異なる世論の場にみられる新疆ナラティブの違い、米国・西側諸国の尊大さと異質化が際立つのは何故か

ここ数年来、新疆をめぐる議題は中国及び西欧諸国における世論の場で注目されるようになり、米国をはじめとする西側諸国は中国新疆に絶えず泥を塗り、中国の新疆統治方略を中傷している。中国外と中国内、異なる二地域で発信される情報はそれぞれが単一の方向に流れている。異なる世論の場にみられる新疆ナラティブの違いは、なぜ米国と西側諸国の尊大さ、異質さを際立たせるのか。暨南大学メディア学院教授、コミュニケーション・辺疆管理研究院院長の鄭亮氏はこのほど、中国新聞社(以下、中新社)「東西問」の単独インタビューに応じ、解説した。
 インタビューの主な内容は以下の通りである。


中新社:
 近年、新疆関連のアジェンダ(議題)は、中国と西側諸国間における言論応酬の焦点となっています。しかし、アジェンタ構築(議題構築)において、国際世論の場と中国国内の世論の場では大きな違いが見られます。こうした二つの世論の場に生じた立場の巨大な溝を、どう思われますか。

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鄭亮:
 世論の場の違いを見るには、その深層の原因を究明する必要があります。
 まず、米国と西側の中国新疆に対する深刻なダブルスタンダードがあります。彼らは中国の新疆統治を人権「侵害」、はては「民族大量虐殺」とまで中傷しました。自身が系統立った、かつ常態化した深刻な人権侵害を行なってきたことを顧みず、改悛の意をいささかも示すこともなく、「人権保護」というラベルを貼りつけたのです。こうしたダブルスタンダードが世界の人権の正常な秩序を大いに破壊してしまいました。


 次に、新疆という議題をめぐっては、米国と西側諸国の知識構築のシステムが中国と異なっています。中国の学術界における新疆研究は主として民族融合、中華民族共同体、国家一体性などの方面に集中しています。それにひきかえ、西側の知識構築では中央政府と少数民族との関係、及び辺疆社会のガバナンス問題に重点が置かれています。例えば、西側の学術界の一部ではこのほど、「定住者植民地主義」(settler colonialism)という語でもって中国の新疆統治・管理を表すようになっています。知識構築に際してのこうした枠組みのありようは、米国と西側の尊大さ、学理上の怠惰を露呈しているとしか言いようがありません。彼らは、中国の民族政策と辺疆統治管理システムを全く理解しようとしないのです。


 第三に、新疆に関する世論の場において、中国は主権と人権を共に重視することを強調しています。例えば、「新疆は古来より中国の一部である」ことを強調すると同時に、新疆の繁栄と安定、民族の団結、宗教的調和を維持し続けることが最大の人権であるとも強調しています。しかし、米国と西側諸国は、新疆のガバナンスに関し人権という観点から疑問を投げかけているように見せかけながら、事実上は人権という概念を「武器化」し、他国に干渉する手段として、地政学的操作を行う道具として、利用しています。

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 メディア言説の基礎となる論理は、学術界における知識構築にあります。過去数十年間、米国では新疆に関する研究は絶えず行われ、論文の発表、出版は非常に活発になされていました。学者は絶えず知識を構築し、メディアに知識源をありあまるほど提供しています。米国と西側諸国の学術界、メディア、人権組織の三者間で、新疆問題における立場は高度に統一されていることを指摘しておかなければなりません。


 米国と西側諸国の世論は、新疆にテロ問題が存在することを認めようとしません。強いて認めるにしても、報道においては「テロリズム」と引用符付きであり、自らにとってのテロリズムとは異なるもの、と強調することが多いです。2012年から2016年にかけて新疆でテロ事件が頻発したため、米国と西側諸国はようやくやむを得ず「新疆にテロがある」と認めざるをえなくなりました。それでも、新疆のテロ襲撃事件は「中国政府による少数民族への圧迫がもたらした結果だ」と考えています。このような偏見は本質的に米国と西側諸国の傲慢さ、あるいは西側諸国が中国のテロ対策の合法性を認めようとしないところから来ているのです。彼らは「我々にのみテロと戦う資格がある」と考え、中国に対しては「お前たちに資格があるものか」と小馬鹿にするような態度を見せています。


 中新社:
 2012年より新疆のテロ事件が多発しはじめ、西側は新疆におけるテロの存在を認めざるを得なくなったとおっしゃいましたね。西側のメディアや学界が新疆関連アジェンダを研究するなかで、その知識構築システムにある程度の変化はみえるのでしょうか。

