韓国人の「魯迅受容」、読んでいて身につまされる場合も―国際魯迅研究会会長が語る
魯迅と言えば、中国現代文学を代表する作家として、日本でも有名だ。韓国でも事情は同様という。韓国の中国研究者で国際魯迅学会の会長も務める韓国外国語大学の朴宰雨(パク・ジェビ)教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて韓国社会および自らの魯迅作品の受け止め方を語った。以下は朴教授/の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■私が若かった時代も今も、魯迅作品には韓国人に訴えかけるものがある
私がソウル大学の中国語中国文学科に入学したのは、1970年代初頭だった。当時の韓国は「維新体制」と称していたが、実際には軍人による独裁だった。社会における矛盾や腐敗問題は、極めて深刻だった。わたしはそういう状況の中で魯迅作品に出会った。1920年代から30年代における中国の「精神戦士」という魯迅のイメージに、私は感動した。
韓国の大学入試では、論述能力も試される。その論述の試験では、世界の代表的な文学作品を読み、理解していることが求められる。中国現代文学については魯迅の「阿Q正伝」と「故郷」を理解していることが必要だ。
韓国の高校の国語教科書は「阿Q正伝」と「故郷」を何度も取り上げてきた。そのため韓国の高校生は今も、「阿Q正伝」と「故郷」を知っている。「精神勝利法」も知っている。
「精神勝利法」とは「阿Q正伝」の主人公である阿Qの方法だ。阿Qは働き者として認められていたが、家も金もなく、つきあってくれる女もいなかった。字も読めず、容姿も不細工だった。周囲の人から馬鹿にされる村の最下層だった男だ。阿Qは周囲から馬鹿にされたり、日雇いの仲間とのけんかに負けた時、心の中で現実を都合よくすり替えて自分が勝利したと思い込むことで、人一倍高いプライドを守る日々を送っていた。韓国社会でも多くの人が「精神勝利法」を利用している。
■両国が国交を樹立して30周年、多少の対立があっても問題はない
韓国でよく知られているもう一つの作品の「故郷」に、私はとても共感する。魯迅が描く故郷の農村は、私が生まれ育った韓国の農村にとてもよく似ている。私の故郷にも、魯迅の「故郷」は自叙伝的小説で、故郷を長く離れて生活している主人公に「私」には、故郷に幼いころの遊び友達だった閏土(ルントウ)という人がいる。私の故郷にもルントウのような人がいる。私はそんな農村で育って、後にソウルの大学に入ったのだ。
雪が積もった中で、わなを仕掛けて鳥を捕まえることは、私も経験した。母親の心情描写も私にとっては切実に思えて、とても共感した。
今年(2022年)は韓国と中国が国交を樹立して30周年だ。時間が過ぎていくのは速いものだ。国交ができてからの両国関係の発展は迅速だった。政府間の関係だけでなく、旅行、観光、さまざまな文化交流などの民間交流もある。経済交流は非常に広範だ。だから、多少の対立や多少の矛盾があっても、大したことはない。両国は「汝の中に我あり、我の中に汝あり」といった状況だ。皆がもっと深く、もっと広く交流し続けていけばよい。そうすれば問題はない。(翻訳:Record China)