中国、NEVの価格引き下げ広がる~炭酸リチウム価格下落も一因

中国の新エネルギー車(NEV)市場で価格引き下げが広がっている。背景には、販売促進に加え、炭酸リチウム価格の下落がある。足元では2022年12月期決算発表が相次いでおり、中国の新エネルギー車(NEV)メーカーは赤字が続いている状況にある。ただ、2023年は価格引き下げ以上に炭酸リチウム価格下落すれば、コスト低下が収益性の改善要因になる可能性がある。

■NEV価格引き下げ競争
中国ではNEVの値下げが相次いでいる。テスラが昨年10月以降、複数回にわたって値下げしたほか、蔚来汽車(NIO)や理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng Motors)などが相次いで価格を引き下げ。直近では販売が好調なBYDも値下げに動いたと報じられた。
値下げの背景にあるのは需要喚起を通じた販売促進。昨年、BYDに比べて中国での販売が伸び悩んだテスラは10月に率先して値下げに動き、今年に入り、販売が増加している。全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、テスラの1月の中国販売台数は過去最高の6万6,000台を記録。前年同月比10.3%増、前月比でも18.3%の増加となった。一方、昨年、値下げに動かなかったBYDの1月の販売台数は15万1,000台で、前年同月比では62.4%増だったが、前月比では35.7%減少している。

■炭酸リチウム価格下落で値下げ余地
無論、コストが下がらない中での値下げは企業にとっては収益悪化要因になりかねないが、ここにきて、コスト低下で値下げ余地が出てきている。2021年以降、高騰していた炭酸リチウム価格が下落しているのである。
炭酸リチウムは、電気自動車などに搭載されるリチウムイオン電池の原材料。NEVのコストの約40~60%はバッテリーで、そのバッテリーのコストの約半分が炭酸リチウムのコストとされている。
その炭酸リチウムの価格は2021年以降、NEVの販売増加に伴う需要拡大期待で上昇ペースが加速。1トン当たりの価格は2021年初頭の6万元超から2022年11月には59万元にまで値上がりし、過去最高を更新した。しかしここ数カ月、価格が急激に下がっており、3月初旬には1トン当たりの価格が37万元前後にまで低下している。
価格下落の背景にあるのは当局の管理強化。炭酸リチウムの価格高騰は、需要増を見越した仲介業者による買い占め、価格つり上げが要因として指摘されてきた。このため、当局は昨年11月、「リチウムイオン電池産業・サプライチェーンの安定的な発展に関する通知」を打ち出し、市場監督・管理当局による取り締まりを強化する姿勢を明確化。上流から下流までの業者による買い占め、価格つり上げ、不正競争などの行為を厳格に取り締まるとしている。また生産量の増加も、価格を押し下げている要因となっている。

■赤字続くNEVメーカー、コスト低下で収益性改善期待
コスト低下で値下げ余地が出てきたNEVメーカー。折しも、2022年12月期の決算発表の時期だが、中国のNEVメーカーは引き続き赤字の状態にある。例えば、NIOは純損益が145億元の赤字。赤字額は前年に比べて約40%拡大している。理想汽車も赤字が約20億元で、前年から6.3倍膨らんでいる。
こうした中、炭酸リチウム価格についてNIOのCEOである李斌氏は、「第4四半期に1トン当たり20万元以下に下がる可能性がある」と指摘。「原材料価格が、現在の趨勢に基づき当社が予想する減少ペースであれば、2023年第4四半期に損益均衡を実現するという目標は変えることはない」とするとともに、「コストの下落に伴い、2023年は粗利益率が18~20%に上昇する」としている。
NEVメーカーにとってバッテリーコストの低下は、収益性改善の大きな要因になり得る。だが、コスト低下だけに頼り切ることはできない。品質の向上や販売戦略の刷新などを通じて需要を喚起し続ける必要もある。今年は、赤字脱却に向けNEVメーカーの戦略が一段と問われることになりそうだ。

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