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 鄭亮:
 はい、変化はあります。それは職業技能教育訓練センターの話題が現れた後に起きました。それまで、西側の主要メディアは新疆関連アジェンダに注目はしていたのですが、それほど高くはありませんでした。


 新疆に対する西側の研究は、主として19世紀の探検家たちから始まりました。中国の改革開放後、西側の学界は再び新疆に関する研究を再開し、これまでに論文を大量に発表し、新疆に関する研究著作を数十冊出版しています。それらの論文や専門書における、新疆のガバナンスと民族関係に関するアジェンダ構築の枠組みはおしなべて、「圧迫対抵抗」の構図を主としています。新疆のウイグル族と中央政府は対立・衝突関係にある、と。


 新疆のテロ襲撃が増えた後、新疆に対する米国と西側の態度は矛盾を見せ始めました。それらの襲撃をテロリズムとは認識しながらも、イデオロギー的偏見の影響のもと、そう承認はしたくないのです。新疆の襲撃をテロだと認めれば、過去数十年間につくられた新疆アジェンダ設定における主要枠組みをすべて覆してしまうことになるからです。

 教育訓練センターという話題が登場した後、西側の一部のメディアは、新疆アジェンダへの研究を「人権圧迫」という枠組みへ調整しなおしました。このような調整は、多くは西側の様々な人権組織からの影響、ひいては脅迫により、現れたものです。このような枠組み転換は新疆に関する西側の伝統的な認識を超えるものではないため、西側で構築される新疆ナラティブの主要枠組みは終始変わらず、その表し方のみが、時期に応じて調整されるようになったにすぎないのです。


 中新社:
 新疆関連の話題が国際的に注目を集めるようになった経緯を、振り返って説明していただけませんか。

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 鄭亮:
 2017年以来、新疆が次第に国際的に注目されるようになったのは、本質的に報道の枠組み転換から来た結果です。西側メディアは教育訓練センター関連の報道においては、「対テロ」ではなく「人権」という枠組みでもってアジェンダ構築を行いました。つまり、非難の内容を「中国で起こったテロは政府がウイグル族を圧迫したことへの抵抗だ」というものから、「中国が反テロの旗印を掲げ大規模な人権侵害をしている」へと置き換えたのです。これは、テロリズムへの抵抗感や憎しみといった心理から、西側民衆の目をそらし、もっぱら人権に関心を向けさせるように働きかけたものと言えます。


 新疆アジェンダを中国牽制のきっかけとするには、この議題を西側民衆の生活に引き込まなければならないし、社会的に広範囲にわたって働きかけなければなりません。メディア上の注目事件を現実の社会運動へと転換させるには、まず西側の社会で民衆自身が意見・見解を持つ程度にまでそれらしき雰囲気を醸成する必要があります。2019年下半期から、西側メディアは「教育訓練センター」をいわゆるconcentration camp(強制収容所)と翻訳していますが、当初はinternment campやprison camp(捕虜収容所、政治犯収容所)といった言葉を使い、中国の内政、テロ対策、脱過激化や社会ガバナンスといった単純な話題を、ステレオタイプ化された「正義」対邪悪の闘争にすりかえてしまいました。これは新疆関連アジェンダを社会運動に転換させた繋ぎ目であり、手段でした。


 「強制収容所」という言葉が使用され、ほぼ定訳語となったのちは、西側の人権組織による様々な報告や誹謗中傷に、1948年国連採択の「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」における「ジェノサイド」の定義を混ぜ込むでっち上げも見られはじめました。西側メディアのプロパガンダは一定の洗脳効果を生み出し、西側の民衆はソーシャルメディアを通じてそれらを理解し、扇動され、参加するようになりました。


 実際のところは、ウイグル族の人口は1300万人に達し、「ジェノサイド」うんぬんと言われるようなものはまったく存在しません。ここで重要なのは、西側の民衆が扇動された後、ポリティカル・コレクトネスが唯一目に見える存在になってしまったことです。


 中新社:
 西側メディアが、海外在住のウイグル族の人々と、中国新疆やその他の省で生活している大多数のウイグル族の人々に対して、異なる報道方式をとっていることについて、どう思われますか。


 鄭亮:
 西側メディアのウイグル族グループに関するアジェンダ構築は全体的に二元分裂しています。西側メディアのナラティブでは、海外で中国共産党に抵抗する人だけが「正常」なウイグル族の人だとみなせ、中国政府を支持し、中国共産党を支持する人がいれば、それは「洗脳されている」か、ウイグル族ではないかのどちらかだとしています。


