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上海、昆山で台湾企業の操業停止相次ぐ~アップルのサプライチェーンへの影響に懸念

新型コロナウイルス感染拡大で事実上の都市封鎖が実施されている上海と江蘇省昆山市に生産拠点を置く台湾系メーカーが相次いで、当地での一時操業停止に追い込まれている。特に昆山は電子産業が集積し多くの台湾系企業が生産拠点を置き、中には米アップルのサプライヤーも含まれる。このため、アップル製品のサプライチェーンに影響が及ぶ可能性が指摘されている。 ■MacBookの組み立て請け負いの広達などが操業一時停止 4月14日付の香港経済日報によると、操業一時停止を発表した台湾上場企業は少なくとも161社にのぼる。このうち、世界最大手のノート型パソコンのEMS(電子機器の受託製造サービス)である広達(クアンタ)の上海子会社は13日から操業を停止。操業再開時期に向け当地政府に積極的に協力するとともに、同社の財務、業務への評価を進めるとしている。 iPhoneの二大組立受託企業の一つである和碩(ペガトロン)は、上海と昆山の工場の一時生産停止を発表。操業再開時期は未定としている。iPadの製造を請け負う仁宝電脳(コンパル・エレクトロニクス)は、昆山の子会社5社が政府の防疫措置の強化に協力するとしている。このほか、プリント基板(PCB)のサプライヤーである欣興(Unimicron)は、上海工場が4月2日から操業を停止しており、現時点では4月19日まで操業を停止するとしている。 アップルのサプライヤーが多いだけに、アップル製品の生産にどの程度影響が及ぶか懸念されているが、製品の中ではMac bookが最大の影響を受けると予想されている。iPhoneとiPadは、河南省鄭州と深圳に生産拠点を持つ富士康(フォックスコン)が、和碩と仁宝電脳の操業停止分を支えることができるが、Mac bookは広達が組み立てをほぼ独占して請け負っているためだ。 では、どの程度の影響を受けるのか。操業停止の期間次第だが、アップル製品は通常1~2か月分の在庫を持っているとされるため、「操業停止が1~2週間程度であれば、全体のサプライチェーンへの影響は大きくない」とみられている。ただ、操業停止が1カ月を超えれば供給に支障をきたす恐れがあると予想されている。 物流、輸送の遅延の影響も看過できない。調査会社のトレンド・フォースによると、人やモノの流れが制限される中、上海、昆山の工場は当面、既存の部品在庫で生産ニーズを満たすしかない状況。また、封鎖措置が解除されても、一気に動き出せば、税関の負荷高まりによる停滞が予想され、製品の納期に影響が及ぶ可能性があるという。

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米中の長期金利が逆転~当面続くも「過度の元安は制御可能」と政府系メディア

米国の長期金利が中国の同金利を上回る金利逆転が起こった。米中の金利逆転は、両国の金融政策の相違から当面続く可能性があるが、中国の政府系メディアは「金利逆転による過度の人民元安リスクは制御可能で、海外への大規模な資金流出は起こらない」との見方を伝えている。 ■逆方向の米中金融政策 金利差逆転の背景には米中の経済サイクルのズレによる金融政策の相違がある。米国ではインフレ率が約40年ぶりの高水準に達し、金融政策は「インフレ抑制」に重点が置かれている。一方、中国は景気下振れ懸念がくすぶる中、「安定成長」に軸足を置いた金融政策となっている。こうした金融政策の相違から4月11日、米国の10年物国債金利は2.76%を付け、同日の中国の10年物国債金利2.75%を上回った。米国の10年物国債金利が中国のそれを上回るのは2010年以来のこととなる。 ■過度の元安は制御可能 米中の金利逆転は元安要因にもなり得る。ただ、中国政府系メディアは「大幅な元安リスクは制御できる」との見方を伝えている。その要因の一つとして、金利差よりも国際収支のほうが人民元相場に与える影響が大きいことを挙げている。目下、経常収支、資本収支の黒字規模が依然として大きいことを鑑みると、急速に元安に進む可能性は低いとみられている。また、◇インフレ要因を加味した米中の実質金利の差が依然として大きいこと、◇外貨、資本規制が依然として存在すること――なども一方的な元安進行を抑える要因として挙げられている。 ■金利逆転現象は当面続くも長期化には懐疑的な見方も 前述のように米中金利逆転は、目先は続くとみられているが、長期的に続くかには懐疑的な見方もある。 まず短期の見通しをみると、米国はインフレ抑制を目的にした利上げ観測の継続が金利の押し上げ要因となる。一方、中国に関しては、足元の新型コロナウイルス感染者拡大を背景に第2四半期の景気の下振れリスクが強まる中、景気下支えのための預金準備率や金利の引き下げの可能性がくすぶっている。米金融引き締め、中国金融緩和という逆方向の金融政策が、金利逆転が続く目先の要因となる。 しかし、その先をみると、米国は量的引き締め(QT)が始まり、景気減速懸念が強まった場合、10年物国債金利は第2四半期末ごろから低下すると予想する向きがある。一方、中国はコロナの状況が改善し、景気下支え策が奏功して景気好転予想が強まれば、10年物国債金利は上昇する可能性がある。つまり、長期的には、米国は景気減速懸念→金利低下、中国は景気改善期待→金利上昇というシナリオとなれば、足元の金利逆転が解消されることになる。 米中の経済サイクルのズレが強まる中、両国の金融政策の舵取りが注目される。

