吉利が空飛ぶ車の今年初の飛行試験~新たなモビリティとしての空飛ぶ車

吉利科技集団は2月5日、傘下の空飛ぶ車メーカー沃飛長空が、今年初めて空飛ぶ車の飛行試験を実施したと明らかにした。飛行したのは「AE200 X01」で、空飛ぶ車のテスト飛行・検証作業が新たな段階に入った。都市部の交通渋滞が深刻化し、「空の道路」の開拓が重要な課題になっている状況下、空飛ぶ車はモビリティ分野の変革を促すものになると期待が寄せられている。ただ、技術や法規制の整備など乗り越えなければならない課題は少なくない。

■空飛ぶ車、中国の開発状況
中国では近年、空飛ぶ車に関する政策が打ち出されている。交通運輸部が発表した『交通分野科学技術イノベーション中長期発展計画綱要(2021−2035年)』では、新型輸送手段の研究開発を推進すると言及。これには空飛ぶ車の研究開発、航空機と自動車の融合推進、飛行と地上走行の自由な切り替え技術開発などが含まれている。
中国では空飛ぶ車の研究開発が急速に進んでいる。2022年11月、中国工程院院士・項昌楽氏のチームが開発した2人乗りスマート分割型空飛ぶ車プロジェクトの試作車が公開された。この試作車は自主垂直離着陸機、スマート操縦座席、自動運転用シャシーという3つの独立モジュールで構成され、人・モノを輸送することが可能だ。

■空飛ぶ自動車事業への参入企業
次世代モビリティとして注目される空飛ぶ車。空飛ぶ車事業に参入する企業は着実に増えている。世界の空飛ぶ車メーカー数は現時点で160社を超えるとされ、主に米国や欧州地域に集中している。航空機メーカー、自動車メーカー、テクノロジー企業などが主に開発しており、エアバス(Airbus)、ボーイング子会社のAurora Flight Sciences、吉利汽車、小鵬汽車、億航智能、アストンマーティン、テンセント、Uberなどが参入している。
このうち、中国で他社に先駆けて空飛ぶ自動車事業に参入したのは吉利。吉利控股集団の李書福董事長はかつて、2019年に初の空飛ぶ自動車を発売し、2023年には世界初の垂直離着陸空飛ぶ自動車を発売すると表明していた。
冒頭の今年初の空飛ぶ自動車の飛行を実施した沃飛長空は吉利科技集団に属し、ドローンや空飛ぶ自動車を開発。「傲勢(AOSSCI)」と「太力(Terrafugia)」の2ブランドを展開している。2022年12月に「AE200 X01」が完成し、ラインオフした。
吉利のような従来型自動車メーカーだけでなく、新興企業も参入。その一つが億航智能(イーハン)だ。億航智能は2014年設立。広州市を本拠地とし、ドローンや空飛ぶ車を開発している。直近では2022年12月、山東省青島市西海岸新区と戦略的提携を締結。戦略提携には、すでに確定している1000万ドルの出資に加え、将来的に1000万ドルを追加投資する可能性が盛り込まれた。
億航智能は今回の戦略提携を通じて、青島市で空飛ぶ車業務を推進し、都市航空交通産業を後押し。青島市はこれにより、世界レベルの都市航空交通モデル応用試行都市になることを目指している。
新興自動車メーカーの小鵬汽車(Xpeng Motors)も参入している。同社傘下で空飛ぶ車を開発する小鵬匯天(XPENG AEROHT)は2022年10月、ドバイで初の飛行を実施。同社にとって海外で初の公開飛行となった。飛行したモデルは「旅航者X2(X2)」で、ドバイ当局から飛行許可を取得し、現地での公開飛行・展示となった。小鵬汽車の何小鵬董事長は、「2024年に空飛ぶ自動車の量産化を目指しており、価格は100万元以内に抑える」と意気込んでいる。
X2は小鵬匯天が独自に開発・製造した第5世代の空飛ぶ車で、密閉型のコックピットを採用。全機体に炭素繊維構造を採用し、2人乗りという構造だ。都市内の短距離移動の需要を満たすと同時に、野外での救助や医療輸送などにも応用することができる。
このほか、中国企業では、テンセントがドイツの航空スタートアップLiliumに出資している。


都市部では道路の交通渋滞が深刻化する中、空飛ぶ車などのエア・モビリティは陸空一体の立体交通を実現させるもの。都市部の交通渋滞を緩和させる手段として期待されている。ただ、安全性を含めた技術的な問題や、従来にない分野だけに法規制の制定など乗り越える課題は多い。新たなモビリティ分野として空飛ぶ車の普及が進むのか、そして中国が空飛ぶ車の開発でリードする存在になるのか、注目される。

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