秦剛外交部長記者会見:中国外交政策と対外関係に関する回答
日中関係を巡って、「中国を封じ込める新冷戦に参加すれば、両国間の古傷が痛むことになる」と述べ、米主導の中国包囲網と距離を取るよう警告
第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議は北京時間3月7日午前10時に、北京市の人民大会堂記者会見ホールで記者会見を行い、秦剛外交部長(外相)が「中国外交政策と対外関係」について中国国内外の記者の質問に回答した。
■中国外交
▽元首外交を指針として、今年は第1回「中国+中央アジア5ヶ国」サミットと第3回「一帯一路」(the Belt and Road)国際協力サミットフォーラムという2つの「ホームグラウンド外交」を開催し、中国外交ならではのスタイルを示す。▽核心的利益の擁護を使命として、覇権主義と強権政治に断固反対し、冷戦思考、陣営対立と抑制・抑圧に断固反対し、中国の主権、安全と発展の利益を揺るぎなく守っていく。▽パートナーシップによって大国間の協調と良いインタラクティビティを促進し、各国と共に友好協力を発展させ、新型国際関係の構築を推進し、中国の「友情の輪」を広げ、新たな友人を増やし、古くからの友情を強固にしていく。▽開放と発展を目標として、国内の質の高い発展とハイレベルの対外開放を後押しし、「デカップリング」に反対し、一方的な制裁に反対し、開放的・包摂的な世界経済を守り、中国の新たな発展で世界に新たなチャンスを提供していく。▽多国間主義をルートとして、人類運命共同体の構築を推進し、国際関係の民主化を推進し、グローバル・ガバナンスのより公正かつ合理的な方向への発展を推進し、人類が直面する共通の試練を解決するために中国の知恵と中国のプランで貢献する。
■中国式現代化
14億の人口を抱える国が現代化社会に突入したことは、人類の歴史においてかつてないほどの壮挙で、巨大な世界的意義を持つ。中国式現代化は人類社会発展の数多くの難題を解決し、「現代化=西洋化」の思考を打ち破り、人類文明の新形態を創造し、世界各国とりわけ数多くの発展途上国に重要な啓発を与えた。そして独立・自主、人民至上、平和・発展、開放・包摂、団結・奮闘の5つを反映させた。その成功は、中国の土地に立脚し、その文化に深く根ざし、その実情に合致しているからだ。そこから各国が自ら発展の道を選び、自身の運命を把握する権利と能力があることがわかる。中国式現代化は平和、発展、協力、ウィンウィンを堅持し、人と自然の調和の取れた共生を堅持している。それぞれの国情に合致した現代化を尊重し、相互交流と相互参考を行うべきだ。
■中露関係
中国とロシアは大国が戦略的な相互信頼関係を保つ善隣友好の付き合い方を見出し、新型国際関係の手本となった。一部の国は冷戦時代の同盟結託のフィルターを通して中露関係を見ることが習慣になっているが、そこに見えるのは自分自身の投影にすぎない。中露関係は同盟せず、対抗せず、第三者を標的としないことを基礎として確立され、世界のいかなる国の脅威にもならず、いかなる第三者の干渉や挑発も受け入れない。中国とロシアが手を携えれば、世界の多極化と国際関係の民主化に原動力がもたらされ、世界の戦略的バランスと安定が保障される。世界が不安定であればあるほど、中露関係は着実に前進すべきだ。
■グローバルガバナンス
新時代の十年間において、習近平国家主席は一連の重要なイニシアティブと主張を相次いで提起した。これら理念の核心は、各国が互いに依存し合い、人類は運命を共にし、国際社会が団結と協力する必要があるとしている。グローバルガバナンスは必ず法を守り、国際法の原則に従うべきだ。公平公理を以て、覇権と私利に反対すべきだ。同舟相救い、分断と対抗をすべきではない。発展途上国の人口は世界人口の8割以上を占め、世界経済成長への寄与率は70%を超える。発展途上国はより良い生活を送る権利だけでなく、国際事務においてより大きな代表性と発言権を持つべきだ。中国は終始世界を心にかけ、グローバルガバナンスのプロセスに積極的に参加し、世界の平和発展と人類進歩の事業により大きな貢献をしていく。
■中米関係
米国は中国を最も主要なライバル、最も大きな地政学的挑戦と見なしており、その対中政策は理性的で健全な正しい軌道から逸れている。米国の言う「競争」とは、中国を全面的に抑圧するゼロサムゲームだ。「ガードレールを作る」や「衝突しない」というのは、中国に対し、殴られても殴り返さず、罵られても言い返さないよう押し付けることだ。それは決して実現できない。米国がブレーキをかけずに間違った道を暴走するなら、ガードレールを作っても脱線を止められず、衝突と対抗に陥ってしまう。両国の根本的な利益、ひいては人類の前途と運命を賭けた「競争」に、中国は断固反対する。中国を抑圧しても、米国を偉大にすることはできないし、中国の復興を阻むこともできない。中米関係を決定するのは、米国の国内政治とヒステリックな新マッカーシズムではなく、両国の共通利益、共同責任と両国人民の友情であるべきだ。米国政府が真剣に両国人民の声に耳を傾け、「ゼロサムゲーム」の冷戦思考を放棄し、約束を実践し、中国と歩み寄り、両国にとって有利で世界に恩恵をもたらす正しい付き合い方をともに模索するよう希望する。
