香港「北部メトロポリス・アクション・アジェンダ」発表
香港政府は10月30日、「北部メトロポリス・アクション・アジェンダ」を発表した。「北部メトロポリス」は深圳との境界に近い香港北部の大開発を指し、北部の土地を活用するとともに深圳との連携を強化することで、科学技術分野を中心に産業を育成。サービス業に偏重する産業構造を是正するとともに、ビジネスエリアが南部に偏っている香港域内の地域間格差を是正する狙い。
■北部メトロポリス構想
北部メトロポリスは、2021年10月、当時の林鄭月娥・行政長官が施政方針演説で打ち出した構想。同構想が打ち出された背景の一つは香港の産業構造の歪み。中国の改革開放政策の下、香港の製造業の多くは生産拠点を本土に移転。その結果、製造業の域内総生産(GDP)に占める比率は1%程度に低下した。サービス業への過度の依存は、昨今の技術イノベーション分野での遅れにつながっている面がある。ただ、技術イノベーション推進には土地なども必要。北部を活用し、科学技術イノベーション分野を推進する狙いがある。
香港のビジネスエリアが香港島や九龍半島に偏っている点も北部メトロポリス構想が打ち出された背景の一つ。未開発地が多い北部を開発し、雇用創出などにつなげたい考えだ。
■アジェンダの主な内容
今回発表されたアジェンダは、北部ポリスの開発のデザインやスケジュールなどが盛り込まれた。
開発用地は3,000ヘクタール。50万の住宅を新規に供給する予定。
エリアとしては東から、▼ハイエンド専門・物流サービス、▼イノベーション・科学技術エリア、▼境界商業・工業エリア、▼観光エリアーーの4つに分けられる。
4つのエリアの主な計画は以下の通り。
▼ハイエンド専門・物流サービス
深圳湾や前海協力区、南山区に隣接するという地理的優勢性を活用。
前海協力区と南山区は金融、専門サービス、物流サービス分野の発展を推進し、ハイエンド産業での深圳との協力を促進。現代サービス業センターを目指す。
200万平方メートルの商業用ビルのフロア建設を計画。
交通インフラは香港の洪水橋から深圳の前海を結ぶ「港深西部鉄路」などの整備を計画。
▼イノベーション・科学技術エリア
深圳との境界に開発しているイノベーションパーク(香港側は「港深創科園」、深圳側は「深科創園区)」のほか、北部メトロポリス構想の一環として「新田科技城」を開発。
新田科技城は約300ヘクタールの用地を提供。17の科学園(延床面積700万平米)を開発予定。
香港側は「港深創科園」、深圳側は「深科創園区」と併せて「深港科技創新合作区(深圳・香港サイエンステクノロジー・イノベーション協力区)」とする。
「港深創科園」には2024年末に3棟のビルが完成予定。
新田科技城は2024年から土地の整備を開始し、早ければ2026年に整地完了予定。
交通インフラは鉄道の北東への延伸のほか、皇崗出入境ゲートの再建を計画。
▼境界商業・工業エリア
羅湖、文錦渡、香園圍の3カ所の出入境ゲートに隣接し、開発用地が比較的多く残っているエリア。
商業サービス、リテール金融、医療サービス、レジャー産業を推進。
また、現代物流拠点、再工業化拠点、食品科学技術、先端建設業などの新興産業を推進。
香園圍出入境ゲート付近に、生鮮食品の検査施設などを設置する予定。
交通インフラは鉄道を北東に延伸。古洞駅は2027年に完成予定。
▼観光エリア
自然や昔ながらの風情が残るエリア。深圳との境界沿いに設けている立ち入り禁止区域「沙頭角」について深圳市政府と共同で文化・観光エリアとしての開発を検討。
■スケジュール
2024年までにすべての新たな土地の用途、発展計画を策定
2027年までにすべての主要開発プロジェクトの土地開発手続きを終了
2032年までに新規開発用地整備、新規住宅建設の40%を完了