中国政治局会議、不動産政策に関する基調転換~「住宅は住むもので投機対象ではない」から「需給関係の変化に適応」に

7月24日に開催された中国共産党政治局会議では、今後の経済政策を占ううえで不動産市場に関連する方針が注目を集めた。「不動産市場における需給関係の著しい変化という新たな状況に適応する」との方針が新たに追加された半面、従来の「住宅は住むもので投機の対象ではない」との方針は削除されたためだ。これは、不動産政策の基調が転換し、重点が「過熱防止から過度の冷え込み防止」に転換したシグナルとみられている。無論、「リスク防止」も強調されている。都市部の中で開発が遅れている「城中村」改造政策など他の不動産関連政策と併せてみると、今後の不動産政策は構造的な問題に着手してリスクを防止しつつ、中長期の質の高い発展を見据えたものになるとみられている。

■過熱防止から過度の冷え込み防止へ
例年7月に開催される政治局会議は、上半期を振り返り、下半期の経済政策の運営方針を定める重要会議のため注目度が高い。特に、不動産市場の低迷が続いているだけに、不動産市場の政策に関してどのような方針が打ち出されるのか注目された。
冒頭で振れた通り、会議では、不動産市場に関して「需給関係の大きな変化に適応する」との文言が追加されるとともに、これまでの「住宅は住むもので投機の対象ではない」との文言は削除された。
「住宅は住むもので投機の対象ではない」との方針はこれまでの中国の不動産政策策定にあたっての大原則ともいえるもの。地方政府から金融当局までいずれも、不動産関連政策を打ち出す前は、この大原則に合致するかを見極める必要があった。このため、過去2年ほど一部の地方でが住宅価格の下押し圧力が強まったものの、大規模な緩和に踏み切れず、緩和政策公布後、即座に撤回するケースもあった。
「住宅は住むもので投機の対象ではない」との文言が削除され、「不動産市場における需給関係の著しい変化という新たな状況に適応する」との文言が追加されたことは、従来のカウンターシクリカル(景気変動抑制的)な政策でなく、クロスシクリカル(周期的な景気変動を跨いだ長期の成長にフォーカスを絞る)な政策に転換することを意味するシグナルとみられている。つまり、不動産政策の重点が、「過熱防止から過度の冷え込み防止」、「需要抑制から需要喚起」に転換したシグナルというわけだ。
不動産業が多くの業種に関連して中国経済への影響力の大きさから言えば、この基調転換は今後の中国の経済政策をみるうえで重要なものともいえ、今年7月の政治局会議は「不動産業のために開催された」との声も出るほどだ。

■「城中村」改造など構造問題の解決推進
今回の会議に先立ち、国務院は4月、超大都市の「城中村」改造、「平時と緊急時ともに使える公共インフラ施設」建設の推進方針を打ち出している。
「城中村」というのは「都市部の中の村」という意味で、都市部の中で開発が遅れているエリア。城中村ができた背景には、都市と農村で法律が異なる二重構造を有する複雑な中国の事情があるが、簡単に言えば都市の中で取り残されているエリアというイメージだ。この城中村の改造を常住人口が1,000万人以上の超大都市で推進するとの方針が打ち出された。
もう一つの「平時と緊急時ともに使える公共インフラ施設」建設の推進と併せてみると、政策目標は、中長期の質の高い発展を見据え、需要と供給の両サイドの政策緩和によって、安定的な不動産市場の発展を促進することとも読み取れる。
政治局会議で「リスク防止」の面が強調されたことも見逃せない。現在の人口増加率や都市化率、国民の負債比率などが大きく変化している現状を鑑みれば、政策を単純に緩めるだけで不動産市場が好転するとは限らない。リスク防止と中長期の質の高い発展を睨みつつ、不動産政策がどのように「調整と最適化」されるのか注目される。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.