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【4月14日15時から開催】雲南省におけるビジネス開拓の可能性を探る 雲南省探訪ビジネスセミナー参加者募集中

4月14日15時から雲南省駐日本(東京)商務代表処の主催で「雲南省探訪ビジネスセミナー RCEP加盟により盛り上がる雲南省」を開催する。 2021 年から日本と雲南省との経済交流を促進するため、雲南省の経済を中心に、またニュースや報道では取り上げられないような様々なテーマ、貴重な情報を提供するために定期的に本セミナーを開催している。 第四回目となる今回は「RCEP 加盟により盛り上がる雲南省」というテーマを掲げ、 2022年1月に発効したRCEPのメリットを活かすための雲南省産業界の市場開拓に向けての動向や、RCEP 加盟諸国と雲南省との関係の深まりを紹介すると同時に、インドシナ半島・南アジアと中 国の結節点として雲南省が提供するビジネスチャンスについて発信する。また本セミナーの特別講師として荒井商事非常勤顧問、多摩大学客員教授である結城隆氏をお招きする。 申込みはこちらからhttps://yunnan.jygma.org/index.php/seminar4th/ セミナー概要 ■ 主催:雲南省駐日本(東京)商務代表処 共催:一般社団法人 日本雲南総商会 後援:株式会社みずほ銀行、日本貿易振興機構(JETRO)成都事務所 一般社団法人 東海日中貿易センター、認定 NPO 法人日本雲南聯誼協会 一般社団法人 日中中小企業交流支援協会 雲南省国際貿易学会 ■セミナー配信期日:2022 年 4 月 14 日(木)午後 3 時より 2 時間(日本時間) ■セミナー受講料:無料 ■受講人数:先着100名...

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中国の自動車業界、コロナやウクライナ情勢などの影響懸念~支援策求める声も

中国の自動車業界では上海市など複数のエリアでのロックダウンや地政学リスクの高まりなどが及ぼすマイナス影響が懸念されている。今後の動向に不透明感が強まる中、自動車消費促進策などの政府支援を求める声も出ている。 ■3月の生産、販売台数は対前年同月比減少 中国汽車工業協会によると、今年1~3月の自動車生産台数は前年同期比2.0%増の648万4,000台、販売台数は同0.2%増の650万9,000台と、小幅ながら増加。しかし月次ベースでみると、3月の生産台数は前年同月比9.1%減の224万1,000台、販売台数は同11.7%減の223万4,000台と、ともに減少となっている。3月以降、国内の新型コロナウイルス感染者拡大に伴う各種規制強化やロシア・ウクライナ情勢による地政学リスクの高まりが生産活動に影響。加えて、エンジン電池の原料価格上昇などを背景にした値上げが販売にマイナス影響を及ぼした格好だ。 ■「中国の自動車生産への損失は約2割」と業界予測 今後の動向も不透明感が強まる。複数の中国メディアによると、4月の生産、販売動向について全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)秘書長の崔東樹氏は4月11日、コロナ規制の自動車生産にもたらす損失について「20%前後になる」との見方を表明。ロックダウンが実施されている上海市と吉林省には上海汽車、第一汽車がそれぞれ本社を構えているが、国家統計局によると、上海市と吉林省は全国の自動車生産の約11%を占めている状況。崔東樹氏は、「一般的にコア部品は本社エリアの付近に分布されるため、上海市や長春市でコア部品の供給が停滞すれば、全国の自動車産業全体に影響が波及していく」と懸念を示した。 ■NIOは一時生産停止 こうした中、新エネルギー自動車(NEV)の蔚来(NIO)は4月9日、完成車の生産を一時停止すると発表。3月以降、上海市や江蘇省などにある同社のサプライチェーンの取引先が次々と生産を停止しているためで、今後は購入者への納入が遅れるとしている。 物流や販売にも影響が出ている。物流では各エリアで直近48時間以内のPCR検査陰性証明などの提出が義務付けられるなどして停滞。また、ロックダウンで消費者の購買意欲にもマイナスの影響が及んでいる。 ■業界は産業支援策を要請 厳しい環境が続く中、中国汽車工業協会常務副会長兼秘書長の付炳鋒氏は、「中国の自動車業界は需要の縮小、供給サプライチェーンの打撃、消費者心理の悪化という3つの圧力に直面している」と指摘。当面、安定成長が難しいと予想されることを踏まえ、政府に購入税半減政策を含む自動車消費促進策を打ち出すよう求めている。

