中国のEnnova Art Museumが主催する初の国際展! Ennova Art Biennale vol.01:多元未来 – 人生的新展望

Ennova Art Biennale vol.01 メインビジュアル

中国、北京と天津の間に位置するランファン市(廊坊市)に2019年に開館したEnnova Art Museum(館長 張子康|Director: Zhang Zikang)では、2024年10月27日(土)から2025年4月30日(水)まで、Ennova Art Biennale vol.01(イノヴァアートビエンナーレ vol.01)を開催します。本ビエンナーレは、イノヴァ美術館(Ennova Art Museum)が主催する初めての国際展で、中国内外から国際的なアーティスト、およそ85名が参加します。

 

近年、中国国内で開催されている展覧会の多くは、主に中国内の美術に焦点をあてている傾向が見受けられます。そこで本展では海外との新たな交流を開くために、国際展の経験豊かな南條史生(キュレーター・美術評論家)が初代ディレクターに就任。キュレーターにはShen Qilan(中国)、Andrea Del Guercio(イタリア)に加え、日本から中国現代美術専門家の沓名美和、アーティスト選考委員には畠中実が参加します。

 

本開催は、半民間の巨大美術館イノヴァ美術館 が初めて挑戦する最大級のビエンナーレで、テーマは、「多元未来(Multiple Future)」。これは未来の多様な可能性を示唆するとともに、マルチバースの宇宙観にも繋がる、新しい哲学=世界観を包含する事を意図しています。そこでは、音という抽象的な素材を取り上げ、他のジャンルとの境界線上の創造に注目し、環境と持続可能性をかかげ、多様な未来のヴィジョンを示唆します。

 

本ビエンナーレは、科学、技術、歴史、哲学を渉猟する多様な視点を持って、アートと創造性の可能性を探るものとなるでしょう

Ryoji Ikeda 《test pattern [nº13], 》 2017 © Ryoji Ikeda © Martin Argyroglo

Amy Karle 《REGENERATIVE RELIQUARY》 2016 photo by charlie nordstrom

Isorattya Pekka eTeija(PEKKA & TEIJA ISORÄTTYÄ) 《Robohemians》 2022 Photographs: Ville Mäkilä, Wäinö Aaltonen museum, Turku Finland 2022

luke Jerram 《Gaia》 2018 Gaia at Bluedot, 2018 photo by luke jerram

Shota Yamauchi《The Planet of Faces》2022 Installation view: MAM Project 030 x MAM Digital: Yamauchi Shota, Mori Art Museum, Tokyo, 2022-2023 Photo: Kioku Keizo

Hans Peter Kuhn 《undefined landscape》2007 © Tadasu Yamamoto

Ennova Art Museum について

 

 

Ennova Art Museumは、著名な企業家・王玉錠氏によって2019年に設立され、北京・天津・河北地域の中心であるランファン市に位置し、総合文化芸術コミュニティー「シルクロード国際芸術交流センター」の中にある非営利の美術館です。日本の建築家、千鳥義典が「流れる雲」をインスピレーションに設計した近未来的な建築が特徴で、建築総面積は27万平方メートルを超えます。展示室総面積は12,000平方メートルと大規模で、アートギャラリー、劇場、コンサートホールなどの多機能スペースが集まっています。


ディレクター

南條史生 | Fumio Nanjo

キュレーター

Andrea Del Guercio
Shen Qilan
沓名美和|Miwa Kutsuna

アーティスト選考委員
畠中実|Minoru Hatanaka

 

 


テーマ:「多元未来 – 人生的新展望」

 

<セクションタイトル>

第1章  Sound Consciousness(音声の拡張)

第2章   Boundary Imagination (創造力の越境)

第3章   Sustainability and Environment (環境の未来)

第4章  Multiple realities (後人新世)

 

 

このビエンナーレは現代のアートとは何か、創造性とは何か、を問いかけつつ、我々が生きる現実と、その未来の姿がどのようになるのか描き出そうとするものである。

現代の人類は多様でグローバルなアジェンダに直面している。地球環境の悪化、食糧危機、水資源危機、人口の爆発や減少問題など、数えあげれば極めて多い。それらの課題は、これまでの考えかたにとらわれず、より広く高い視点から地球という惑星全体を俯瞰し、対処しなければ解決できないのではないか。

