王敏:米国中国学者会議にも日中交流史の「文化力」

 2023年7月3日、中国国家主席の習近平(Xi Jinping)氏は、北京語言大学が主催した第1回世界中国学者会議に祝辞を送った。れを記念して2024年7月22日、「米国の中国学の視点から見た中国の現代発展」をテーマに、米国中国学者会議(米国における中国学と中国研究に関する国際シンポジウム)が青島・世界漢学センターで開かれた。

 この会議は、中国国際交流協会と北京語言大学の世界漢学中心が共催した。これには、米国の17人の有名な中国学者と中国の10の大学から100人以上の学者が参加した。

第1回世界中国学者会議

第1回世界中国学者会議

参加者一同は会場に設置されてある人物油絵展・「中国と世界の文明」を見学した。29枚の展示作品にはギリシャの哲学者ソクラテス、「東方見聞録」を書き著したマルコ・ポーロ、16世紀末のキリスト教イエズス会宣教師マテオ・リッチなど、12か国の偉人が並び、アジア人と西洋人が半数ずつだった。世界文明との深いかかわり、漢学と儒教の役割、漢字文明の広がりなどを理解できた。

その中に日中文化交流の歴史にかかわる三枚が展示している。「王仁と皇太子」、「継体天皇の治水縁」、「美智子様のご養蚕」だ。前者の二枚について以前、日本アジア共同体文化協力機構のHPで紹介した。次のリンクからご覧になる(essay20230802 | JACCCO日本アジア共同体文化協力機構 (japanasia.or.jp))。今回の展示には「美智子様のご養蚕」の一枚が加わることになった。

中国古典の『周礼』によれば、皇后主導の「給蚕の礼」は周王朝(前1046年 頃~256年)に始まった。『日本三代実録』では、秦の始皇帝の子孫「功満王」が日本に移住した際、仲哀天皇に蚕種(カイコの卵)を献上した。それ以来、日本の養蚕が栄えていき、「給桑」式が明治の皇室で執り行われるようになった。「美智子皇后様のご養蚕」は2020年に完成した作品で、美智子上皇后様が皇居の紅葉山御養蚕所での御勤めをモティーフにと紹介されている。

三枚とも中国人アーティストの万立・唐灼夫婦による。二人とも来日の経験はないのだが、私の書いた『漢魂と和魂』(中国・世界知識出版社)を通じて日中の歴史と文化の結び目を知り、創作を始めたと語っていた。

『王仁と皇太子』は、「孔子と世界」の6枚の絵画にも選ばれ、2019年12月末から1年近く中国国家博物館で展示された。

万立・唐灼夫妻の絵画

万立・唐灼夫妻の絵画

2022年10月24~27日、日中国交正常化50周年と平成両陛下御訪中30周年を記念して、東京都内でも万立・唐灼夫妻の絵画展を開いた。

万立・唐灼夫妻の絵画が、日本と中国の長い文化交流の歴史を力強く今日に伝えていることに、文化の持つ限りない力を感じている。

参考

1、「米国中国学者会議が青島で開かれました――対話の新座標」

https://mp.weixin.qq.com/s/X4T0UPuqkAWsadDRvCEerg

2、日本で見つけた中国②:蚕種渡来の祭り「蚕種祭」 ―始皇帝の子孫と忌宮神社― | JACCCO日本アジア共同体文化協力機構 (japanasia.or.jp)

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