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ガソリン車生産停止のBYD~NEV特化でハイエンド・ブランドのイメージ確立なるか

BYDは4月3日、ガソリン車の生産を3月から停止し、新エネルギー自動車(NEV)に属する電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)に注力すると発表した。NEVへの特化は、BYDのハイエンド路線へのシフトに拍車を掛けることができるのか、注目されている。 ■電池メーカーから自動車事業に参入 電池メーカーだったBYDは、2003年に秦川汽車の買収を通じて自動車事業に参入した。その後、電池の技術を活かし国内でNEVの開発を先行。2006年にリチウム電池を搭載した初のEV「F3e」を開発した。しかし、当時はNEVに対する市場の認知度が低かったほか、サプライチェーンの問題などもあり最終的に発売に至らなかった。 BYDは当時、ガソリン車が中心だった自動車市場でNEVを普及させるには、ガソリンから純電気への移行を支える技術が必要と判断。そこで開発されたのが2008年に発売した同社初のPHVである「F3DM」だ。価格は14万9800元だった。 その後BYDは、PHVとEVの2大分野で数々の車種を投入。近年はPHVとEVを含むNEVの販売比率が高まっていた。実際、2021年6月の販売実績をみると、販売台数5万1,051台のうちNEVが4万1,366台。全体の8割強を占め、ガソリン車は2割弱にとどまっていた。 また、2021年11月に開催された第26回国連気候変動枠組条約締約国会合(COP26)では、主要市場で2035年まで、世界で40年までにすべての新車販売で二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション車(ZEV)に転換するとの宣言に、自動車メーカー6社が署名したが、中国メーカーではBYDが唯一署名。他の5社は米GMやフォード、独ダイムラーなど欧米企業だった。 こうした中、従来からガソリン車を生産している他の中国の自動車メーカーに先駆けてガソリン車の停止を発表した。無論、ガソリン車の生産停止後でも、既存の顧客に対してはアフターサービスや各部品の提供は続けるとしている。 ■ローエンドからの脱却に向け「漢」投入も、高級路線シフトは道半ば ガソリン車からNEVに完全シフトしたBYD。今後の課題はローエンド・ブランドのイメージ払拭だ。 前述した通り、2008年以降、BYDはNEVを相次いで投入してきたが、価格帯が低いローエンドの車種が中心だった。ローエンド・ブランドからの脱却に向けてBYDは2020年、「漢」シリーズを投入。「漢」はBYDの他の車種と異なり、価格は30万元近くで、業界内では、「漢」がBYDのハイエンド市場を切り開く「切り札」になるとみる向きもあった。 「漢」投入後、販売は好調だった。BYDの21年の販売台数は前年比75.4%増の73万0093台で、うち、NEVは前年比231.6%増の59万3,745台(内訳はEVが32万0,810台、PHVが27万2,935台)。中国のNEV販売台数でトップに立った。 しかし、「漢」の品質などに対する消費者からの苦情は少なくなかった。また、他のNEVの新興企業に比べると収益性が低いことも浮き彫りとなっている。 