解決する方法は、単に人類が昔の生活に戻ることで無く、新しい科学技術に寄るところは大きい。近年めざましい進歩を見せた人工知能、遺伝子工学、ロボティックス、アンチエイジング、再生可能エネルギー技術などの分野は、人類を幸せにすることができる一方、使い方を誤れば、人類に大きな損失を与えることにもなる。新しいテクノロジーは一方で、現代のアートの表現にも応用され、アートと科学技術が非常に近い時代にもなっている。

人類が問題に対処し、克服していくために重要な要素のひとつが創造性であるだろう。創造性とは、新しい発想で、既存の枠組みに縛られず、あらゆる知識を総合し、越境し、新たな視点に立って提案する能力である。それはまさにアーティストの活動そのものではないだろうか。本展はそのような視点に立って、いまアートの現場でどのようなことが起こっているのかという好奇心を持って渉猟し、4つの章立てに分類している。

 

第1章ではアート表現の素材としての「音」に焦点を当てた。音は、形が無く、直ぐに消え去るという意味で「はかなく」、抽象的で時間と共にある。しかし20世紀の半ばから、音を素材にしたアート表現は一般的になった。

現在、音はアート表現の中で重要なエレメントになりつつある。それは人間の身体から発せられる音(すなわち声)や肉体が生み出す音にはじまり、機械音やコンピューターを使って生み出されたデジタル音源など様々である。最近ではコンピュターグラフィックスを駆使した映像プレゼンテーションや電子音のパフォーマンスが、未来に向かう新しい音の芸術の道を開いている。そこで、第1章はこうした音と声を表現の素材にした作品を集中的に展示した。

 

第2章 我々の学問は現実を分類することから出発し、それぞれの概念を組み立てることによって世界への理解を深め、あるいは世界を洞察してきたと言える。しかし現実の中では分類やジャンルの境界は存在していない。全てはつながっていて、相互に影響し合う関係にある。そのため、クリエイティブな思考はしばしば境界を超え隣接する領域と融合することで、新たなヴィジョンを生み出す。つまり境界線上には新しい創造の可能性が存在している。他のジャンルとの交流、対話、ぶつかり合いが、新しい表現のインスピレーションを生み、新しい世界を開示するきっかけとなる。具体的にはファッション、建築、写真、デザイン、哲学、音楽、味覚、触覚などとの隣接分野とアートが境界を越えて交わることで新しい表現と物語を作り出している。そこで第2章は境界線上の創造を紹介する。

 

第3章では、創造力の発露がいまどのようにグローバルアジェンダに繋がっているのか、その中でも人類の持続可能性と環境問題、またバイオ技術やロボット技術に焦点を当てて、そこに言及する作品を紹介している。今日の地球規模の課題で最大のものは地球環境の問題である。それは単に地球の温暖化だけでなく、巨大なゴミ箱とも言える大都市の増大、水資源や食料の枯渇、大気の汚染など多岐に渡る変化を引き起こそうとしている。環境に関わるアート表現には廃材を利用して、環境問題に警告を発する作品、絶滅危惧種に目を向けさせる作品、サーキュラーエコノミーを提案する作品、地球環境の未来を暗示する作品など様々な表現が登場している。また隣接分野の表現も、リサイクルや再生可能な素材を使い、環境と持続可能性について考える事を観客に促すだろう。

 

最後の章は、アートが描く未来についての多様な現実、世界観を紹介している。人間の未来は人間が開発してきた科学技術によって、今後大きく変わる可能性がある。

科学技術の進化は、これまで見えない物も見えるようにした。ナノテクノロジーはミクロの世界に視野を広げたが、宇宙科学は、量子物理学の発展と共にマクロの世界に視野を広げ、宇宙がどのようなものなのか解明し、マルチバースの可能性についても論じている。そうした変化は人間の生き方と価値観、哲学、宇宙観にもおよぶだろう。現代においてはこうした人間存在に関わる問題をテーマとしている現代美術も少なくない。未来へのヴィジョンに言及した作品を、第4章で紹介する。

 

創造性の根源と変化、それが与える新しい人間の未来を考えることは、最終的に我々の最も根本的な問い、「我々はどこから来たのか 我々は何者か どこへ行くのか」(ポール・ゴーギャン)に対する、新しい示唆を与えてくれるだろう。この展覧会の根底にはこうした問題意識が存在していることを感じてほしい。

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