BYD、ハイエンド市場開拓で裾野拡大~100万元クラスのEV発表
中国の比亜迪(BYD)は1月5日、新エネルギー車(NEV)高級ブランド「仰望」について、2車種を発表した。価格帯が100万元クラスのハイエンド車種。2022年はNEV販売台数でテスラを抜いて世界トップに躍り出たBYD。23年は「仰望」のほか複数のブランドで新車を発売し、購買層の裾野を広げる計画で、年間販売台数は350万台を突破するとの予想が出ている。販売拡大に伴うスケールメリットが一段と発揮され、収益性の改善にも期待が寄せられている。
■「仰望」の2車種を披露
発表会では、「仰望」の2種類のモデル「U8」と「U9」が披露された。「U8」は初の量産モデルで、100万元クラスの硬派なオフロード車に位置づけられ、全長5メートル以上、全幅2メートル以上という大きさだ。「U9」は100万元クラスのEVスーパーカーという位置づけとなっている。
「U8」と「U9」に標準搭載されている技術プラットフォームは「易四方」と呼ばれるもの。独立した4つのモーター駆動の四輪駆動で、優れた安全性と性能を発揮できる技術を採用している。
BYDの王伝福会長兼総裁は、「仰望」ブランドについて「今後はBYDグループのトップ技術を率先して応用していく」との方針を表明。ユーザーに究極の安全性、性能、体験を提供すると述べている。
■多角化する市場のニーズに対応
NEVメーカーは足元で22年の年間販売実績を相次いで発表している。BYDは、22年の自動車販売台数が前年比152.4%増の186万8,500台。うち、NEV乗用車は前年同期比212.82%増の185万7,400台(EVが91万1,100台、プラグインハイブリッドが94万6,200台)に拡大している。販売数はテスラの130万台を上回り、世界のトップに立った。
競合するテスラとBYD。両社の戦略の相違の一つに、製品構成がある。単一車種に依存するテスラに対し、BYDはより多岐にわたる製品を打ち出している。テスラは2016年に「モデル3」、2019年に「モデルY」の2大EVモデルを発売して以来、長らく新モデルを投入していない。これに対し、BYDは今回発表した「仰望」の高級ブランドのほか、「海洋」、「王朝」、「騰勢」といったブランドを有し、23年には「海洋」シリーズの「海狮」(アシカ)と「海鸥」(カモメ)の2車種のほか、「騰勢INCEPTION」などの新車種を投入する計画。ミドル・ローエンドからハイエンドまでほぼすべての消費者をカバーする。
少ないモデルに依存するテスラは、大量生産に適し、生産コストを抑えやすいため、自転車事業の粗利益率を高めることは可能だ。しかし、「スマート化」の時代に入り、市場のニーズが多様化し、単一車種で多角的な消費者の製品需要を満たすのは難しくなっている。
■収益性の向上にも注力
一方のBYD。製品供給の拡大や市場開拓だけでなく、シェアの上昇に伴い、粗利益の向上にも注力している。NEVに対する補助金が打ち切られる22年末、BYDは、「王朝」、「海洋」、「騰勢」ブランドの価格引き上げを発表した。引き上げ幅は2,000~6,000元。補助金打ち切りのマイナス影響が最も大きいとされているのが、10万元から15万元の価格帯の車種だけに、BYDは値上げで、収益性の悪化を食い止める戦略に打って出た格好だ。
2022年4月にガソリン車の生産を中止し、NEVへの全面的なモデルチェンジを発表して以来、BYDは中国のNEV販売でトップを維持。23年については、足元の値上げにもかかわらず、全体の販売台数は350万台を突破するとの予想が出ている。販売拡大に伴うスケールメリットの一段の向上で生産コストなどの費用が低下し、収益性の向上も見込まれている。BYDが23年も快進撃を続けることができるのか、注目される。