中国新興自動車メーカーのNIO、小鵬、理想の3社が22年決算発表~赤字継続も中身に差

中国の新興自動車メーカーである蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、理想汽車(Li Auto)の3社の2022年12月期決算が出揃った。3社ともに売り上げは増加したものの、依然として赤字のまま。3社の純損失は計255億元となった。ただ、業績の中身に差が出てきており、置かれている状況も変化している。

■理想汽車、赤字最小
3社のうち最も早く決算発表したのは理想汽車。同社の22年通期の売上高は452億9,000元、純損失は20億3,000万元で、赤字額は3社の中で最も少なかった。
四半期ベースで足元の損失も縮小している。22年第4四半期は売上高176億5,000万元に対して、純損失は2億7,000万元にとどまり、第3四半期に比べて好転している。

3社の22年実績

 売上高純損失納車台数
理想汽車452.9億元(+67.7%)20.3億元(+527%)13.3万台
NIO492.7億元(+36.3%)144.4億元(+259%)12.2万台
小鵬汽車268.7億元(+28%)91.4億元(+88%)12.0万台

手元の現金が多いのも理想汽車の特徴だ。22年末時点での現金準備金は584億5,000万元。NIOと小鵬を大幅に上回っている。
販売も好調に推移している。2022年12月には「L8」と「L9」の主力2車種の納車台数がともに1万台を突破。同社は得意とする長距離電気自動車(EREV)で先行しており、東風汽車傘下の高級車ブランド嵐図、零跑科技(Leap Motor)などが理想汽車に追随してEREVを投入している。

■NIO、キャッシュバーンの段階続く
NIOの22年通期の売上高は492億7,000万元、純損失は144億元。純損失は21年の約3.5倍に膨らみ、過去最多となった。うち第4・四半期の赤字は57億9,000万元で、理想とは反対に足元で赤字が膨らんでいる。16年から22年までの累積赤字額は523億元に達している。
赤字の大きな要因は、電池交換ステーションの設置・運営・維持コストの増大。NIOはEV車両の電池で、充電式ではなく電池交換式を採用している。同社が目指すモデルは、初期段階で多額の資金を投じて電池交換ステーションを建設。電池交換ステーションを整備することで独自の競争障壁を形成し、販売台数を押し上げ、それに伴い収益性を改善するとともに、電池交換ステーションの利用率を高める、という好循環をつくることだ。
ただ、電池交換ステーションの整備には多額の資金が必要。一カ所の建設コストは約150万元前後で、運営・維持コストを含めると、さらに高くなる。巨額の資金を投じて電池交換ステーションを建設しても、サービスを必要とする車両がなく、電池ステーションが大量に放置されるという状況は避けなければならない。22年の納車台数は12万2,000台で、理想の13万3,000台を下回る水準にとどまったNIO。販売促進が一つの課題になっているといえる。

■小鵬、最も不振
小鵬汽車は、3社の中で最も不振にある。22年通期の売上高は268億6,000万元、純損失は91億4,000万元。売上高は理想汽車とNIOに比べて半分程度だが、純損失は理想汽車の4倍に相当する。
月次販売台数も伸び悩む。昨年12月に伸ばした以外は、いずれも6000台前後で推移。主力車種「小鵬P7」の月間販売台数は約2,000台に落ち込み、期待されていた「小鵬G9」は3カ月連続で大幅に減少。2月の販売台数は1000台を割り込んでいる。
経営陣にも動きが出ている。共同創業者の夏珩氏が辞任し、元副総裁の李鵬程氏が阿維塔(AVATR)に転職。代わりに長城汽車の総経理だった王鳳英氏が総裁に就任した。

■3社異なる状況に
上記のように3社はそれぞれ異なる状況に置かれつつある。
最も安定っしているのは理想汽車。車をつくる考え方も、スペースの広さ、航続時間の長さ、座席の柔らかさ、安全性などど消費者の実際のニーズに基づいたものと、明確なポリシーがある。
NIOはネット企業に多い「キャッシュバーン(赤字覚悟で多額の資金を投入すること)」の成長路線を採用。初期段階は、多額の資金を投入して独自の製品をつくり、エリアごとに独占を形成。その後販売を増やして、最後に元本を取り戻す戦略だ。NIOが賭けているのは前述の電池交換モデル。ただ、電池交換モデルを確立するには相応の期間と資金が必要だ。年間販売台数が12万台にとどまる企業が、業界全体を巻き込んだ成熟したビジネスモデルを自力でつくれるかがカギになっている。
小鵬汽車については、製品の位置づけなどが他の2社に比べて明確でない点が不振の背景の一つにあるとみられている。価格帯も決して安価ではない。王鳳英氏の就任後、初めて発売した「P7i」の販売価格は24万9,900元。BYDの「漢」シリーズよりも高い価格設定となっている。
置かれている状況が徐々に変化する中、今年はさらに差が拡大するのか、それとも小鵬が巻き返しを図るのか、その動向が注目される。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.