中国第2四半期GDP伸び率は市場予想を下回る~中央は短期より中長期の質の高い発展睨んだ政策運営へ

中国国家統計局が6月17日に発表した第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)は前年同期比で6.3%増と、伸び率は市場予想を下回った。これは、消費と不動産の弱さという短期的な逆風が克服されていないことを反映している。 しかし、同日に発表された政府系メディアを通じた政府の公式見解では、中国政府が依然としてコロナ後の経済全体の回復に自信を示し、短期的な大規模な救済措置が再び必要でないことが示唆されている。中国政府は短期的な景気浮揚でなく、長期的な質の高い発展を睨んだ産業構造の高度化・転換の加速に注力するとみられている。

 

■消費の弱さが回復の足かせ
比較対象となる前年の第2四半期は、上海でのコロナ防疫措置の強化による経済活動の停滞でGDP伸び率は0.4%にとどまった。前年同期の基数が低かったこともあり、今年第2四半期GDP伸び率の市場予想は7.1%と高めだった。ただ、実際には6.3%と市場予想を下回った。
特に足元の消費の弱さが目立つ。1~6月期の社会消費財小売総額は前年同期比8.2%増と市場予想を上回った。しかし、直近6月の小売総額は前年同月比3.1%と、市場予想の3.3%を下回っている。
中国人民銀行による四半期調査によると、住民の24.5%が支出を増やす意向を示し、昨年第1四半期以来の高水準となったが、同時に貯蓄を増やすと回答した割合も58%に拡大。これは、不動産価格への見通しの弱さが関係しているとみられている。国家統計局によると70都市の中古不動産価格の前月比下落率(1.2%)が最も大きかったのは上海だった。
市場では、今後政府が追加の不動産市場対策として、頭金比率の引き下げや一線都市での購入制限の緩和を打ち出すとの予想があるほか、金利や預金準備率の引き下げ予想も根強い。

 

■政府系メディアは経済の回復を強調
市場では景気回復の鈍さへの懸念が強まるが、政府系メディアの新華社通信は6月17日、今年上期の経済情勢について、「『形』は回復を示し、『動向』は景気の上向くのを支えている」との見出しで総括した。また統計局の付凌暉・報道官は、今年に入ってからの経済状況について、「コロナの影響が徐々にはく落し、正常な運営軌道に戻り、回復・改善傾向を示している」と指摘。「複雑で厳しい外部環境の下、中国は強い回復力を発揮し、上半期の成長率5.5%は「より金の含有量が多いスピード」と述べた。「より金の含有量が多いスピード」というのは、質的に高い成長を示したことを示唆しており、市場の悲観的な見方を打ち消す格好となっている。
こうした公式見解からは、今月末に開催される政治局会議で「大規模な景気刺激策が決まる」との市場予想は期待だけに終わる可能性がある。

■不動産対策は小出しの政策で対応、中長期の質の高い発展へハイエンド製造の重要性高まる
中国政府は不動産市場の支援策として、物件の引渡し保証のための金融支援の増額延長など、小出しの政策で対応している。これは、大規模で強力な政策手段では、過去の投機的な不動産市場に戻りかねないとの危惧が背景にあると同時に、不動産を中心とする従来型の産業の重要性が徐々に弱まっていることを示唆するものともいえる。
従来型産業に代わって今後、経済のけん引役として重要な役割を果たすと期待されているのはハイエンド製造業などである。国家発展改革委員会国民経済総合司の李輝副司長は6月17日、一定規模以上の設備製造業生産高(付加価値ベース)の伸びについて、産業全体より速く、太陽電池、新エネルギー自動車製品などが急成長しており、いずれも国民経済の質の高い発展を体現していると指摘している。
李強総理は先に、対象を絞った、複合的で相乗的な政策・措置を実施することにより、経済成長を促すとともに、雇用を安定させ、リスクを防止することに重点を置くと表明。質の高い発展が最大の課題で、構造調整などの重要性を訴えている。
こうした点を踏まえると、中国政府は今年下半期、短期的な政策のみで経済問題を解決するのではなく、中期的な構造改革と長期的な制度改革を有機的に組み合わせていくとみられている。中国の経済政策を占うには短期的な視野でなく、中長期の視野が必要といえそうだ。

 

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.