一般的に完成車の粗利益率は自動車メーカーの「命脈」とされているが、BYDの2021年の粗利益率は前年比7.81ポイント低下して17.39%。2008年以来の低い水準に落ち込んだ。一方、テスラ、蔚来(NIO)、理想汽車といったNEVメーカーは、販売台数ではBYDを下回るが、完成車の粗利益率は20%以上を維持している。 BYDは完成車事業の粗利益率の低下について、サプライチェーンの寸断や原材料価格の上昇などを挙げている。ただ、これらの問題は自動車業界全般のことだ。となると、テスラやNIOに比べて粗利益率が低いのは、販売価格の低さが影響しているといえる。実際、調査会社のデータによると、BYDの21年の平均価格は15万1,800元。一方、NIOの平均価格は43万2,900元と大きな開きがある。 収益性を高めるためにも、NEVの更なるハイエンド化は必須といえる。こうした中、「BYDが新たなハイエンド・ブランドの投入を計画している」と報じられている。価格帯は50万~100万元に設定されるという。 自社ブランドだけでなく、独ダイムラーとの合弁会社である深圳騰勢新能源汽車(騰勢汽車)が展開するNEVブランド「騰勢(DENZA)」についても、ハイエンド化を模索している。 騰勢汽車は2010年にBYDとダイムラーが折半出資して設立。「騰勢300」、「騰勢400」、「騰勢500」などを投入してきた。価格帯は30万~40万元とハイエンドに属するが、走行距離の短さや消費者のブランド認知度の低さなどで販売は低迷。「騰勢」の21年の年間販売台数は4,783台。NIOや理想汽車の1カ月の販売台数を下回る水準だ。 こうした中、BYDは「騰勢」のテコ入れに動き出した。21年12月、BYDとダイムラーの出資比率について、各50%から、BYD90%、ダイムラー10%へと変更すると発表。ダイムラーからBYDの株式譲渡は22年内に完了する予定となっている。BYDは支配権を強めることで、高級ブランドの構築で主導権を握る狙いがある。実際、「騰勢」が新たに発売する車種にはBYDの新技術を採用し、販売価格は30万~50万元に設定する計画という。 また、今年2月には「騰勢」の販売会社となる騰勢汽車銷售服務を設立。販売会社はBYDの子会社・BYD汽車工業が全額出資している。販売会社の設立についてBYDは、「ハイエンド(ブランド)のサービスや体験を再構築する」としている。 ■自動運転分野でも巻き返し 課題はハイエンド・ブランドの構築だけではない。BYDは車内のスマート化や自動運転の技術面でも他社に比べて劣勢と指摘されている。この課題を解決すべく、このところ、自動運転技術を持つ企業との連携を加速している。まず今年2月、百度(Baidu)を自動運転分野のサプライヤーに選出したと報じられた。百度のシステムを搭載したBYD車が近く、量産化される見通しという。また、同3月にはNVIDIA(エヌビディア)と提携し、2023年上半期から一部の車種にエヌビディアのシステムを搭載すると発表した。BYDとしては、自動運転の関連技術を保有する企業と連携して自動運転の研究開発を加速し、自動運転分野でも攻勢を強めるとみられている。 民族ブランドの自動車メーカーである吉利汽車、長城汽車もNEVのハイエンド車種を投入するなどNEVのハイエンド市場では競争が激化している。こうした状況の下、NEVに完全シフトしたBYD。NEV市場でローエンド・ブランドのイメージを払拭し、ハイエンド・ブランドとしての認知度を広げることができるのか、同社の力が試されるところといえよう。