■台湾問題
台湾問題は中国の内政で、いかなる外国の干渉も許さない。台湾問題は中国の核心的利益の中の核心であり、中米関係の政治的な基礎であり、中米関係にとって最大の越えてはならないレッドラインだ。「台湾独立」分裂勢力は台湾海峡の平和・安定と相容れない関係にある。台湾海峡の平和・安定にとっての真の脅威は「台湾独立」分裂勢力だ。その拠り所となるのは一つの中国原則で、真のガードレールは中米3つのコミュニケだ。台湾問題をうまく解決できなければ、中米関係にも深刻な影響を与えることになる。もし米国が本当に波風のなく静かで穏やかな台湾海峡を望むなら、「台湾を以て中国を制する」企みをやめ、一つの中国原則の初心と本義に戻り、中国への政治的承諾を厳守し、「台湾独立」勢力に断固反対し、制止すべきだ。
■ウクライナ危機
中国はウクライナ危機に対し、自主独立的に判断し、戦争ではなく平和を、制裁ではなく対話を、激化ではなく沈静化を選んできた。中国は危機の作り手でもなく、危機の当事者でもなく、どちら側にも兵器を提供していない。中国に責任を転嫁し、中国を制裁し、脅すことを我々は決して受け入れない。ウクライナ危機を衝突や制裁、圧力によって解決することはできない。今必要なのは冷静さ、理性、対話であり、和平交渉プロセスを早急に開始させ、各方面の安全保障に関する合理的懸念を尊重し、欧州の長期的安定を実現する道を見出すべきだ。
■一帯一路
「一帯一路」イニシアティブは中国が提起し、共に建設し、享受し合う質の高い公共財で、高い基準、持続可能、民生に恩恵をもたらす点で優位性を備え、その質の高さと実務的な点で広く受け入れられている。この十年で計画が実行に移され、各国の発展に実質的な効果があり、人々に利益をもたらし、十年で共同発展の広い道を切り開いた。「一帯一路」は実務的で開放的、共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う原則を堅持している。そのため、いわゆる「債務の罠」というレッテルを中国に貼ることはできない。中国は一貫して関係国の困難克服を支援し、G20債務緩和イニシアティブでも大きく貢献している。中国は引き続き建設的な姿勢で国際債務問題の解決に取り組み、他の各方面でも共に行動し、公平な負担を呼びかけていく。各方面で共に協議すれば、解決策は必ず困難よりも多いだろう。
■中日関係
新時代の中日関係を構築するには、信用を守り、歴史を鑑とし、秩序を守り、互恵・ウィンウィンを図るべきだ。中国人民は常に善意をもって日本と付き合い、善隣友好を望んでいる。しかし、もし日本の一部の人が、隣国をパートナーとするのではなく、中国を抑圧する新たな冷戦に参加するようなことがあれば、両国間の古い傷が癒えていないのに新たな痛みが生じることになる。現在の国際秩序は世界反ファシズム戦争の勝利に基づき、3500万人の中国軍人と人民の犠牲のうえに得たものだ。中国人民は戦後の国際秩序と国際正義に挑戦する歴史修正主義を決して容認できない。
■中欧関係
中国とEUの交流は完全に互いの戦略的利益に基づいて行った選択となる。中国・EU関係は第三者を標的とせず、第三者に付き従わず、第三者から制約を受けない。欧州がウクライナの戦火を経て痛ましい経験を反省し、真に戦略的自主と長期的安定を実現できるよう希望する。
■米国の「インド太平洋戦略」
米国のいわゆる「インド太平洋戦略」は、自由と開放を自称しながら、実は排他的な「小集団」作りを企んでいる。地域の安全を守ると主張しながら、対立を煽り、インド太平洋版NATOを作ろうとしている。地域の繁栄を促進すると主張しながら、デカップリングを企て、地域一体化プロセスを阻もうとしている。米国は「中国周辺の戦略環境を形作る」と発言したことで、「インド太平洋戦略」で中国を封じ込めるという本当の狙いを露呈した。「インド太平洋戦略」はASEANを中心とする開放的で包摂的な地域協力枠組みに打撃を与え、地域諸国の利益を損なう結果になるだけで、失敗する運命にある。アジアは地政学的な競争の場ではなく、協力・ウィンウィンの舞台になるべきだ。冷戦をアジアで繰り返してはならず、ウクライナ問題のような危機をアジアに持ち込むべきではない。安全保障を共に図り、発展を共に促進し、より緊密な周辺運命共同体を構築すべきだ。
■中国の青年
今の中国は世界の舞台の中央に近づきつつあり、これまで以上に話題となり、注目されやすくなったが、その発言の機会は限られており、中国に関するいわれなき発言もまだ多い。中国の国際社会における発言権の向上は当代青年の当然負うべき責任だ。青年たちは実践と試練を経て、中国人としての志と気骨、自信を絶えず強化し、世界と対等に対話し、中国の青年ならではの視点から声をあげ、イメージをアピールしてほしい。青年たちは進んで物事に取り組むべきであり、開放的であるべきだ。世界中から長所を取り入れ、相互交流と相互参考を行い、自らの目で世界を見て、自らの言葉で中国を紹介すべきだ。
「CNA日本語版」2023年3月7日