理想汽車、「MEGA」投入~同社初の「BEV×MPV」

中国の電気自動車(EV)メーカーである理想汽車(Li Auto)は11月17日、新型車種「MEGA」を発表した。MEGAは同社にとって初のピュアEV(BEV)であると同時に、多目的車(MPV)となる。中国のMPV市場は依然規模が小さいが、MPV需要への変化がみられる中、理想汽車など中国メーカーがここにきて相次いでEVのMPVを投入している。

 

■BEV投入

理想汽車はこれまでプラグインハイブリッド車(PHEV)の一種であるレンジエクステンダーEV(EREV/Rex)を投入してきた。EREVは、EVに発電専用エンジンを搭載し、バッテリーの電力がなくなる前にエンジンを駆動して航続距離を伸ばす仕組みで、BEVの電池切れ問題を補足するエンジンタイプだ。充電の遅さなど充電問題を踏まえ、REEVを投入してきたが、今年5月の上海国際モーターショーで、EREVとBEVの「ダブルエンジン戦略」を発表。ダブルエンジンとはREEVとBEVの2つのエンジンタイプを指し、理想汽車が本格的にBEV市場に参入することを表明した

 

理想汽車、純電気自動車投入へ~その背景は

 

■家庭用需要拡大睨みMPV市場に参入

MPVの投入も同社にとって初めてだ。そもそも中国ではMPVの自動車市場に占める割合は小さく、2022年の中国の乗用車販売台数のうち、最大の割合を占めたのがセダンで49.6%。次いでSUVが45.8%、MPVは4.6%にとどまっていた。

 

ただ、今年に入りMPVの販売は加速。全国乗用車市場情報連合会(乗連会)によると、10月のMPV販売台数は前年同月比13.1%増の9.3万台、1~10月までの累計販売台数は前年同月比17.6%増の90.6万台となり、増加率は主要3車種(セダン、SUV、MPV)で最も大きかった。

 

MPVの販売増の背景の一つに挙げられているのは需要の変化。従来、MPVは商用が中心だったが、足元では家庭用需要が増大している。中国の調査会社、艾瑞諮詢( アイリサーチ )によると、一人っ子政策の撤廃、国内消費水準の向上などを背景に、中国では家族旅行の需要が徐々に高まる中、多機能でスペースが広いファミリーカーの需要が伸びている。同社の調査によると、MPV所有者の日常的な用途は、通勤(67.8%)のほか、子供の送迎(61.2%)、近距離運転(59.6%)、家族の集まりや買い物(44%~46%)という。

 

■増える中国系メーカーのMPV投入

こうした中、中国のEVメーカーによるMPVの投入が増えている。東風傘下の嵐図汽車(Voyah)や極氪(Zeeker)、BYD傘下の騰勢(Denza)などがMPVを投入。さらに今年11月に入り、理想汽車のほか、小鵬汽車(Xpeng Motors)が同社初のMPVである「X9の」予約販売を開始した。

 

理想汽車は「MEGA」の投入にあたって家庭用需要の増大をにらみ、MPV市場に参入。「MEGA」の販売目標としては、「50万以上の家庭で第一の選択肢となる」ことを目指すとともに、燃料や車種に関係なく、販売台数でトップを目指すとしている。従来、中国のMPV市場はGMのビュイック「GL8」、トヨタの「シエナ・赛那」、ホンダの「オデッセイ」といった合弁メーカーが大きなシェアを占めていた。ただ、ここにきて中国のEVマーカーがMPVを投入。中でも理想汽車はマーケットのセグメンテーションに定評があり、販売を急激に伸ばし、2023年の累計納車台数は既に30万台を突破している。

 

「MEGA」の販売価格は60万元。充電12分間で500キロの航続距離を確保できる仕様となっている。予約数は開始から1時間42分で1万台を突破するなど出足は好調だ。理想汽車をはじめ中国系メーカーの参入でMPV市場の勢力図が変化するのか注目される。

 

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