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中国デジタル人民元の実証実験エリアに11都市追加

中国人民銀行の公式ウェブサイトによると、人民銀行は3月31日にデジタル人民元実証実験の研究開発に関する会議を開催し、実証実験エリアとして新たに11都市を追加する方針を示した。 既にデジタル人民元の実証実験を行っているエリアは、上海市、海南、湖南省・長沙、陝西省・西安、山東省・青島、遼寧省・大連、広東省・深圳、江蘇省・蘇州、河北省・雄安新區、四川省・成都の10エリアと北京冬季五輪会場。さらに同会議では、北京冬季五輪会場での実証実験終了後、北京市と河北省・張家口が実証実験都市になったと明らかにした。 会議ではこれらエリアに、天津、重慶、広東省・広州、福建省・福州、同アモイの5都市と22年アジア競技大会開催地の浙江省6都市(杭州、寧波、温州、湖州、紹興、金華)の計11都市を追加する方針を示した。 現在、デジタル人民元の使用は卸売・小売、飲食、観光、政府などの支払いで可能。北京冬季五輪・パラリンピックでの試験プロジェクトも成功し、実証実験への参加者は増加。取引規模も徐々に拡大しているという。 デジタル人民元のウォレットを開設できる指定運営機関は、工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行、交通銀行、郵政貯蓄銀行、招商銀行、テンセント傘下の微衆銀行、アントグループ傘下の網商銀行が選定されている。 2021年末時点のデジタル人民元の応用シーンは808万5,100カ所、個人ウォレット開設数は累計で2億6,100万、取引金額は875億6,500万人民元となっている。

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中国、地方債の発行ペース加速~景気下支え効果に期待 

中国で地方債発行ペースが加速している。足元、国内で新型コロナウイルス感染者が拡大し、一部都市の封鎖などで景気下振れ懸念が広がる中、地方債発行増によるインフラ建設プロジェクトの加速、景気下支え効果が見込まれている。 ■景況感が悪化 中国では足元で景況感が悪化している。3月31日に国家統計局が発表した3月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.5。前の月に比べて0.7ポイント悪化し、21年10月以来の低い水準となった。4月1日に財新が発表した同じく3月のPMIは48.1で、前の月に比べて2.3ポイント悪化。20年3月以来の低い水準に落ち込んだ。一部都市でのコロナ感染防止のための各種規制強化やロシア・ウクライナ情勢の悪化などが製造業の需要、供給両サイドにマイナス影響を及ぼしている格好だ。 ■第1四半期の地方債発行額、大幅に増加 大都市の上海でも都市封鎖が実施され、景気の下振れリスクが強まる中、地方債の発行ペースは加速している。Windのデータによると、今年第1四半期の地方債発行額は1兆8,246億人民元で、前年同期の倍以上となった。このうち、専項債(地方債の一種で収益性のあるプロジェクトの資金調達用)の発行額は1兆2,981億人民元で、年間の発行割当上限の39%を占めた。資金使途でみると、専項債で調達した資金の約7割がインフラ建設に振り向けられているという。 第2四半期についても、発行ペースがさらに加速し、発行額は高水準で推移するとみられている。実際、このほど開催された国務院常務会議では、専項債の発行枠の未使用分について、早期に発行するよう要請された。こうした点を踏まえ、第2四半期の専項債の発行規模は第1四半期と同水準に達し、今年上期の発行規模は2兆5,000億人民元前後になるとの予想が出ている。 ■専項債の資金使途拡大、使用効率向上に期待 発行ペースの加速に加え、専項債で調達した資金の使途が拡大する可能性もある。先の国務院常務会議では、専項債の使用範囲についても言及され「合理的に拡大する」との方針が示された。具体的には、交通、エネルギー、生態環境保護、保障性住宅(低中所得者向けの住宅確保を保障するための住宅)などの分野のプロジェクトに重点的に用いた上で、一定の収益を上げる公共サービスなどのプロジェクトに用いるよう求めている。 専項債で調達した資金の使用効率向上に向けた動きも見逃せない。資金使用を巡っては、資金が定められた使途通りに使用されていなかったり、未使用のまま寝かされていたりする問題があると指摘されている。こうした中、山西省は、専項債の資金の支出管理や未使用資金の使用を早期に促す管理体制を整備。地方政府のこうした取り組みによって使用効率が改善に向かうと期待する向きもある。

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中国のNEV新興3社、21年決算出揃う~納入台数は小鵬が最多も、売上高はNIO依然優勢

