995年に私は費孝通先生のために1体の頭像を作りました。費先生は私に一幅の題字を書いてくださいました。「その精神を得ることはその容貌を得ることに勝る」と。「彫刻というものはね、精神を捕まえるんだ」と教えてくださり、これは私に大きな啓示を与え、目に見えない、本に書かれ、口承で伝えられてきた民族の歴史を目に見えるイメージで示し、一つ一つの彫刻が時代の精神を反映できるようにするという理想を確固たるものにしてくださいました。  実際、孔子や老子がどのような顔をしているかについては、これまで実際の画像や文献資料は発見されておらず、伝えられている画像も後世の人々の想像にすぎません。これらの聖哲像制作のための最良の方法は「精神」から手をつけることです。「精神」とは、世代の精神的な姿を指す。孔子、蘇東坡、魯迅はすべて私たちのこの時代の知識人と異なる特徴があって、これは時代の精神が具体的な個人の上に反映されたものです。文化的伝統の中から彼らの「神」を見つけることは、近道であると同時に必要な道でもあります。しかし、中国の精神は単純に長袍や馬褂(長袍や馬褂は清末・民国初期によく着用された男性の私服である。――訳者注)のような彫刻を作るのではなく、彫刻者自身が伝統文化の教養を身につけなければならない。心の奥底からの文化的な自信こそが、より民族的で個性的で風采のある芸術を創造することができます。  中国文化の「海外進出」には、芸術の具体的な形式と文化の媒体を通じて伝播し、世界に中国文化を伝播する効果的なルートを模索しなければなりません。2018年、中国美術館はBRICS諸国美術館連盟、シルクロード国際美術館連盟を相次いで設立し、メカニズムの面から文化交流の確保に努めています。  同時に、中国文化の「海外進出」は伝統文化だけに限られてはならず、時代との同期を堅持し、文化上の革新がなければなりません。古典の評定作業をしっかりと行い、中国の5千年以上の歴史を真に代表する古典を選出しなければなりません。「中国の精神、中国の気風、時代の風格、国際的視野」という文字は、今の芸術関係者が創作上求めていることに合致しています。 中国新聞社:「美」を伝えるという観点から、東洋文明と西洋文明の交流をどのように見ていますか。 呉為山:感情の融和、思想の相互作用、価値の共感、すべて文化交流が必要で、文化交流の本質は心と心の交流です。「美」で世界に中国の声を伝え、相互尊重の中で対話方式で中国文化の「海外進出」を中国文化に「来てもらう」ようにし、その独特な価値を世界に共有し、運命共同体を構築する過程で中国文化の影響力を生成しなければなりません。  新型コロナウイルスによる肺炎の流行期間中、中国美術館は世界の多くの博物館や美術館にお見舞いのメッセージを送ったが、返ってきた返事も同様に温かったです。この世界的な感染症の中で、すべての人が一葉の小舟に身を寄せ、互いに理解し、協力し合う義務があることを、皆は申し合わせたように認識しています。  文明間の対話は、さまざまな視聴者の文化的伝統、価値観の方向性、異なる聴衆の受容心理を深く研究し、地域に応じて適切に対応し、他力本願で適切に対応しなければなりません。これは双方向の価値観の交流であり、人類文明の進歩と世界の平和的発展を推進する重要な原動力でもあります。私は文化交流の本質は、1つの顔、1つの心、1つの魂にあると思います。1つの顔とは、民族、国家の文化的特徴をいう;一つの心は、お互いに素直で真摯で温厚な心;一つの魂は、共に世界平和を大切にし、守る魂です。私たちが顔を突き合わせ、心を一つにすれば、魂が寄り添い、脈がつながり、人類運命共同体を構築する過程の中で互いに助け合い、手を携えて前進することができます。(完) プロフィール  呉為山は、全国政治協商会議常務委員、中国美術館館長、国際的に有名な彫刻家、フランス芸術院通信院士。文系二級教授、清華大学、南京大学、中国芸術研究院博士課程指導教官、北京大学-中国美術館ポストドクター科学研究ワークステーション主任指導教官であり、国務院(日本の内閣に相当。――訳者注)の政府特殊手当を受けている。「写意彫刻論」の生みの親で、10冊以上の専門書を出版し、多くの言語に翻訳されている。600点近くの作品を創作し、世界の多くの国々の博物館や広場に展示されている。彫刻の個展は中国国家博物館、国連本部、イタリア国立博物館、英国王立美術院、フランス、日本、韓国など国内外の重要な博物館、美術館を巡回・展示されてきた。南京博物院に「呉為山彫刻館」、韓国に「呉為山彫刻公園」が設置されている。 (翻訳:華僑大学外国語学院 胡連成)