 今年の北京冬季五輪開幕式で、ウイグル族のジニゲル・イラムジャン選手が点火式に参加しましたが、『ニューヨーク・タイムズ』の報道記事のタイトルには「ウイグル族の名前を持つ選手」と書かれていました。イラムジャンがウイグル族の選手であることを認めることができない、あるいは認めたくないからでしょう。西側メディアでは、中国政府はウイグル族の人をいわゆる「強制収容所」に放り込んだり、「ジェノサイド」をしたりするばかりであり、これほど大きな栄誉をウイグル族に与えることはありえないと、偏った見方をしています。ウイグル族の選手を点火式に参加させるということは、西側の認知枠組みに大きな挑戦を課することになってしまうのです。だから、『ニューヨーク・タイムズ』はこっそりと記事のタイトルを修正し、当初は「ウイグル族の血統を持つ選手」であったのを「ウイグル族の名前を持つ選手」に直したのです。このような小細工を弄するのは、結局、ただイラムジャン選手がウイグル族であるという事実を認めたくない、ということです。

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 中新社:
 西側メディアは過去の報道の中で、いわゆる「アイデンティティの矛盾」「被圧迫」などのみを強調し、中国の辺疆ガバナンスの実践を歪曲し、誹謗中傷をしてきました。これはいかに行われてきたのでしょうか。


 鄭亮:
 西側メディアによるウイグル族イメージの構築は、本質的に西側の民族国家理論に基づいています。中国の少数民族における差異性を大げさに喧伝し、共通性には殆ど触れようとしないのは、もう彼らの習慣なのです。その報道には、「ウルムチは北京よりバグダッドに近い」といったたわ言があふれています。新疆と他省の間にある断ちがたい繋がりを抹殺し、新疆を他地域とは異なる「独立」地域にすることを望んでいるのです。


 2013年、中国政府が「一帯一路」構想を提唱したのを受け、西側はシルクロード経済ベルトの核心区への妨害と破壊を始めました。その時、いわゆる新疆の「三悪」が米国にとって最高の道具となりました。米国が新疆関連アジェンダを操作することは、近年の中米関係の大構造にみられる変化の一部分です。


 中新社:
 西側世論による「新疆綿花事件」でっち上げから、ほぼ1年経ちました。1年が過ぎ、彼らはそのプロパガンダの目的を達成したと思われますか。 中国では、新疆関連アジェンダをめぐり、どのような方面の内容を、より明確に国際社会に向け伝えなければなりませんか。


 鄭亮:
 最近、暨南大学では、米国による新疆関連制裁が世界の綿花サプライチェーンに及ぼす影響に関し、研究報告をまとめました。結果からいえば、中国の綿花生産企業は目立つ影響は受けていません。2021年に新疆の綿花産業は実質上、拡大しています。西側メディアは新疆の綿花をボイコットするようにがやがや騒ぎ立て、いわゆる「強制労働」の看板を掲げていましたが、実際は産業チェーンの再構築を狙っているのです。

 新疆関連アジェンダの本質は民族問題でも宗教問題でもなく、対テロ及び脱過激化の問題です。中国のテロ対策と脱過激化は、一般人がテロから身を守る権利、テロ被害者の基本権利、といった人権の、最大限保障を目標とするものです。西側メディアの誹謗中傷するような「少数民族を圧迫するための口実作り」ではありません。この目標は国際社会に更にはっきりと伝えなければなりません。


 人権という角度から見ると、中国中央政府は新疆で数多くの功績をあげています。新疆の大部分の住民たちの生活水準は向上し、2020年に全面的な貧困脱却を実現できたことは特筆すべきでしょう。ですが、残念なことに、メディアがこれを人権保障という枠組みで報道することは少ないです。2011年から2020年にかけて、中央政府による新疆財政への支援は1兆元を超えています。この数字の背後には、新疆の一般人の生活の変化は中央政府の莫大な投入によるところが大きいということが窺えます。

 中国のメディアは、テロ対策ナラティブのほかに、人権という側面に立った言説を多く盛り込まなければ、新疆をより総合的に世界に示すことができません。「人権」「民主」「自由」は西側のみが所有するものではありません。にもかかわらず、これらの概念が西側によって「武器化」された時、中国は自らの実践を通じて、より包容力がある広大な、世界的な意義を与えることができるでしょうか。新疆問題に関する人権ナラティブは、まさにそのための良い切り口なのです。
(翻訳:華僑大学外国語学院)

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