中国の新エネルギー(NEV)自動車、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車、理想汽車の2021年12月期の決算が出揃った。3社はそれぞれの頭文字をとって「蔚小理」と呼ばれるNEVの新興3大企業。各社の21年の納車数は10万台に迫っている。一方、赤字は継続し、増収も赤字は継続という趨勢は同じだ。ただ、各社の戦略の相違から業績も異なる特徴がみられる。 ■21年の納入台数:小鵬>NIO>理想 3社の過去の納入台数を振り返ると、最初に1万台を突破したのはNIO。NIOは20年まで納入台数でトップの地位を占め、他の2社を引き離していた。しかし、21年は小鵬、理想ともに納入台数が大幅に伸び、各社の納入台数は3社いずれも10万台に迫った。 21年の各社の納入台数をみると、NIOが9万1400台(20年の4万2700台に比べて109%増)、小鵬が9万8200台(同2万7000台に比べて263%増)、理想が9万500台(同3万2600台に比べて177%増)と、小鵬がトップに躍り出た。その小鵬の月次ベースの納入台数は、21年10月から22年1月まで4カ月続けて1万台を上回って推移している。 但し、22年も小鵬がトップの座を維持できるかは不透明。NIOは ET7、ET5、ES7の引き渡しが始まるためで、NIOの納入台数は大幅に増加すると見込まれている。 ■21年の売上高:NIO>理想>小鵬 納車の増加に伴い売上高も大幅に伸びている。各社の売上高は、NIOが前年比122%増の361億1000万人民元、小鵬が同259%増の209億9000万人民元、理想が185%増の270億1000万人民元に拡大している。 小鵬は納入台数でトップとなったものの、売上高の水準は最も低い。これは、自動車の平均価格が安いためだ。公式情報によると、NIOの平均販売価格は43万人民元、理想は33万8000人民元。対して、小鵬の平均販売価格は21万2000人民元となっている。 ただ、小鵬は今後も大きく価格を変える方針はないもよう。実際、同社の何小鵬・董事長は中国メディアに対して今後の価格設定について、「市場全体の状况に応じて主力の価格帯を調整するが、現時点で15万以下にすることも、より高級ブランドにすることも考えていない」と述べている。 ■21年の完成車粗利率:蔚来と理想は拮抗、小鵬は最も低く 21年の完成車粗利益率をみると、NIOが前年の12.7→20.1%、小鵬が同3.5→11.5%、理想が同16.4→20.6%。いずれも改善しているが、水準はNIOと理想が拮抗しているのに対し、小鵬はこの2社を大きく下回る。 NIOは平均販売価格の高さに加え、コストパフォーマンスが高いリチウム電池に切り替えたことが粗利益率の改善に寄与。理想は、投入している車種がONEのみで、「単品」戦略によるスケールメリットがコスト削減につながっている。一方、小鵬は粗利益率にも価格の安さが影響し、他の2社を下回っている。 ■21年純損益:理想>NIO>小鵬 各社いずれも粗損益ベースでは黒字となっているが、純損益ベースでは依然として赤字が続く。これは、研究開発費や販売管理費などの費用がかさんでいるため。21年の赤字額をみると、NIOが20年の53億→40億1600万人民元に縮小、小鵬は同27億3200万人民元→48億6300万人民元、理想は1億5100万人民元→3億2150人民元にそれぞれ拡大した。 理想は赤字幅が拡大したとはいえ、赤字額は最も低い水準となっている。また、四半期ベースでみると、21年10~12月期に2億9500万人民元の黒字に転換。理想の経営効率の高さが反映されている格好だ。 ■21年研究開発費:蔚来>小鵬>理想 21年の研究開発費をみると、NIOが84.6%増の45億9200万人民元、小鵬が138%増の41億1000万人民元、理想が198%増の32億9000万人民元となっている。特に、小鵬と理想は2倍以上の伸びで、中でも小鵬は19~20年の2年間の合計を上回ったという。 ■生産能力増強の動向 各社いずれも今後、販売の一段の拡大を目指す中、生産能力の拡充に努めている。 小鵬:肇慶+広州+武漢工場 小鵬の「G3」はこれまで鄭州海馬工場が代理生産してきたが、代理生産契約は21年12月に終了。委託代理生産からから自社生産に切り替えた。 自社工場の状況は、広東省の肇慶工場はすでに「P7」、「G3i」、「P5」の3車種を生産。また、肇慶工場では第2期拡張プロジェクトが始まっており、22年上半期には生産能力が現在の10万台から20万台に増強される計画だ。 さらに、広州工場は22年第3四半期に正式に生産が開始される予定で、年産能力は10万台を見込んでいる。建設中の武漢工場の年産能力も10万台で、23年に稼働する計画。こうした新工場の稼働を踏まえると、自社年産能力は23年に40万台に達する見通しだ。 NIO:江淮汽車委託工場+合肥自社工場 NEOは主に、江淮汽車合肥の委託工場で生産。NIOは江淮汽車と2016年4月に「製造協力枠組み協定」を締結し、江淮汽車はNIO向けに単独工場を建設し、生産ラインを設立し、生産を請け負っている。当該協定の有効期間は5年で、21年5月に協定を更新。24年5月まで江淮汽車がES8、ES6、EC6、ET7などのNIOの車種の生産を続ける。年間生産能力は24万台に拡大される計画だ。 江淮汽車工場のほか、NIOは自社の拠点として、合肥市政府とNeoParkスマート電気自動車産業パークを建設中。パークの完成車生産能力は年間100万台、電池生産能力は年間100GWh/年を計画している。 理想:常州+北京+重慶工場 理想汽車は2018年に重慶力帆汽車有限公司を6億5000万人民元で買収し、新エネルギー完成車の生産ライセンスを得た。その後、江蘇省の常州工場が中核工場の役割を果たし、第1期の年間生産能力は10万台となっている。現在は、常州工場第2期の拡張に着手しており、22年末までに常州工場の年間生産能力は20万台に引き上げられる計画だ。 また、北京にも生産拠点を建設している。北京では21年10月に北京現代第一工場を譲受し、北京グリーンスマート生産拠点を建設。同生産拠点は23年9月に稼働する予定で、第1期の年間生産能力は10万台を見込んでいる。さらに、重慶市両江新区に同社3カ所目の工場を建設しており、23年末までには年間生産能力を50万台にするとの目標を打ち出している。

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華為、21年は減収増益~「研究開発は競争力の核」と孟CFO

中国の華為(Huawei)が3月28日発表した2021年1~12月期決算は、売上高が減少したものの純利益は大幅な伸びを示した。香港メディアによると、カナダに約3年拘束され昨年帰国を果たした副董事長で最高財務責任者(CFO)の孟晚舟氏は、同社の財務状況について「収益性が強化され、キャッシュフローも増強され、不確実性への対応力は向上している」と指摘。また、研究開発が同社の競争力の核であることを強調した。 21年の売上高は前年比28.6%減の6368億人民元に縮小した一方、純利益は75.9%増の1137億人民元に拡大した。増益となったのは資産売却を進めて売却益を計上したため。キャッシュフローは597億人民元に達した。また、資産負債比率は57.8%に低下。孟氏は、全体の財務構造の強靭性、弾力性が強化されている点に言及している。 ■研究開発費は1427億元で過去最高 研究開発費は1427億人民元と過去最高を更新。過去10年間の研究開発費は累計で8450億人民元に達した。孟氏は「会社の真の価値は長期的な研究開発への投資で、蓄積された研究開発力、研究開発チーム、研究開発プラットホームこそ、華為の長期的で持続的な競争力の核」と、研究開発の重要性を強調した。 ■米国の制裁、携帯電話用チップの確保で大きな影響 米国の制裁については郭平・董事長が回答。「華為にとって試練となり、特に携帯電話のチップは、演算力の強さ、消費電力の低さ、体積の小ささが必要なため、依然として確保が難しい面もある」としている。そのうえで、各方面と携帯電話の持続可能な成長プランを積極的に模索しているという。チップ問題について郭氏は、「解決までは複雑で長いプロセスとなるため、忍耐強くなければならない」と指摘。自社開発のチップに関しては「チップの性能を向上させる必要がある」としている。 今後の新たな事業分野については、ウェアラブル分野での発展の可能性を模索していると指摘。同社のウェアラブル・スマートウォッチは利用者が1億人を超える中、新たな発展のチャンスを探っていくという。 スマートカー分野では、300社以上と提携パートナーを組み、既に30以上のスマートカー向け部品を投入。新たな分業協力モデルを構築し、パートナーとともにスマートカー事業を拡大していく方針を示した。 ロシアのスマートフォンメーカーのBQ Mobileが華為の独自OS「鴻蒙(ハーモニー)」の搭載をテストしていると報じられたが、郭氏は「ハーモニーは海外で提供していない」と述べている。 ■採用は拡大 テンセントやアリババなどの人員削減が伝えられる中、人員削減はしない方針。郭氏によると「人材、科学研究、イノベーションは同社の発展の基礎」で、20~21年の2年間で約2万6000人を採用。今年はさらに1万人以上を採用する計画という。